レジェロの宣伝というところまではとにかくとして、ユキの企画と言うのは少し怖いと思いながら、錆兎が詳細を聞いてみると、アオイは、
──あ、でもユキ君の企画にしては過激じゃないほうだと思うよ
と、全然安心できない言葉を添えて説明をしてくれた。
「えっとね、レジェロの前身のネトゲ、【レジェンドオブイルヴィス】は色々あって、当時の三葉商事の広報部の新人X君が、コウやユキ君、フロウちゃんと、私達を題材に色々書いて、私達が半分、あのゲームの半NPCというか、あのゲームの運営側公認のユーザーで会えればラッキーみたいな感じになってたんだよね。
まあそれでヘキサゴンとかゲーム外でも有名になって今があるんだけどさ。
で、今回レジェロでもそんな存在作れば楽しいんじゃない？ってことで…
どうせならアラサーの私達より、錆兎君達、現役高校生の方が盛り上がりそうだし、すでにさ、錆兎君て前回の学校の襲撃事件の動画で刃物手にした暴漢を投げ飛ばしてる動画が、〇ouTubeとかで拡散されてて、一部で無敵の会長様として騒がれ始めてるから…」
「え？？それ本当にっ？！」
現実関係でバタバタしていてそんなことは全く知らなかった錆兎が驚いて言うと、アオイの方も
「え？あんなに騒がれてるのに知らなかったの？」
と、目を丸くする。
「…マジか……」
と、頭を抱える錆兎。
「昨今は何でも簡単にネットで広められちゃうからね」
と、アオイは同情の視線を送りつつ、話を続けた。
「てことでね、ユキ君曰く、もう名が広まっちゃうならきちんとトラブル対処もしてくれる後ろ盾があった方がいいんじゃない？って言い出して。
どうせなら以前の自分達みたいに、会社公認プレイヤーって事にしちゃえば、社の宣伝にもなるし、何かあっても会社ぐるみで守ってあげられるからって」
「…具体的には？」
「えっとね、それで今回、私がランス君についてきたんだけど、私はこっそり存在するランス君の付属品と思ってもらって、錆兎君の日常とか差し支えない範囲で見させてもらえればなと。
錆兎君も真菰ちゃんも鯖ではもう元々有名人だしね。
出来れば他のみんなもOKな子は【コンコンキツネ】の子はみんな有名だから本名は当然出さないけどキャラ名でね、今錆兎君の家で合宿中って話させてもらえればありがたいけど。
どうかな？」
「どうかなって言われても…」
と、戸惑う錆兎。
だがそこで宇髄がパっと手をあげて
「俺は構わねえよっ！
あ、俺はサブマスで忍者のテンゲンなっ。
今後、ちょっと自宅遠くて親も仕事で不在がちなこともあって、たぶん高校いっぱいくらいはこの家から学校に通わせてもらうから、どんどん書いちまってくれっ」
と、手を挙げると、普段は自分から何かということはあまりしない伊黒がゴホンゴホンと咳払い。
「俺は召喚士のイグロだ。
錆兎とは心の友で定期的に彼氏会を開く仲でな。
まあ…錆兎を語るなら俺を語らないと言うわけにはいかないだろうから、やむを得ないな」
と、同じく手を挙げ、それに隣の甘露寺が当たり前に
「そういうことなら、イグロさんを語るなら私が絶対に出て来るわねっ！
格闘家のミツリですっ！」
と、ぶんぶんと手を振った。
そうなると義勇も当然のように
「私は錆兎の彼女だからっ！」
と、主張するし、亜紀については真菰が
「この子は私の新しい専属のファンタジア要員の音楽家、アキちゃんね。
あと、その隣はアキちゃんの彼氏のナイト。
カップルで錆兎と義勇ちゃんのカップル推しっていうちょっと面白い子達だから話題にはなると思うよ。
そして…残り1人は拒否権がいつもない赤魔のムラタ君ね。
ということで、書かせる代わりに今失踪中の錆兎達の元クラスメートについて三葉商事の色々なイベで流してもらうってどうですか？
で、錆兎は一応理事長にこういう物に協力する代わりに武藤まりのことで三葉商事でも協力してもらうってことで報告。
ダメって言われたら私が女子科生徒会から圧力かけるけど…」
「たぶん…うちの方はそれで大丈夫だよね？ランス君」
と、それまでずっと無言で後ろに立っている青年を振り返るアオイに、彼は
「社長様も難色示したりする理由はないとは思いますが、いざとなったら姫様に言えば何でもOKが出ます」
と、笑顔で頷き、錆兎は慌てて理事長に電話をする。
「ちなみに…産屋敷学園の生徒会って共学科より女子科の方が強いんです？」
と、真菰の最後の不穏な発言に思わず突っ込みを入れるアオイに、真菰はニッコリ。
「正確には生徒会じゃなくて、女子科生徒会OGの少し年配のお姉様達ね。
男性陣と言う意味では日本で一番強いOB持ってるのはコウさんの出身校だけど、あそこは男子校だし。
その政財界の大物の奥様方が多いのがうちの女子科だから」
「なるほど。納得です」
と、アオイはそれに少し顔を引きつらせて頷いた。
こうして理事長の許可も出て、レジェロの公式HPに三葉商事の広報担当アオイによる『コンコンキツネ主要メンバーによる合宿風景日記』コーナーが発足することになった。
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