学園警察S&G_09_疾走

そうして3時間目、4時間目と授業が終わり昼休みになった。

そこで錆兎は
「義勇を呼んでくる」
と、義勇を呼びに隣のクラスに行くが、教室内を見回しても義勇が見当たらない。

「義勇…冨岡義勇を知らないか?」
と、隣のクラスの人間を捕まえて聞くと、
「あ~、冨岡なら先生に連れられていったよ?」
と、教えてくれる学生。

「先生…なんで?」
「さあ?勉強のこととかじゃないか?
転校生だし、前の学校と進み具合とかも違うだろうしさ」
「…俺も転校生だが?」
「…編入試験、ほぼ満点なんだろ?
進み具合が遅れているとかなさそうだからじゃないか?」

「…誰にそんな話を…」
何故広まっている?と、それも警戒して錆兎が聞くと、相手は
「うちの学校、成績で全てが決まるから。
先生もはっぱかけるのに成績の良い奴の名はガンガン口にするしな。
鱗滝のこと知らない奴はもううちの学年にはいないと思うぜ?
上位層の奴らなんかはお前の事猛チェックしてるし、気を付けたほうがいい」
と言ったあと、もういいか?飯食いたい…と、言うので礼を言って解放した。


なるほど。
この学校は成績至上主義の競争社会で、上位にいると妬まれるという事か…

そういうことなら自分自身に攻撃の矛先が向くのは別に全く構わないし、成績でと言うならむしろ、義勇に向かなさそうなので、錆兎的にはありがたい。

義勇も教師と一緒なら安全だろうし、とりあえず今は少しでも義勇の安全をさらに確固たるものにするためにも、宇髄から情報を引き出さなければならない。


「まあ…しかたない。連絡だけ入れておいて先に食堂行くか…」

義勇と一緒に居られるのは仕事で一緒の時のみなので、出来うる限り一緒にいたい。
一食分の時間をすごく損した気分になる。
が、自分の感情と義勇の安全をはかりにかけるとしたら、後者が優先だ。

ところが、互いにやるべきことはやらねばと思いつつもガッカリ感を隠せず項垂れる錆兎に、宇髄は
「とりあえず食堂の前に科学準備室だな」
と、錆兎の肩に腕を回して誘導する。

「…科学準備室?」
「おう。このクラス、化学だったから、連れて行ったの長谷川だろ。
あいつはヤバいから」

「ヤバいとはっ?!」
と、その言葉に一気に青ざめる錆兎。

「セクハラ野郎な?ま、急ごう」
と、深刻さを伝えて足を速める宇髄。


その男子校ならではの問題に、錆兎は自分の甘さを猛省した。
男子校なのだから、そういう可能性も考えておくべきだった。
標的が自分だったなら、たいていの相手は余裕で張り倒せるので、そっちの警戒を怠っていた。

命に別状はないのだろうが、状況によってはそれよりもひどいことになる場合もある。
それで義勇がメンタル的に病むようなことになったら、おそらく相手を殺してしまうだろう。
そうなれば確実に任務失敗どころか、自分は裏教育委員会の存続にかかわるような事態を巻き起こしかねない。

脳内の半分でそんなことを考えつつ、もう片方では冷静に潜入前に頭の中に叩き込んだ校内地図を思い出して、宇髄に案内されるまでもなく、科学準備室の方へと疾走する。

「お前…場所わかってるのか」
と、錆兎が確実に目的地に向かっていることに気づいた宇髄がそのあとを走りながら驚きに目を見開いて言うのに、錆兎は
「校内案内は転入前に脳内に叩き込む主義だ」
と、歩を緩めることなく答えた。

本来、そこまでやる学生もあまりいないだろうから、そう言う情報の開示は好ましくないとは冷静な時なら思うのだろうが、錆兎もこれまでになく余裕がない。

しかし宇髄は心の底ではどうだかわからないが、表面上はそれに疑いを持つことはなかったようだ。

「あ~、頭いいやつは色々違うな」
と、ただ、感心したように言う。

そうして2人揃って廊下を疾走、科学準備室の前にたどり着いた。



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