オンライン殺人事件クロスオーバーN01

プロローグ


あれから時は流れてもう12月。
当然普通に学校が始まっていて、私は極々普通の高校生に戻っていた。

こうして普通の高校生やってるとあのドタバタが夢見たいに思えてくる。
高校2年生の夏休み…その間だけみてた刺激的な夢…。

宿題をやりながらボ~っとそんな事を考えてると携帯がなった。
あ…ユートだ♪

「もしもし、ユート♪」
「ばんわ~、アオイ。明日さ、帰り遊びにいかない?」
「うん、いくいく~♪」

ユートとはあの後もよく会っている。
ただ、会ってやる事が一緒にマックでだべったりカラオケ行ったりだからなんとなくサビトやギユウちゃんを誘うのは気が引ける。
どうしてるかなぁ…。

「サビト達にはあれから会ってる?」
ユートに聞いてみると、
「たまに電話で生存確認はいれてるよ、サビトには」
との答え。

「どうしてる?元気そう?」
さらに聞くと、ユートがさらに答える。

「ん~、忙しいみたいだね。夏休み色々あったし勉強しないとって言ってた」
「あ~…現役合格しないと針千本だもんねぇ…」
思わず思い出し笑いをする私に、
「なにそれ?」
と今度はユートの方から質問をしてきた。


…まずった……聞いてた事も秘密だったのに………

「あのさ…」
迷った末に私は口をひらいた。

「私が聞いてた事も、私から聞いたって事も絶対絶対秘密だよ。
でないと私がサビトに殺されて川に浮いちゃうから」

ユートには……秘密持ちたくないんだよなぁ……。
しかたなしに私が言うと、ユートは電話の向こうでゴクリとつばをのみこんだ。

「そんなに……すごいこと?」
「……聞いてたってばれたら殺される程度には……」
私の答えにユートは
「すっごい聞きたい!絶対言わないからさ…」
と私をうながす。

私はその言葉にあの暑い夏の日に思いを馳せた


ゆびきりげんまん


別荘についた初日……
アゾットの日記を読んで、サビトとギユウちゃん以外の4人で宿題を終わらせて雑談してた時、私はふと寝室に戻ったギユウちゃんに飲み物を届けてあげようと、立ち上がってソッと盛り上がる3人から離れた。

そしてリビングを出ると私はキッチンにいって冷蔵庫からウーロン茶とオレンジジュースのペットを取り出して、寝室のある2階に向う。

サビトは…甘いもの苦手、だけどギユウちゃんは絶対に甘党だよね。

ギユウちゃん寝てるかもしれないから、ノックせずにソッとドアを開けると、なんだかボソボソ話声が聞こえた。

「…どうすべきなのか…本当にわからなくなってきた…」
サビトの深刻な声に思わず足を止める。


「さびとは…どうしたいの?」

相変わらずぽわわんとしたギユウちゃんの声。
深刻なサビトの声とは裏腹に、お茶の好みでも聞いてるかのようなノホホンとした声音なのが彼女らしい。

「…普通に…東大から警察庁って思ってたんだけど…」

うわあぁ…ナチュラルに東大の名前が出てるよ…
”普通に”…なんですか?それって…

「けどって?それじゃ駄目…?」
「駄目…かもしれなくないか?」
「どうして?」

「……ギユウ…」
もう思いっきり緊張感のないギユウちゃんの問いにサビトがまた思いっきりため息をついた。

「ギユウはさ、聞いてなかったかもしれないけどな…ジジイの話…」
聞いてなかったに一票と私も思って密かにうなづいたが、意外な事にギユウちゃんの言葉
「あ~不正がわかってもとかいうやつ?」

って…聞いてたんだ。

「そんな程度の事なら…」
はいぃ?そんな程度ですむんですか?
「やりたい様にした方がいいと思うけど?」
サビトも…私と同じこと思ったんだろうな、無言でまたため息。

「だってね、会社継いでもさびとは結局同じ事で悩む事になると思う」
「同じ事?」
「だって…その会社が世界最強なわけじゃないから…
外国との折り合いとか、必ずしも正義で行動できない事もでてくるでしょ…。
そうなった時ってあくまで主張貫いたら普通に真面目に働いてるすごぃいっぱいの社員の皆さん路頭に迷っちゃうよ?
大きな会社だったらそれだけいっぱいいっぱいの人よ?」

おお~ギユウちゃん意外に賢いっ!

