オンライン殺人事件クロスオーバーY03

第一の殺人 (7~8日目)


今日でゲームを始めて一週間。
最近昼間から夜を心待ちにしてる自分がいる。

20時から24時なんてケチくさい制限つけないで、昼からやらせろよ~なんて考えつつ、テレビを流しながらボ~っと漫画をめくってても俺の頭の中は実はアオイでいっぱい。

ちょっと良いなって感じの子はいっぱいいて、あわよくば向こうから近づいてきてくれないかな~なんて思った事もいっぱいなわけなんだけど、こんなに日々相手の事考えてるなんてのは初めてだ。

なまじ癒し系と名高い姉貴の表と裏の顔なんて日々見てるとなんとなく女ってこんなもんだよな~、自分から行ってもて遊ばれんのもな~なんてズルズルときちゃったわけなんだけど、あのアオイの妙な不器用さはそんな女性不信入ってる俺でも信用せざるを得ないような気になるんだよな~。

んで、そういう面で安心しちゃうとまあ、俺だって結局は若い男なわけで…。
サビトがリアルでの接触反対派で、なかなか切り出せないわけなんだけど、なんかきっかけないもんかな~なんて思ってたり…。


そして20時。
今日もほとんどアオイに会う為にログイン。
いつものようにサビトも来てる。

「ちわっ。アオイ今日も早いねっ」
でもまあアオイへの挨拶が先。
「リダどっち?とりあえず誘ってよ」
と続いて言うと、珍しくアオイから来る誘い。
もちろん即入る俺。

あれ?サビトパーティーにいないじゃん。

あ~もしかして…
『もしかして…サビトと喧嘩中?』
と聞くと、アオイは
『…えっと……』
と口ごもる。

こうなったら聞き出せるまでが長いんだよな、アオイ。
サビトに聞いた方が早いか。

『ちょっと待ってね』
とアオイに言って俺はサビトにウィスを送った。


(ちわ~っす!もしかしてアオイと喧嘩中?アオイに聞いても要領得ないんだけど…)
俺の言葉にサビト即答。
(わからん)

まあ…いつもの事なんだけどね。
サビトは俺の予想だと女の子慣れしてなくて…言葉に修飾つけない。
端的にして的確ってのは俺なんかだとわかりやすくていいなぁって思うけど、時として…特にアオイみたいなちょっと内向的な女の子には怖くきつく響くんだよな。

サビトは全然悪気ないんだけど怒ってるように感じてアオイが引く、それが毎度のパターン。
今回もそれなのかね…。

まあそういう理由だったらサビトにしてみたら本当に”わからん”なので、これはサビトに聞いても無駄。
あ~やっぱりアオイから聞き出すしかないのか…。
なんだか長くなりそうだしどうすっかなぁ~。
まあ…サビトはお姫様に預けるか~。

(まあこのままじゃ埒あかんし、アオイから頑張って聞き出してみるから、その間姫よろっ)

いつものパターン。
お姫様は…なまじっかやんごとなさすぎて他の人間の言う事や気持ちなんて”苦しゅうない”なんで、サビトのそういう所も全然平気なんだよな。
普段はその天然っぷりで周りを振り回してくれて大変は大変なんだけど、こういう時は便利だ。


『おっけぃ、じゃあいこっか』
と、俺はサビトとの交渉を済ませると、街中に向かって歩き始めた。

アオイは当然
『…え?』
とポカ~ンとする。そこで俺が
『サビトに姫よろしくって言っておいたから。今日は二人で街中まわろっか。
アオイ、ゲーム始めてすぐ外に特攻組でしょ?街も結構広いんだよ』
と説明すると、ホッとした様にうなづいて追いかけてきた。


アオイはそのキャラの外見とは裏腹に良くも悪くも女の子。感情的なんだよね。
たぶんサビトとサビトのきつい言葉でもめてるとしたら、今頃リアルで涙目でパニくってる気がする。
だから少し落ち着く時間をあげないとなんだけど、黙ってその辺で待ってると待たしてる事でまたモンモンとプレッシャーって困った子なんで、俺は素知らぬふりで街の観光案内。
アオイが落ち着くのを待つ。

まあ…俺はいつも最後方でパーティーのフォローだからたまにはこうやって自分が先に歩いて、アオイがその後をトテトテとってのも個人的には悪くはない。

つか、リアルでそういうのやりて~な~。
アオイは彼氏いんのかな?

