だいたいにおいて、嫌な予感と言うのはあたるものだ…。
理事長室に通された錆兎の目に飛び込んできたのは、数日前と同じ光景。
正面のデスクには理事長。
その前にある応接セットのソファの片側には悲鳴嶼行冥学校長。
そして…その学校長の正面のソファに並んで腰を掛けているのは武藤まりの両親である。
この時点で予感は確信に変わった。
と、もうそれは質問と言うよりは確認として口にすると、産屋敷理事長は
「うん。察しが良くて助かるよ」
と、少し困ったような笑みを浮かべて言う。
…ああ……と、ため息をつきそうになったが、武藤夫妻を落ち込ませても仕方がない。
おそらく彼らの方もため息をつきたいところだろう。
確かに保護責任というものもあるかもしれないが、あれから少しばかり調べてみた感じだと、弟の方は極々普通の真面目な生徒だ。
おそらく親が何か特殊な育て方をしたからああなったわけではなく、武藤まりが特殊な資質を持っていて、親がどう育ててもああなった気がする。
同級生に片思いをする女子なんて世の中に掃いて捨てるほどいるだろうし、それに彼女ができたら陰で表で嫌がらせをするくらいの人間は多数いるだろうが、あれだけ手の込んだ殺人教唆までやってのける奴はほぼいないだろう。
「…それで…どうするんですか?」
と、錆兎は聞いた。
「逃げた経緯については聞かないんだね」
と、理事長が少し興味深げな様子で言うのに、錆兎は
「もう逃げてしまったということなら、協力者の有無くらいでしょう?
逃げた状況で必要な情報は。
ですがそれがわかっているなら連れ戻せているでしょうし、起こってしまったことを思い悩むよりは対処を考えるのが先かと。
なので方針を伺って、こちらで気を付けること、協力できることがあれば対応するということで、呼び出されたのだと思っていますが、違いますか?」
ああ、ダメだ。
少し苛立って言葉に険があるかもしれない…。
そう思って少し反省。
軽く深呼吸をしたあとに、
「…険のある言い方に聞こえていたら申し訳ありません。
少々動揺してまして…他意はありませんので。
それで、どういう方向で対応されるんでしょうか?」
と聞くと、理事長がプスっと小さく噴き出した。
「理事長?」
「いやいや、ごめんね。
ぜんっぜん動揺している人間に見えないから、なんだかおかしくて」
「…動揺…してますが?非常に」
「君…本当に表情に出ないんだね」
などと言うやりとりのあと、それで?対応は?と3度目の同じ意味合いの質問をすると、君はどう思う?と返って来て、まさかのノープランじゃないよな?とため息をつきつつ、錆兎は
「飽くまで俺が思いつく限りの可能性ですが…」
と、諦めて口を開いた。
「まず選択は二つ。
警察に頼むか頼まないか。
頼むとしたら今回の諸々を明かすか明かさないか」
と、そこまで言った瞬間、武藤夫妻が青ざめる。
「警察に明かすのだけは…。
本人の人生はもう、自分で責任を取らせるのも仕方ないとは思いますが、何の罪もない弟には…」
と縋ってくる親心は理解する。
なので、錆兎は
「警察に全てを明かして…というのは最終手段から二番目の手段かと思います。
ですが、個人で探すだけよりは、警察に並行して探してもらう方がより効果的かと思うので、事件との関連性はおいておいて、親の意向としてさせようとしていた留学に反発して家出という形で話せば問題ないかと…。
個人としては…私個人の伝手で若干お手伝いできるかと思いますし、名が出ていいなら公共の電波で行方不明になった同級生として流すこともできますし、公共が嫌ならYou〇ubeの有名な配信者の知人もいるのでそちらで若者を中心に見かけたら連絡をもらえるよう流すことも可能です」
と、事件とは引き離して捜索依頼を出すことを勧めてみた。
それに理事長も
「そういう形でなら、うちの学園の卒業生にも色々顔の広い人間がいるので力になってもらうことは可能です。
いかがですか?」
と、言葉を添えて武藤夫妻に打診する。
もちろん武藤夫妻に異論があろうはずもない。
名前は出ないのが最良ではあるが、犯罪に走る可能性のある娘を放置して今度こそ本当に殺人を犯されるよりはマシだ。
あぁぁ…やっぱり無惨化した(||´゚д゚`)そして久々に誤字報告です。履いて捨てるほど→掃いて捨てるほどの誤変換かと(;´Д`)ご確認ください。
返信削除もう、同音異義語ミスはお約束のようにありますね😅
削除ご報告ありがとうございます。修正しました。
無惨化(笑)
こうしてどんどん終わりが遠のいていきます💦💦