「結局…もうそれが嫌だったら世界征服しかないと思うっ、世界征服っ!」

いきなりそこに辿り着く所もなんかギユウちゃんぽくて笑えると言うか……。

「だから…ね、少なくとも自分がやりたい事やったら失敗してもやりたい事やれたっていう意味があるでしょっ♪」
そこでそれまで無言だったサビトが言った。

「…自信ない……」
それはいつもの俺様なサビトからは考えられないくらい小さな…疲れて沈んだ声。

「いつも…自分が良かれと思ってやっても失敗するから。
本気で悪気はないんだ…嫌われても良いとか思った事ないし…
他人を傷つけたいとか思ってるわけでもない。
でも気付けば傷つけて嫌われてる。
すごく考えて行動して失敗しない様にとか思っても結局失敗して何も残らない。
自分がやりたいようにやるってすごい無駄な気がしてくるんだよ…
最後には…もう何をやりたかったのかすらわからなくなってくる…」

……サビト…。

サビトのおかげで私達みんな無事なわけだし…全然失敗じゃないと思う。
物理的にもそうだけど、殺人事件が起こってる間、サビトが守ってくれるって思うと精神的にもすごく心強かった。
魔王だってサビトがいたから倒せたんだよ。
立ち聞きしてる身分だから伝えられないのがもどかしい。

「わかったっ!じゃ、えっとね、私は会社で難しい顔してるさびとより、警察ではりきってるさびとが見てみたいっ!」

はぁ?
ギユウちゃんは相変わらず唐突だ。

「私は会社社長より警察官がいいっ!ね?
それでもしさびとが失敗しても私の希望は適うから無問題♪」

ぷ~っ!!
サビトが吹き出した。

「すごいな、ギユウ。俺より俺様だな」
「だって…さびとにやりたい事ないって言うならさびとの人生がもったいないじゃない?
それなら私が有効活用♪」

ギユウちゃんて……すごい大物かも…。

「じゃ、ギユウのために警察のトップでも目指してみるか。」
「うん♪」

いつも通りのサビトの声。
それからちょっと静かな…おだやかな口調で続ける。

「ギユウは…すごいな。俺もどうせ空気読めないとかならそんな風になりたかった」

「すごい…?さびとのほうが全然色々できてすごいよ?
私の夏休みの宿題とかものの30分でできちゃうし、今回のゲームのゴタゴタも全部さびとがなんとかしてくれちゃったし」

きょとんとした口調のギユウちゃん。
そっか~やっぱり宿題みてもらったんだ。
私は内心吹き出した。

「あ~勉強とかはある程度技術だし、危機管理とかはプラス知識だから。
学び方わかってて情報が流れてくる環境にいれば自然になんとかなる。
でも人間関係だけはな……。
ユートもな…上手いと思うんだけど、あれは勉強で言えば秀才というかある程度の才能とたくさんの努力。
まあ…それはそれですごいと思うし尊敬してんだけどな。
俺がまずい事言っても理解しようとそれを自分の中で整理してこれまでの人間関係を考慮した上で許容しようとしてくれる」

「さびと…難しくてわかんない。ユートさんについての話」

サビト相手にここでそういうツッコミが入れられるのがギユウちゃんはすごい。
サビトは、ああ、悪い、と軽く笑みを浮かべた。

「ようは…俺が相手がムッとするような事言ったとすると普通の奴はムッとする。
でもユートはそれにムッとしないわけじゃないんだけど、俺は友達だから悪い意味で言ってるんじゃないだろうなって考えてくれるって事。これでわかるか?」
「うんうん」

あ~そうだよね、ユートって。
一見どう考えても悪い行動や言動でも良い意味に取ってくれようとするよね。
でもまあそれはおいておいて…今更ながらサビトとのつき合い方がわかった気がした。
こんな事言ったら駄目かなって変に気を回すよりその場で思った事言っちゃった方がいいんだね。

「えっとな、だから俺を許容してくれるのは奴自身が努力して維持してる理性と知識なわけだ。
だから自分自身もすごくあたりが良くて人間関係のミスを犯さないんだけど、それは自然にできてる事じゃなくて、知識と努力の賜物なんだ。ちゃんと言うべき事を考えて取捨してる。
ようは…努力して勉強してる秀才なんだ。でもギユウは…ぶっちゃけ考えてないだろ」
「うん♪」
それに即答するギユウちゃん、お見事…。

「深く考えてないで物言ってるんだろうなって思う事がままあるんだけどな…
それで人間関係破綻するほどの事にならないだろ。
だから…ユートが秀才ならギユウは天才。
俺もなんだか腹立たないし、多分今までもそれほどすごいもめ方はしてきてないんだろうなってギユウを見てるとわかる。
なんというか、親はもちろん、友人とか周りにも愛されて育ってるんだろうなって雰囲気がな…すごくにじみ出てるから」