サビトがあれだけリアル露見やばいって脅かしたあとだから、そんな事聞いたら思い切り引かれるの目に見えてるわけだけど…。
たぶん…嫌われてはない…っつ~か、結構頼られてはいるよな?俺。


最初の頃に無駄に街を歩き回ってたおかげで、たぶん俺は街中だけは詳しい。
景色のきれいな場所とか知っておくと微妙に便利な道とか、そんな所を案内しながら最奥の教会を目指した。

そして教会到着。
このゲームの光の神イルスを奉ってて、普通の教会みたいに長椅子があり、座って祈れるような感じになっている、女の子ウケが思い切り良さげでしかも静かに話が出来る場所の5指にはいるような場所だ。

『座ろっか(^^』
と俺が勧めてまず自分が座ると、アオイも俺の隣に座る。
まあ…サビトと分かれて20分ほどか…
『そろそろ落ち着いた?(^^』
と聞いてみると、アオイはコクリとうなづいた。

とりあえず自己申告を信じる事にして、俺は話を進めた。
『サビトが…何かきつい事でも言ったかな?また(^^;』
もちろん
『話したくない部分は話さないでもいいけどね』
と言うのも忘れない。

アオイは葛藤多いから、その一言がないと”話したくない、でも話さないとだめ?”みたいな気持ちの狭間で揺れて沈黙が増え、話が先に進まない。
まあそのあたりが多少面倒と思わなくはないけど、それでも何でも相手のせいにして思った事を全てズケズケ口にするうちの姉貴とかよりよっぽど可愛い。
そんな俺の言葉にアオイはポツリポツリと話し始めた。


『えっとね…前さ…ユート来る前にゴッドセイバーがリアル情報通常会話で垂れ流してた事あったでしょ…』
『あ~、それでサビトがリアル漏らすなとか説教してたよね、アオイに』

いきなり過去に飛ぶ話題に、それでもその頃を思い出して合いの手を入れる俺。
それにアオイがまたコクリとうなづく。

『その時にね…そこにいた私達の耳にも聞くともなしにゴッドセイバーの本名とか高校とかがはいってきちゃったのね』
『うんうん』
『で、今日…お昼のニュースで高校生が殺害された~みたいなのがあって…その殺害された高校生がゴッドセイバーだってわかったの。
犯人は目撃者によると若い男で…でも後ろ姿だけだったから特定できないって…』

うげ…まじか…。
ちょっと待てよ…え~っとそれって…今回の事件絡みだったり?
考えろ…考えるんだっ悠人!

このゲーム…賞金1億だよな。
んでもって…まあ俺みたいに初っぱなから諦めてる奴ばかりじゃなくて、本気で取りにきてる奴もいる…。
そんな時にリアル情報垂れ流してる馬鹿発見。
こいつ死ねばライバル一人へってラッキー。
んでもって…目撃された若い男=全員高校生のこのゲームの参加者の一人…おしっ、状況把握終了!
たぶんそんなとこだっ!それ以上はサビトに任せよう!

一瞬アオイの言葉が途切れた間に一生懸命考える俺。
そんな俺に気付かず、アオイはさらに進める。

『でね、ゴッドセイバーが殺された理由ってこのゲームなのかな~とか思ったら私怖くなっちゃってね…』

やばい…アオイ可愛い。
つか、この状況で怯えるアオイに萌えてる場合じゃないんだが…まあ悲しい生き物だよな、男って…。
そんな俺の葛藤には当然気付かず続けるアオイ。

『すごくすごく皆に会いたくて、8時になるの今日ほど待ち遠しかった日はなかったのね』

あ~くそ!今日早めにインすれば良かった!
そしたら怯えるアオイ慰めてそこから…という俺の悔恨も当然気付かず…(ry

『で、インしたらサビトいて、”今回の殺人てこのゲームが原因だよね”って言ったら、”そうだな”って』

まあ…そう反応するしかないよな…

『んで、私よく宝くじ当たった人が殺されちゃうみたいにゴッドセイバーが1億もらえるってあちこちに言いふらしてて殺されたのかと思ったんだ。
でもサビトが宝くじの場合は大金を手にしたから殺されるわけで、このゲームの場合はもらえる確率12分の1だしまだ手にできるって確定してるわけでもないんだからそんな理由で身近な人間殺す奴はいないって…』

