清く正しいネット恋愛のすすめ_169_語り部登場

宇髄に続いて、空太と亜紀、村田、そして最後に伊黒と甘露寺が到着する。
こうして全員揃ったところで、早く着いて立ち働いていたあたりも一旦手を止め、3時のお茶がてら居間に集まって、錆兎が今回再度集まった理由について説明した。

「…というわけで…前回の暴漢のことを考えると脱走した武藤まりが何をやらかしてくるのかわからないし、義勇と伊藤は自宅に居てもあのレベルの襲撃があったら家族を巻き込んで危険だからな。
うちはその点、他人様のお子さんを預かることも多くて、セキュリティがしっかりしているし、いざとなれば俺が時間を稼いで兄弟子達を呼ぶこともできるから。

警察はもちろん、特殊部隊に所属してたとか、そんな人もいるし、全員集合したら下手すると軍隊並みだぞ。
もちろん全員が日本に居るわけじゃないけどな。

でもってだ、直接的に狙われているわけじゃない甘露寺も、武藤はクラスの女子全員を広く恨んでいたということだから、完全に安全というわけでもないし、俺達と一緒に居ることが多いから、義勇と伊藤が無理なら…という感じで狙われないとも限らない。

空太と小芭内はそれぞれ伊藤と甘露寺が心配だろうし…村田と天元は何かあった時に居ないと俺が辛いから、巻き込まれてもらうということで…」

と言う言葉で締めると、全員がなんとなく納得する。



「まあ俺は朝も言ったが、この家の方が学校通うの楽でいいしな」
と、楽し気な宇髄に、錆兎が

「ああ、そう言えば天元、爺さんには話しておいたから、あとはちゃんとお前が親の許可取っているって証明するために、お前の親御さんから爺さんに連絡入れてくれ。
そしたらお前の部屋は用意してるから、ここにいるうちに荷物運び込んでいいぞ」

と、朝の話をきちんと覚えていたらしくそう伝えると、宇髄が

「よっしゃあーー!!ちょっとメール入れとくわ」
と、ポチポチとスマホでメールを入れ始めた。

「うちの親も普段帰宅できねえし俺もあちこちふらつく人間だから、むしろ居所はっきりしてた方が親も安心ってもんだ。
ていうか、ウサ、保護者層からの信頼絶大だからな。
ウサん家で世話になるって言ってNG出す親いねえわ」
と、言いつつ送信を押す。


「ずるいっ!僕だって錆兎君の家で生活したい!!」
と、それにそう叫ぶ空太。

「いや…お前は普通に家族居るだろう?」
と、空太にはそう暗にNGを出す錆兎だが、空太はきっぱり
「居るけどっ!でも、ほら、僕はやらかしてるからっ!!
錆兎君の家できちんと更生したいと言えば許可が出るっ!!」
と、言い返してきた。プライドとか諸々は投げ捨てることにしたらしい。

すると、今度は伊黒が
「…俺は…両親が亡くなって伯父の家に厄介になっているんだが…どちらにしても大学になったら家を出ようと思っていて……」
などと言いだして、錆兎は、はぁ…とため息をついた。

「…爺さんは内弟子も多く取っていたしうちは部屋はあって環境も整っているし希望者が居ればダメとは言わんが…各家庭の説得はしないぞ。
各自、自分の保護者は自分で説得して、天元と同様、きちんと説得出来ている証に保護者から爺さんに連絡を入れさせろ」
と、最終的にその話はそう締める。


「…錆兎…私も父さんは反対は……」
「義勇はダメだ。
嫁入り前の娘が男の家で暮らすなんてとんでもない」
「でも…その嫁入り先なら…」
と、また朝と同じやりとりになるが、
「けじめがないのは好きじゃない」
と、錆兎に珍しくきっぱりと突き放されて義勇が涙目になった時、

「あ…えっと…ごめんねっ、私なんか変な時にきちゃった??」
と、いつのまにやら真菰に招き入れられた男女二人。
当然錆兎は両方とも良く知っている。



「え?いや…大丈夫です。
あれ?コウさんが来る予定では??」

と錆兎が少し驚いた様子で立ち上がると、女性の方が

「えっとね、コウは手配を頼まれただけだから…。
と言っても本人も自分が来たがってたんだけどね、忙しすぎて今抜けられても困るからってユキ君が泣いたら、フロウちゃんが男性の指導係はランス君にお願いしましょうって…。
ほら、彼執事だから?
誰かを守るプロだし、それなら錆兎君も学ぶところがあるでしょって…」
と、ワタワタと説明を始める。


「あー…ああ、わかりました。そういうことだったんですね…」
と、錆兎は答えてしばし自分の中で状況を整理して、そして改めて皆の方を向き直って説明をし始めた。

「もうテレビや動画でお馴染みだから人間関係分かっているかもだが、知らない奴のために言っておくと、爺さんが手配を依頼したコウさんはレジェロの制作会社、三葉商事の社長な。
で、その愛妻がフロウさん。

あ、もうレジェロの前身のネトゲのキャラ名の方が知られてるから全部通名で話すな。
で、コウさんの側近が今回の諸々を調べてくれたシステム管理全般担当のユキさんとコウさんの秘書のカイさんとフロウさんの護衛役のランスさん。
あとはコウさんの親友で営業関係のボスのユートさんと広報のアオイさん。

で、コウさんと側近5名で世間ではヘキサゴンと言われているわけなんだが、今回は男は単に自分の護身が出来ればいいわけではなく、女性を守るところまでということで、普段社長夫人の護衛も担当しているランスさんが来てくれたわけだ。
で…アオイさんは……」

と、そこで言葉を切ってチラリと視線で伺う錆兎に、アオイは

「えっとね、今回レジェロの宣伝に皆の様子を使っちゃだめかなって…
ユキ君がね、どうせならギブアンドテイクでどうよ?とか言い出して」
と、ちょっと困ったように頭を掻く。

「えっと…具体的には?」
と聞く錆兎にアオイは

「これね、ユキ君の企画だからねっ。
苦情はコウじゃなくてユキ君にってユキ君が…」
と、なんだか焦ったように言う。

その時点でなんだか一癖も二癖もありそうな気はしたが、まあ聞くだけは聞こうと

「はい、そのあたりは了解です。
で?どういう企画です?」
と、アオイを促した。



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