「あ、うん、それはそうかも♪お友達もいっつも諦めてくれるっていうか…
よく”ギユウちゃんだから仕方ないですね~”って言われてる」

お嬢様学校の中ですら、すでにそうなのか……

「たぶん…全然意識せずに人間関係で致命傷にならない選択ができてんだよな、ギユウは…。
それがめちゃくちゃ羨ましい」

あ…以前ユートの事も羨ましいっていってたよね、サビト。
人間関係…ホント苦労してきたんだね…。

「逆にさ…相手の事も不快な発言とかされても理性でなんちゃらじゃなくて、
不快ってこと感じないっていうか…友達が言う事イコール良い事って思ってるだろ」

「ん~~~~~~」
ギユウちゃんはそこで腕を組んで考え込んだ。
「あのねっ!」
やがてピョコンと顔をあげる。
「私ね、お友達に意地悪とか嫌な事とか言われた事ないっ!」

うっあああ~~それすごいなっ。

「………」

一瞬の沈黙…それから大きなため息。
サビトはがっくりと肩をおとした。

「えと…な…俺ギユウにも結構普通は怒るような事言ってる…」
「ええ~~??いつっ?!!」

本気でびっくりしてる様子のギユウちゃん。
まあ……口は悪いから…サビト。
長く一緒にいるなら当然言ってるだろうな……。

「さびと…?もしかして私の事嫌い…?」
考え込むサビトの顔をギユウちゃんがちょっと潤んだ目でのぞきこんだ。
「あ、いや。そういう意味じゃなくてっ!」
慌てるサビト。

「つまり…わざととか怒らせたくてとかじゃなくて…それこそ空気読めないってやつで…。
アオイとかに同じような事いったら大激怒されたとかよくあったし…」

サビトの言葉に私もちょっと苦笑い。
確かによく喧嘩したなぁ……

「まあ…ギユウがそんな風におおらかだから気を使わないでいられるっていうか、楽なんだろうな。
俺、ギユウ以外だとここまで雑談とかできんし、かといって沈黙が続くのも気まずくてな…。
アオイとか地雷多すぎて二人きりになると真面目に気を使いすぎて疲れる」

「アオイちゃん…楽しい人よ?あまり好きじゃないの?」
「あ~嫌いなら別に放置でいいんだけどな。友人だと思ってると嫌われたくないだろ。
だからうかつに話せん。
まだ面と向かって怒ってくれれば謝れるし修正もできるんだが、たいていの奴は黙って離れて行くから」

はい…その通りの行動取ってました…、ごめんなさい。

「えっとよくわからないけど…」
ギユウちゃんがジ~っとサビトの顔を覗き込んだまま言った。

「さびとがね最初にゲーム内で助けてくれてから今までずっとね、さびとから”悪意”感じた事ってなかったよ?」
その言葉にサビトはちょっと驚いたように目をみひらく。

「えっとね…上手く言えないんだけど…この人なら大丈夫って思った。
私ね、ほら、さびとも知ってる通り絡まれやすい人じゃない。
だから…実は男の人ってそんなに得意じゃないの。
うちの両親にしても…娘溺愛してるからっ。
父なんて私が小学校の頃とかコッソリ学校の鞄の底に隠しマイクしこんでたくらいの人なんだよ?」

うああああ……さすがギユウちゃんパパ。
こういう親だからこういう娘がってサビトの言葉が頭をよぎる。

「それでもさびとなら大丈夫ってなんか思っちゃったの。
えっと…だからね、さびとがそう思わせちゃったってこと。
さびとの善意って…言葉で伝えられなくてもちゃんと外に出てるよ?」
言ってギユウちゃんはにっこり。

「アゾットさんとかってね、逆に私の事嫌いだったと思うのね…。
嫌われるほどおつきあいした事ないけど、嫌われてたっ。なんとなく感じてた。
えと…ようは…何しても嫌ってくる人、何しても嫌われる時って絶対にあると思うの。
嫌われるのって嬉しくはないけど…でも私が気にならなかったのはさびとやアオイちゃんやユートさんがいたから♪
全員に好かれるのって無理だし、別に自分を嫌いって人と一緒にいなければいいだけじゃないかな?」
きっぱりニコリン♪と言うギユウちゃん。