……え~っとアオイさん…ゲームが原因という所までたどりついていながら、一般人に殺されたと思ってましたか…そうですか…
いかん…その肝心なところで大幅に核心からずれてくれるお馬鹿さんなところがめちゃ可愛いと思ってる俺がいるっ。…重症だ…。

『それ聞いて私も”あ、そっか。”って思ったんだけどそこでサビトがいきなり”お前な…脳みそ使わなさすぎて腐らせる前に、次の犠牲者として川に浮かぶなよ…”って(;_;)』

うっあ~もうサビトらしいっつ~か…。あいつもいい加減学習しろよ。
言いたい事はわかる、わかるんだけどさ…。

『そっか…不安だったよね、アオイ』
何から説明しようかな~と迷いながらも、サビトの台詞を思い出してちょっと感情が昂ってきたっぽいアオイにまずフォローをいれる。

『サビトもなぁ…すごく良い奴なんだけどね…』
リアルでため息をつく俺。
そう…サビトはマジいい奴なんだ。馬鹿なだけで……

『サビトってさ、すごく頭良くて物理的な事柄ってのがよく見えてるんだよね。
でも自分に見えてる物が見えてない人もいるって事をたぶん理解できてない。
だからどうしても説明不足になるんだ。
俺らが最初に会った時もそうだったでしょ。(^^;』

頭はいい。たぶん秀才なんだろう。
ただ…自分が特に頭いいだけで、皆が皆自分並みに頭よいわけじゃないんだってのをわかってない。

『サビトにしてみれば後衛守るなんて当たり前で、知らなくてそれをやってなかった俺らが無責任に見えて罵ったんだけどさ、見ず知らずの姫をちゃんと助けてくれたり帰れない俺らをちゃんと守って送ってくれようとしたでしょ…。
このゲームの目的を考えたらあり得ないくらい良い奴だよ?』

最初お姫様を助けてくれた時は単に女に良い格好したいだけの奴なのかと思ったけど、その後わかった。
あの時絡まれて死にかけてたのが俺だったとしても、迷わず助けてくれてる。
目の前で他の奴が困ってる、単にそれだけの理由で手を差し伸べられる稀有なお人好しなんだ、奴は。

『ゲームの目的?』
案の定…状況が見えてないアオイに俺は説明した。

『あのね…アオイは単にゲームを楽しめれば良いって思ってるのかもしれないけど、一応ね、このゲームの最終目標ってさ魔王を倒して1億もらう事なのね。
もらえるのって一人だけだからさ、一億欲しいなら他のプレイヤーを強くしちゃ駄目な訳。
だから…俺らを追い落とす事に意味はあっても、見ず知らずの俺らを助ける義理なんてあの時のサビトにはこれっぽっちもなかったんだよ。
まだ仲間にもなってなかったし、あのまま送ってバイバイする予定だったからね。
損得で言うなら仲間にするにしたって、サビトは強いジョブやってるしレベルも高いから、俺らはサビトいたら助かるけど、サビトからすれば戦闘であまり役にたたない俺らがいても美味しい事ないと思うよ。
せいぜい姫いたら回復あって楽かもだけど、プリーストならもう一人ゲーム慣れしてるっぽい男のプリーストいるしね』

あの時はむかついたけど、イヴの言う事は正しい。
損得考えたらマジ、サビトには俺らと一緒にいるメリットはない。

単なるゲームだったらまだしも、一億かかってて、それ狙える位置にいて、でも足手まといにしかならない俺らのためにそれ捨ててるわけだから…もう上に馬鹿がつくお人好し。
感謝とかは本人も望んでないだろうし俺もしようとは思わんし他にもしろとは思わんのだけど、言葉悪くて誤解されやすいだけで善意の人間だって事だけはさすがにわかってやらないと、ちと気の毒な気がする。

『で、本題なんだけどね、言い方悪いんだけどね、サビトはたぶんアオイをすごく心配してて、注意しようとしたんだと思うよ』
『あれで…?』
さらに続ける俺にアオイが疑惑の眼差し。

『たぶん…アオイ気付いてなかっただろうけど、以前サビトがリアル明かしたらすごい危ないって注意してくれたでしょ、あの時サビトは今回の殺人事件みたいな事が起こる可能性も考えて注意してたんだと思う』
過去形じゃなくて…なんで今回の事件が起こってるか今も気付いてないに一票。

