学園警察S&G_15_溺愛

「宇髄、不死川、コーヒーで良いか?
紅茶派ならダージリン、アールグレー、ラプサンスーチョン、ミルクティが良いならアッサムもあるし、フレーバーティーが良いなら、ピーチかオレンジ、マスカット。
ミントティーもある。
日本茶は煎茶かほうじ茶…あとは…玄米茶と麦茶?
ジュースが良ければオレンジかアップル。
炭酸ならコーラかスプライト。
甘くないのが良ければガス入りの水か普通のミネラルウォーター、あとは、烏龍茶。
他は……」

錆兎達の部屋について客二人にライティングデスクの椅子を明け渡し、義勇はベッドに腰を掛けている。

その状態でキッチンに向かいつつ言う錆兎に、宇髄と不死川は揃って目を丸くした。


「…なるほどなァ…。
普通にダチが来る奴の部屋って、こんなに色々揃えてあるもんなんだなァ…」

唖然とした様子で言う不死川に、宇髄もまた呆然として
「…安心しろ。普通の男子高生の部屋じゃこんなに用意されてねえよ。
せいぜいコーヒー紅茶、コーラかジュースが選べるなら上等だ」
と言う。

とりあえず感心したり呆れかえったりしつつも、2人揃って無難にコーヒーをと申し出ると、
「酸味が強いのと苦みが強いの、その中間、どの豆が好みだ?」
と返って来て、知らねえよっ!普通のコーヒー!と2人そろって叫んだ。

それに錆兎は少し小首をかしげて
「…ブラジルあたりにしとくな?」
と言うが、それは国の名前じゃないのか?と不思議に思う。
どちらにしろ正直豆による味の違いなんて気にしたことがないのでわからない。

「わかったっ!
冨岡がミネラルウォーター出されて水しかないって言っちまうのは、これかっ。
こんな環境にいるせいだなっ」
と、不死川はもうやけくそのようにこぼした。


そうして待っていると、キッチンではガラガラ、ゴォォ~~!!という謎の音。
何?!何が起きているんだ?と二人してキッチンの方を凝視していると、やがて錆兎が大きめのトレイを片手に奥の部屋へと入ってくる。

飲み物の他に当たり前のようになんだか高級そうな皿に乗ったこれまた高級そうなチョコレート付きで、茶菓子といったらコンビニやスーパーに売っているポテチか、せいぜい小分けのチョコのアソートくらいが当たり前だった不死川は、その場違い感に本当に呆然とするしかなかった。

そんな中、錆兎は普通に慣れた様子で
「宇随と不死川はブラジル、俺はキリマンジャロ。
義勇はコーヒー飲まないし、フローズンドリンクな」
と、それぞれにカップとグラスを渡す。

そして全員に飲み物がいきわたると、宇髄が
「…さっきの音って…これか?」
と、こわばった顔で義勇のグラスを凝視した。

「ああ、無糖のヨーグルトと冷凍のベリー各種に蜂蜜と氷を入れてミキサーでシェイクした。
義勇には普段はフレーバーティーを出すことが多いんだが、あの手の飲み物はコーヒーと一緒だと香りが混じるから。
今日は宇髄と不死川には時間を割いてもらっているから、2人が優先だしな。
フローズンドリンクなら元々香りが強くないし他の香りも気にならないだろうからと思ってチョイスしてみた」

うああああーーーーと叫びたい衝動にかられる不死川。
お前はどこぞの姫君に仕える執事かなにかか??
義勇は姫かっ?姫なのかっ?!!
もう自分が生きてきた世界と違い過ぎて、突っ込む気すら起きない。

飲み物一つにここまで気を回す錆兎もおかしければ、そんな過剰なサービスを当たり前に受け入れて普通はどこぞのカフェでしか出てこないであろうそれを喜々として口にしている義勇もおかしい。

自分よりはお育ちが良いであろう宇髄ですら
「…ここは喫茶店かよ……」
と呆れ顔で言っているのだから、おそらくおかしいのは彼らの方であって自分ではないと思う。

そんな中で1人驚く様子もなく
「さびとっ!これ、すっごく美味しいっ!」
と、キラキラした目で隣に腰をかけた錆兎を見上げる義勇に、
「それは良かった」
と、微笑み返す錆兎の表情はとても甘い。

「もしお前に再び会えることがあったら…と、普通のコンビニレベルで手に入る材料で作れるドリンクを色々研究した中で最もお前に飲ませたかったものの5指に入る自信作なんだ」

と、続く言葉で嫌でも察する溺愛ぶりに、そりゃあそこまで可愛いと思っている相手が、殺人疑惑のある人間と二人きりになったとしたら血相変えるよなァ…と、不死川は自身の部屋の前で鉢合わせた時の錆兎の殺気を思い出して納得してしまった。


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