「ギユウが言うと…世の中ずいぶんすっきりわかりやすい気がしてくるな」
サビトが感心したようにつぶやいた。

「本当に…ギユウの周りには複雑な大人の事情とか裏表とかそういうのが皆無な感じがしてホッとする」

「大丈夫♪さびとは好かれる要素満載だから♪好きっていう人いっぱいいるっ♪
そういう人といれば無問題♪」

「そんな事ない…。表面上は好意的に接してても裏で嫌ってる奴多い。
たぶん…自分を嫌ってる人間を全部排除したら誰も残らない」
アゾットの事…結構堪えてるんだろうな…。サビトが少し表情を曇らせる。

そんな俯き加減のサビトの言葉にギユウちゃんはキョトンと首をかしげた。
最後まで読まなかったから、アゾットの事知らないんだっけ。
一瞬の沈黙。それからまた天使の笑顔。

「じゃ、私が独り占めしちゃう♪私はさびとが大好きだから♪
さびとはこれから全部私のもの~♪」
ふわっとサビトの首を引き寄せて抱きつくギユウちゃん。

うああ~~~。
サビト真っ赤。
そりゃ…そうだよね。あの美少女に笑顔でそんな事言われた日には…。

「ギユウ……」
「はい♪」
「ゲーム終わったし…殺人犯の心配ももうない…」
「はい♪」
「その…護衛の必要もないし……俺、たぶん一緒にいて楽しい奴でもないから…ギユウは迷惑かもしれないけど…」
「ん~私は楽しいけど…それで?」

珍しく言葉に詰まりながら言うサビトにギユウちゃんは不思議そうな目を向ける。
すご~く緊張してるサビトとぜんっぜん緊張感のないギユウちゃん。
すごく対照的だ。

「…それでも俺はギユウと一緒に居たいと思ってる…その…俺はギユウの事を好きだから…」
「気が合うね♪私もよ~♪
学校始まっちゃうと帰りは無理ですけど朝は送ってね♪
さびと通り道だよね?駅から学校までは途中下車になっちゃうけど♪」

なんというか……微妙にかみ合ってない気が……。

「…ギユウ……意味が………」
サビトもそう感じたんだろうな…、少し困った様な笑みを浮かべた。

「意味??」
きょとんとハテナマークを浮かべるギユウちゃん。

「自分が女で俺が男だってわかってるか?」

「当たり前じゃない。
いくらなんでも自分の性別くらい知ってるしさびともどう見ても女性には見えないしっ」
はっきりきっぱり断言するギユウちゃん。

また全然聞かれてる意味わかってないぽい予感…

「これ…本気でとぼけてるわけじゃないのがすごいな…」
サビトのつぶやき。
「あ~、もういい!」
あ…キレた……。
サビトが言ってまっすぐギユウちゃんを見た。

「俺はたぶん東大現役で合格して22で卒業後警視庁に入るっ。
そうしたらギユウと結婚したい!これで言いたい事いい加減わかっただろっ」

うああああ……ギユウちゃんもすごいけど、サビトもある意味すごいよっ。
いきなりそこまで飛躍するのかっ……まあ…サビトらしいけど。

「……けっこん……」
ギユウちゃん、目が点。

そりゃそうだ。
齢17歳…高校2年生。
つき合おうって話すっとばしていきなり話がそこにいったら普通は目が点だ。

思考停止30秒経過…

「……悪い…いきなりすぎだった…か?」
心配そうなサビトの声で我に返ったらしきギユウちゃんは真っ赤になって次の瞬間ブンブン首を横にふった。

そして
「さびとっ!」
とサビトに詰め寄り可愛い眉を少し寄せてサビトを見上げる。
「なんだ?」
「男に二言はなしねっ!嘘付いたら針千本飲ませちゃうんだからねっ」
「………」

…ギユウちゃん…可愛いよ…可愛すぎだ…。

真剣な顔でサビトを見上げて小指をたてた小さな手をサビトに差し出すギユウちゃんに、それまで息を詰めて緊張していたサビトが破顔する。

「ああ、約束な」
と笑いながらそのまま小指をからませた。

え~っと…ここで出て行ったらまずい…よね、と、さすがに思う…
まあ…なんだか聞かなかった振りした方がよさげな感じなので私はそのまま声をかけずにソッと部屋をでた。

「……というような事が、ね…」
「すっげ~~!!!!」

電話の向こうでユート爆笑中。
確かに色々な意味で…すごい。
あのゲームでの殺人事件も、賞金も、その後の跡取りうんぬんの話も全部、私みたいな普通の高校生からすると現実感がない物語みたいな出来事だったんだけど、実はサビトとギユウちゃんの存在自体が一番非現実的な物語だったりして。