『一億ってね、すごい大金なんだよ。何をしてもそれこそ人を殺しても確実に自分の物にしたいって参加者が出てきてもおかしくないくらいにね…』
ここまで言ってようやくアオイは事態に気付いたようだ。
『そ…それって…まさか?』
と絶句する。

『うん…。今回の殺人事件の犯人…一億円を手にしたいゲームの参加者なんじゃないかってサビトは考えてるんだと思う。俺もそう思うけどね…』
まあ…俺は今アオイから話きいて初めて思ったのは内緒。

『だからサビトにしてみたら全然危機感持ってないように見えるアオイがじれったいし心配だったんだと思う。
ようは…え~っと…脳みそ腐らせる前に川に浮かぶぞって言うサビト語を翻訳すると…
ちゃんと考えないで無防備に行動してると、参加者の中に潜んでる殺人犯に殺される危険があるから気をつけろよって…まあ、そんな感じ?
あくまで好意の一言だったんだよ、そうは聞こえないかもだけど…』

そこでようやく全容が見えたらしいアオイは
『なんか……いきなり怒ってサビトに悪い事しちゃった…』
と、いきなり沈み込む。
うあ…失敗したか。サビトの人物説明を補足するつもりだったんだけど、ちと言いすぎた。

『でもまあ…わざわざああいう言い方するサビトも悪いけどね』
と、フォローをいれる。
まあこれも本音。頭はいいんだからいい加減そのあたり学べよとマジ思う。

ま、それでもなんとかアオイの気持ちも収まって落ち着いたところでサビト達と合流。

アオイだけに言うのも不公平なんで、サビトの方にも
『サビト、今回はサビトが悪い。
自分が本当に殺されるかもって時にあんな事言われたら本気で怖くなってパニック起こすよ?
言いたい事はわかるんだけど、それこそ相手は女の子なんだからさ、言い方考えてあげないと忠告してあげてるつもりでも逆効果だよ』
と、チクっと釘を刺しておく。

もちろん、サビトは悪気はかけらもない奴なんで、それに対してあっさりと
『…悪かった』
と即謝罪の言葉を述べた。

その後それでも殺人がこのゲームの賞金が原因で起こってるってことは、これからもこういう事が起きる可能性大だし、自分が犠牲者にならないために注意すべき点というのをサビトが事細かに注意していく。

『とりあえず…以前も言ったけど絶対にリアルの身元割れるような話は口にするなよ。
住所とか名前はもちろんだが、最寄り駅とか、よく遊びにいく場所とか、直接関係なさそうな情報も、いくつか集まれば範囲絞り込まれたりするからな。
あと周りにもこのゲームの話もするなよ。
全然関係ないあたりでも、そこからまわりまわってとんでもない所に情報流れたりするからな。
あとはそこまで馬鹿じゃないとは思うが主催とかを名乗る奴から呼び出しとか受けても慌てて飛び出すなよ。
自分から会社の方へちゃんと確認いれろ』

ま~、よく思いつくな。この他にも山ほどの具体的な注意を並べるサビト。
なんつ~か…いつも思うんだけどこいつ本気でなにもんよ?

そうしてるうちに、いきなりゲーム内だけで見られるメールにあたる物、メッセージが来た。

送信者は…メグ。どんな奴だっけ………思い出せない。
とりあえず開いてみる

『こんばんは。参加者の一人、ウィザードのメグです。
このメッセージは全員に送っています。
知らない方もいるかもしれませんが、今日同じく参加者の一人だったゴッドセイバー君が誰かに殺されました。
原因は断言はできませんけど、このゲーム絡みの可能性が高いと思います。
もしそうだとすると今後残った参加者にも危険が及ぶ可能性は充分あると思います。
そこで皆さん、20時~24時以外でも情報交換等ができるようにメールアドレスを交換しあいませんか?
了承して下さる方は私までメッセージでメルアドを送って下さい。
一応明日21時までにメルアドを教えて下さった方には、私を含めた送って下さった方々全員のメルアドをお送りします』

『メッセ…来たか?』
しばらく全員メッセージに目を通してたらしく無言だったけど、サビトが最初に沈黙を破った。

『うん、俺んとこは来てる』
『私の所にもきてます』
『私のとこも…』
全員に送ってるって言うのはホントらしい。

『やっぱ…これもダメ…なの?』
アオイが恐る恐るお伺いをたてる。

個人情報は教えちゃ駄目って言うサビトの事だから、反対なんだろうなぁ…。
でもアオイのメルアドまじ知りたいっ。
他の奴のはどうでもいいから…っていったら余計に反対されそうだから黙っとく。

