学園警察S&G_21_罠2

「じゃ、今日でラストだな」

その日は不死川の部屋には誰も現れなかったらしい。
そして翌日の夜、4人は不死川の部屋に集合していた。

3人はそれぞれ、ベッドの下、ベランダ、シャワー室に隠れて待機、義勇は不死川の部屋の椅子に腰をかけた。


こうして明かりを消して間接照明だけつけた室内。
4人は息を殺してそのときを待つ。

やがて…部屋主が外出中で、かかっているはずの鍵がカチャリと開き、ドアが開く。
侵入者は間接照明の明かりにぎょっとしたように一瞬足を止め、しかしそこに座って雑誌をめくっている人物に気づいてホッと胸をなでおろした。

「冨岡、ここは不死川の部屋では?何をしているのかい?」
かかった声で義勇はゆるりと雑誌から視線を外して、相手に意識を向けた。

「はい、不死川の部屋です。
今日は不死川と共同研究のレポートを書く予定だったんですが、帰りが遅いらしくて…。
帰りまで待っててくれって言われて、待ってるんです」

にこりと微笑む様子はいかにも深窓の令息と言った感じで可愛らしい。

「ああ、そういえば今日レポート用に天体を観測したいと望遠鏡を貸し出し中だが、それかい?」

「いえ、俺が書くのは科学のほうですね。お互い実験は終わっていて、それを照らし合わせつつ書く予定で…。
先生も何か不死川と約束を?」

「ああ。ちょっと植木鉢を探してるんだが…」
「植木鉢?ああ、そういえば出窓のところにありますね。それですか?」
「ああ。それだ」

男…B組の担任の長谷川はそちらにチラリと視線を向けたが、そちらには向かわず、カチリと後ろ手に鍵をかけた。

「先生?」
きょとんと首をかしげる義勇のほうに長谷川はものすごい勢いで走りよってその腕を取り、そのまま後ろのベッドに引きずり倒す。

「な、なんですかっ?!」
いきなりの教師の奇行にただただ驚いて目を丸くするだけの義勇の言葉には答えず、長谷川は引き倒した義勇の上に馬乗りになると、どこからか出した紐で両手首をしばった。

「なにするんですかっ?!!」
ここに来て本格的に暴れようとする義勇の喉下に、長谷川はナイフを突きつけた。

「運が悪かったね。
せっかく不死川が不在なのを知ってきたところに居合わせるなんて。
大人しくしててくれれば、命を取ろうとは思わないよ。
君には私がここに来た事を黙っていてもらわないといけないからね。
君の方にも黙っていて欲しいと思う秘密を作るだけだから…」

はぁはぁと荒い息が気持ち悪い。
いかにも仕方なくという言い方をしながらも、長谷川は明らかに興奮しているようだった。

まとめて縛った両手首を片手で器用にベッドの枠に結びつけると、義勇のシャツのボタンをゆっくりと外していく。

「何を……するつもり…です?」
青ざめる義勇に長谷川はニコニコと嬉しそうに笑った。

「大丈夫。先生は慣れてるから痛くはしないからね。
ただ君を一度抱かせてもらって、その時の写真を撮らせてもらうだけだよ。
君だって男に抱かれた事後の写真をばら撒かれたくはないだろう?」

ぞっとした。
気持ち悪さに叫びだしそうだが、なんとか耐える。
そして気力を振り絞って口を開いた。

「それは…先生がさっき言った植木鉢と関係があるんですか?」
確信をついているであろうその質問にも、誰も来ないという安心感からか、長谷川は特に迷うこともなくうなづいて答えた。

「ああ、先生どうしても誰にも知られずにあの植木鉢を手にいれたいんだ。
それだけだからね。
君さえ黙っていてくれれば、写真だって誰にも見せたりしないから…」

これでチェックメイトだ。

「もういいぞっ!!」
と、錆兎が思い切り声をあげて、隠れていた残り二人と共に一斉に姿を現した。

まず長谷川に血相を変えて突進しかける錆兎から長谷川を離すように宇髄と不死川が長谷川を左右から抱えてベッドから引き摺り下ろし、同時に

「錆兎は義勇頼むっ!縄といてやれっ!」
と、すかさず宇髄が矛先をそらす。

この作戦を決めた時点で、錆兎が激怒して犯人を殴り殺さないようにと、宇髄と不死川で決めていた裏作戦だ。

そこで義勇もそれを察しているわけではないだろうが、
「錆兎、縄ほどいて…早く…痛いんだ」
とどこか甘えた口調で言えば、錆兎が注意を向ける対象は義勇へともう完全に切り替わる。

そして
「義勇、嫌な思いさせて本当にごめんな?」
と、縄を解いた上で、そっと抱きしめた。


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