それを言うと、ユートはまだ少し笑いながら
「まあ…サビトはわかるけどね…」
と言う。

「わかる…んだ?」
私は全然わかんないよ。サビトも絶対に変!現実離れしてる。

「えと…ね、サビトはある意味純粋培養だから…」
「そうなの?」
「うん。小さい頃母親なくして警察の偉いさんの父親と二人暮らし。
周りの大人も警察関係者で学校は小学校から名門私立男子校。
親も学校も文武両道がモットーで、小さい頃から武道と勉強に追われてて、遊びの部分もなく育ってるからね。
俺が初めてあいつと会った時なんてさ、普通にマック行こうって誘って昼にマック行ったんだけど、
初めてきたって。ありえないっしょ?今時マック行った事ない高校生って」

うあああ…確かにありえない世界だよっ。

「彼女はもちろん周りに女の子もいた事ないどころか、たぶん俺らみたいな一般ピープルな友達もいない。
学校の周りはたぶん友達ってよりご学友って感じだったんじゃないかな。
だからさ…すごく楽しかったらしいよ、俺達とゲームで遊んだりとかするの」

そうだったんだ…。

「そんなだからさ…まあ…サビトはわかる。
そういう面でいきなり滑るような事言っちゃうの。
でも、それを滑らせないで当たり前に受け入れちゃう姫がすごいなと俺思った」

「まあ…ギユウちゃんもある意味普通じゃないから。
私フリをしてるとかじゃなくて本気で本当の天然て初めて見たよ」

「ん、まあね。でもそっか…警察いくか~。
主催の社長みたいな言い方されるとさ、サビトの性格的に嫌でも会社継がざるを得なくなるかな~なんて心配してたんだけど、まあ良かったね。
アゾットの事もまあある程度は振り切れたみたいだし。
旅行前色々悩んで落ち込んでたのに、いつのまにか元に戻ってるからなんでかな~とは思ってたんだけどそういうわけだったんだね」
「うん、結局天然最強と言うオチでっ」

「あ~でも会ってみたくなったかな、二人にももう一度」
そこでユートが言った。

「サビトには俺が言うからさ、アオイ、姫に連絡取ってもらえない?
さすがに姫にはかけにくい」
「明日?」
「うん」
「おっけ~♪じゃ、待ち合わせはいつもの場所ね?」
言って私達はいったん電話を切った。


「アオイちゃん、アオイちゃんなんですね~っ、お久しぶりです♪」
電話をかけたら相変わらずめちゃくちゃ可愛いギユウちゃんのアニメ声が聞こえる。
そして……電話の向こうで
「さびと~、アオイちゃんから電話きちゃったぁ♪」
というギユウちゃんの声に
「…ぎゆう…電話中にやめとけ…聞こえたらどうすんだ…」
と聞き慣れた声が……。

「聞かれちゃ…駄目なの?」
「ない事ない事妄想されるぞ…」

いや…だって…今すでに22時なわけで…

「なんでギユウちゃんの家にサビトがいるの?」
と妄想をたくましくして聞いてみると、
「聞かれてるよ?」
というギユウちゃん。たぶんこれはサビトに対して。
「もういい、かわれ」
と、言って電話に出るサビト。

「やほ~、で…妄想の通りなの?」
その言葉に久々に聞くサビトのため息。

「どういう妄想だかわからんが……とりあえず今姫ん家なのは事実。理由は…留守番」
「二人きりで?」
「まさか。姫父が今日帰れないから…女だけだと不用心だからと姫父から頼まれてな…」

相変わらず…グレイトなギユウちゃんパパ。
娘の彼氏はマイ息子なのか……

感心してると、サビトが一瞬沈黙
「わるい。俺の方も電話きたから姫にもどす」
と、再度ギユウちゃんに戻したもよう。
たぶんユートだな、サビトの方の電話。

「もしもし、アオイちゃん。お電話かわりました♪」
また電話から流れる可愛らしい声。
私がユートとまた4人で会いたいね~って話になった事を伝えると、二つ返事で了承する。
そしてそこでまたグレイトな申し出が……

「ね、じゃあ明後日お休みな事ですし、うちにお泊まりします?」
うっきゃああぁあ~~~
「行くっ!行きたいっ!!」
ギユウちゃん家も見たいし、噂のギユウちゃんパパママ見たいっ!
「じゃ、ユートさんにもお聞きしないとですね~」
「あ、サビトの電話多分ユートからだからサビトに伝えて」
私の言葉にギユウちゃんがサビトに伝え、どうやらユートも了承したっぽい。
なんか……めちゃくちゃワクワクしてきたぞ~~。


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