ところがてっきりやめとけって答えを返してくると思ってたサビトは、あっさり期待を裏切ってくれた。

『ん~、これはいい』
『ええ??さっきまで個人情報駄目っていってたじゃん』
思わず言い返すアオイに、サビトはただし…と付け足した。

『携帯とか普段使ってるメルアドは教えるなよ。
適当なフリーメールとかでこのゲーム関係の連絡用にしか使わないいつでも捨てられるようなメルアド取っておけ。
いわゆる捨てアドって奴な。
情報交換や連絡だけならこのゲームやってる間だけだし、それで充分。
あ、当たり前だけどメルアドに自分の名前もじっていれるような真似はするなよ』

なるほど…。
まあ他はともかく念願のアオイのメルアドげっとだぜ♪
なんでもないのにメールとか送ったら引かれるかな~。
考えてみれば俺、自分の方から積極的にメールとか送った事ないや。

『って事で今日ログアウトしたら全員捨てアド用意して、明日こいつのところに連絡な。
で、一応こいつからメルアド書いたメッセきたら、ちゃんとホントにメルアド配ってんのか4人で自分のメルアド言って確認するぞ』

おっけ~、おっけ~いくらでも取るっ。
その日はそれからログアウトすると、すぐ適当なフリーメールのメルアドを取った。

そして翌日、そのメルアドをメグの所に送る。
んで、4人でレベルあげには出かけずに締め切りの21時を待った。
30分後…メグからまたメッセージが送られてくる。

それを開くと、9人分のメルアドと共にメグからの結果報告。

『こんばんは。今回は私の提案に賛同して頂いてありがとうございます。
8人の皆さんが送って下さったので、私のを合わせて9人分のメルアドを送らせてもらいます。
一応21時を待って返答の無かったショウさん、ヨイチさんに声をかけてみたのですがショウさんは今回の事で怖くなったのでゲーム自体をやめるから参加しないとの事でヨイチさんは全く無反応なので、参加の意志なしと考えさせてもらうことにしました。
一応間違いないとは思うのですが、各自ご自身のメルアドを確認の上、間違いがありましたらメグまでまたメッセージをお願いします』

とりあえずメグのメッセージに目を通して、4人でそれぞれ自分のメルアドを確認した。
俺ら4人に関しては確かに全員のメルアドが正しく記載されてるので、ひとまず目的達成!
おっしゃ~!アオイのメルアド~!

『でも…さ…』
とりあえずメルアドを確認し終わったところで、アオイがいきなり言いだした。

『こんな事件起こってるわけだし、ショウみたいにやめるっていうのも一つの選択だよね…』

うっあああ~~~それはないっ!
ゲームやめられたらマジもう接点ないじゃん、俺ら。
アオイの言葉に焦る俺。

その後の経過…みたいなのメールで知らせてそれきっかけに…とか無理?
…でもこのゲームの為に取ったアドレスならやめたら見なくなる?
色々俺が考えてると、サビトがため息一つ。

『お前さ…バ』
多分次に絶対”カ”って続けたかったんだと思う。
でもさすがに昨日の今日で反省はしてるのか、その言葉は飲み込んだらしい。
『えと…な、それ無駄』
と、あらためて言った。

『なんで?やめちゃえば一億もらう権利もないわけだし殺す必要ないでしょ?』
『やめられれば…な。でもこれってある意味やめられないからな』
『…?』
サビトがわかってないな、とまたため息をついた。

『最初の主催からの手紙であっただろ。
一度やめても再開可能でディスク紛失したり破損してもまた送るって。
つまりな、本人がやめたつもりでも実際はエントリーされてる状態なわけだ。
だから犯人から見るといつまたライバルになるかわからない相手なわけだ。消す対象からは外れない』

あ~そんな事書いてあったっけ。なるほど!

『どうすれば…いいの?』
心細げに言うアオイ。

とりあえずゲームをやめるという選択は消えたらしい。
ホッとする俺。
でかしたサビト!

『まあ…犯人が捕まるか誰かが魔王倒して一億手にするかだな。
とりあえず騙されて自分のリアル明かしたり誘い出されたりしないように気をつけてれば大丈夫だろ』
と、サビトはあっさり言う。

その言葉にもアオイは不安げだ。
けど、おれは確信あるわけじゃないんだけどさ…なんとなくサビトの言う事聞いてれば安全、そんな気がしてそれほど深刻な気はしなかった。




第二の殺人(9日目)


結局…色々注意受けたりとか相談したりとかしたんだけどさ…実際のところゴッドセイバーがなんで殺されたのかなんて、確実なところはわかんないよな。
ゲームが原因の可能性は高いけど、リアルで何かやらかしてたとか通り魔とかいう可能性も0じゃないもんなぁ。

まあ…今回は色々出遅れたし情報でもないかと思って昼間っから普段見ないニュースなんてつけてみたら、速報。高校生また誰か殺されたって?!
秋本翔太…男ならまあいっか…じゃないけど、多分サビトではないだろうし他の誰かだったとしても影響無し。
一応名前だけはチェックしとくか。

とりあえず…それでもアオイは怯えてるだろうから今日は今度こそ早くインしよ~。


そして20時。
もう思い切り時計とにらめっこして20時になると同時にイン。
やったっ!一番乗りだっ!

少ししてインしてくるアオイに
『おはよっ!』
と挨拶してパーティーの誘いを送る。

二人きりのパーティー…だったのは残念ながら一瞬で相変わらず早いサビトを誘って3人パーティー、その後お姫様がのんびり来るのを誘って全員集合。

ま、揃っちゃったもんは仕方ない。
『レベル上げいこっか』
という俺に
『そうですね。私、海岸行きたいですっ』
と主張するお姫様。

もう先頭を歩く行き先決める決定権持ったサビトがお姫様のイエスマンなんで、これでいつもなら
『じゃ、行くぞ』
と言って歩き始めるところなんだけど、今日は珍しく
『あ~…ちょっと今日は待ってくれ』
と、サビトが異を唱えた。

『サビト…?どした?』
珍しい事もあるもんだと思って聞くと、サビトは
『いや…悪いな、リアル事情で30分ほどキャラ放置するから。
なんなら3人で先行っててくれ』
と言う。

もう嘘バレバレ。
つか、ありえんでしょ。サビトが自己都合で仲間待たせるって。
それくらいなら前日に来れないから好きにしててくれって言ってインしない人間だ。
ま、他は騙せても俺の目はごまかせませんよ?

『じゃ、ここでおしゃべりでもしてお待ちしてますねっ。
みんな一緒の方が楽しいですし(^-^』
とお姫様はいつものぽわわ~んとした口調で言って噴水の端に腰を下ろした。

ま、これで追求する時間はできたか。
サビトにはアオイのようにまどろっこしい前置きは要らない。
(リアル事情…じゃないよな?)
と、いきなり本題に入る事にする。

(お前はお見通し…だよな、やっぱり。ユート)
まあ俺には隠すつもりはなかったらしいサビトはあっさり吐く。

(一応…アオイには言うなよ。また暴走されても困るし)
というサビトのウィスとほぼ同時にアオイから
(サビトとウィス中?もしかして離席って嘘だったり?)
というウィスが来る。

あ~どうするかなぁ…。

とりあえずアオイには
(ごめんね、今ちょっと取り込み中。あとでちゃんと話すね(^^;)
と返事は先送りにしておいて、サビトには
(もちろん♪)
と無責任に返しておく。

(んで?なんでいきなり居留守使ってるん?)
さらにうながすと、サビトは始めた。

(ん~、お前も多分チェックいれてるとは思うが、今日また高校生殺されたろ)
(あ~秋本翔太ね)
(そそ。あれがな…今回の参加者かどうか知りたい。
ま、全員絶対にここでインアウトしてるとは限らんが、とりあえずな)
ふむり。

(とりあえず知ったからと言って即事態が動くわけではないとは思うが、命かかってるわけだし情報は多い方が良いだろ。
まあ…俺の判断が全て正しいわけじゃないし、これからは二人で情報共有するぞ。
んで、お互い気付いた事は指摘し合うってことで)

(ん~それは良いけど…二人で…なん?)

(姫はもう最初の出会いの時からして暴走気質なのはわかってるしな…。
変に情報与えるよりは絶対に守るべき指示だけ与える事にしてる)

(守るべき指示?)

(リアル話さない事、呼び出しは絶対に受けない事、俺がいないところでユートとアオイ以外の参加者と話をしない事。
それだけ守ってればまず人物特定される事ないし、姫にはその3点を厳守してれば絶対に身の安全は保障するって言ってあるから)

(なるほどね~。だから意外に冷静なのね、お姫様は)

サビト…さすが賢いな…。
逆に俺もそれ守ってればおっけぃって事だな。ま、アオイ以外にってことで。

(で…本当はアオイにも情報共有させてって思ってたんだが無理っぽいから…。こ
れからは姫と一緒。必要な指示だけ出す事にした)
まあ…アオイの精神衛生上もその方がいいだろうな。


サビトとのウィスはそこで終わって、結局離席宣言して30分経たないうちに、ゲーム離脱宣言したショウとメルアド交換スルーのヨイチ以外は姿を見せたんで、サビトが動き出した。

『待たせて悪い、行こう』
いつもみたいに先に立って歩き出すサビトの後を皆で追いながら、アオイに事情を話す。
もちろん…サビトには絶対に話した事秘密って条件付きで。

殺人も二度目だったせいか、もしくはサビトが全面的に守ってくれるらしいという安心感のせいか、俺が心配したほどアオイは動揺してないぽい。
狩り場の話などしながら足取りも軽くサビトの後ろを追うお姫様を追っている。
俺が最後尾でそれをさらに追ってると、またメッセージが来た。
今度は…アゾット。

『アゾットって…男プリーストだったよな?』
ってサビトが言うってことは…今度も全員にメッセきてんだな。
『だね。いかにもヒーラーって感じのあたりが柔らかい奴だった気がする』
と答えて、俺はそのメッセに目を通す。

『こんばんは。参加者のアゾットです。
なんとなく気にしていらっしゃる方もいるとは思いますが、今日の昼過ぎに秋本翔太君という高校生が殺害されたというニュースが放映されました。
参加者の一人、イヴさんによると、殺された秋本君は元このゲームの参加者のショウさんらしいです。
親しかった相手が二人とも殺害された事でイヴさんも非常にショックを受けていますし、犯人の男の次のターゲットが自分なのではと、とても怯えてもいます。
もちろん、僕を含めて全ての参加者がそのターゲットになりうるわけですから誰しもが他人事ではありません。
そこで下手に相手の事を知らないまま不安を抱えるよりは、一度全員街の広場に集まってどういう参加者がいるか顔合わせをしませんか?
現在僕はイヴさんと共に街の広場の噴水前にいます。
来られる皆さんはぜひ、噴水前までお願いします』

ショウっつ~と…あのサビトに絡んでた嫌な奴か。
俺は正直サビトが言う通り他にリアル明かさず呼び出しを受けても行かないを誰かが魔王倒すまで徹底すれば別に大丈夫だとは思うし、どっちでも良かったんだけど
『戻る?』
とサビトにお伺いをたてると
『そうだな』
という答えが返ってきたから、まあ戻る事にした。



俺らが戻るともう俺らの他に4人ほどが噴水の周りに集まってた。
イヴと…その隣にはもう見るからにプリーストのアゾット。
アーチャーなシャルルはなんだかサビトに興味があるらしくサビトを追い回してキレられてる。

そこで
「サビトってさ、すごぃ男らしいよなっ!そういう奴って僕超好きだよ!」
ってキレたサビトに向かって言えるところが大物なのか怪しい奴なのかよくわからん。

ある意味…うちのお姫様と同じ、周りの意見も気持ちも全く関係のない人種なのかもしれない。
まあ、お姫様は見るからにお姫様オーラふりまいてるからやんごとないですむんだけど、こいつは下手するとただの痛い奴かな。

あと一人はウィザードのエドガー。
こいつはイヴとアゾットの周りをウロウロうろついて、今回の殺人事件、イヴが怪しいとか言ってる。


殺人事件はとにかくとして、イヴがろくでもないのは同感。
裏で画策するタイプだよな。

取り巻き二人がいなくなった途端、あの女王様ぶりをすっかり隠して傷ついた乙女を装ってアゾットを取り込んでる。
たぶん…プリーストのアゾットだったら前衛のイヴとしては理想のパートナーなんだろうな。
後ろで回復だけさせて自分は1億狙えるし。

ゴッドセイバーは馬鹿だったしショウは嫌な奴だったとは思うけど、イヴが俺的には一番気に入らない。


ま、個人的好き嫌いを別にして今の状況を整理してみるか。

殺されたのは通常会話でリアルの自分の情報をだだ漏らしてたゴッドセイバーとメルアド交換すらせずにゲームから離脱宣言をしてたショウ。
両方ともイヴの取り巻き。
ゴッドセイバーはもうリアル漏れてたわけだから誰でも殺す事はできたんだけど、ショウはメルアドすら誰も知らなかったんだよな。
リアル情報知ってたのはイヴだけ。

でも今アゾットとエドガーとのその辺のやりとりから、イヴいわく、ショウは例のメルアド交換提唱された時にやめるって言ってなくて、自分のメルアドも送ったのにやめる事になってたから、メグに問い合わせ中だったとのこと。

ショウがやめるって言ってなかったというイヴとショウはやめると言ってメルアドを送って来なかったというメグ。
どちらかが嘘をついているという事になる。
んで、それを問いつめようにも、何故かメグが今来てない。

まあ…どっちが嘘ついてるかなんて死人に口なし、肝心のショウが死んでるから確実な事はわかんないんだけどね。

嘘をついてるのがイヴならイヴ、メグならメグが一番怪しいって事になるんだが…。

まあ…アゾットの、もしイヴが犯人ならどう考えても仲良かった二人から殺すなんて自分が真っ先に疑われるような殺し方はしないっていう意見も一理はあると思うんだよな。
なんか…嫌なこずるい女の典型みたいな感じもするから、確かにどうせなら他になすりつけられるような形で殺してくと思う。

だから、もし嘘ついてるのがイヴだったとしても自分が疑われる状況になっちゃったからメグになすりつけるための嘘の可能性もある。


そんな事をモンモンと考えてると、いきなり珍しい奴からウィスがきた。

(突然ごめん。
僕の長年培われてきた洞察力だと、君が一番人間性的にも理性的にも信用できる気がしたんで相談したい)
と、なんだかほめ殺し(?)から入ってきたのはエドガー。
イブが怪しいと本人に詰め寄っていたウィザードだ。

(あ~、まあなんつ~か、”良い人担当”らしいから、俺。
信用できるかどうかは別にして、言いたい事あったらどうぞ?)

思い切り何か期待されても困るし、でも情報はなんでも集めておきたいんでそう返しておくと、エドガーはニヤリと笑った。

(頭も…良いらしいね。安心した。
最初に言っておくけど、僕の事は君の他の仲間にも言わないで欲しい)

(あ~、はいはい。エドガーの名前出さなきゃ情報はもらしてもおっけい?
例えば…俺らがショウが秋本翔太って知らなくてエドガーがそれ知ってて俺にショウ=秋本翔太だよって言ったとして、それをある筋から知ったんだけどショウ=秋本翔太らしいよ、みたいな感じで)

(ああ、それはいいよ。
漏らして欲しくない事の時はその都度僕の方がそれを付け加えるから)

(らじゃらじゃ。んで?相談て?)

(それを証明する術は本当にないんだけど、僕は今回の殺人には一切関与してないし、君もそうだと僕は確信してる。
というか…僕の判断で一番犯人だという可能性が少ないのが君だと思ってるんだ。
で、僕は誰が犯人なのかを突き止めて行きたいと思ってるんだけど、個人で動いてるあたりはともかくとして固定パーティーだと人物像を把握しにくいんで、できれば君の仲間がどんな感じの人物なのかとか教えてもらえるとありがたい。
もちろん別に君の仲間を特に疑ってるとかじゃなくて、とにかく集められるだけの情報を集めて、その中から必要な情報と不必要な情報を取捨選択して推理を進めていきたいんだ)

ん~~どうするかねぇ…。
まあ…流す情報はこっちで選択できるわけだから個人情報とかもらさなければいいだけなんだけど、問題はそれを他に隠してっていうがなぁ…
バレたらこんな疑心暗鬼になりやすい状況なだけに仲間の信頼失いかねない。
でも向こうからも有益な情報くる可能性もあるわけだし…。

サビトは…事情話せば信じてくれるか…。
お姫様は気にしないな、多分。
アオイが…暴走するのが一番怖い…


(ちょっと考えさせてくれる?俺は俺の仲間を全面的に信じてるから、万が一にでもその仲間から信用をなくすのは怖い。こういう状況だから余計にね)
とりあえずそう返しておく。

(もっともな話だね。
一応…僕が言いだした事だし僕の方からは随時情報が入り次第送らせてもらうよ)
幸いエドガーはそれを好意的に取ってくれたらしく、もめずに終わった。







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