翌朝…朝食時にはユキ君が加わる。
カイ君とランス君は早朝からバイト兼情報収集らしく、私が起きた時にはもう食事を終えて
出かけるとこだった。
おまけに弁当までってサービスしすぎ。
昨今の大学生って朝遅いんしょ?」
ユキ君が相変わらずすごい勢いで朝食を詰め込みながらいうのに、コウが答える。
「アオイとユートはな。
姫はもともと早寝早起き。
で、ここの家の女は料理に命かけてるから弁当作りとかは放置してやれ。
趣味の一貫だから。
あと間違っても台所には足踏み入れるなよ。
他はどこふらついてもいいが、あの聖域だけは男は一歩足踏み入れたら最後、鬼の形相で叩き出されるぞ」
お約束の忠告に私とユートは顔を見合わせて笑った。
ユキ君は感心したように
「なんて素敵な趣味」
と言ったあと、食事中もクルクルとキッチンとダイニングを往復するフロウちゃんに目をやって
「でもあれって手伝わんでいいの?」
ときいてくる。
「うん。私も最初はそう思ったんだけどね、邪魔しないのが一番のお手伝いって気付いたよ」
と、私は教えてあげた。
そして食事が終わっても後片付けは当然フロウちゃん。
コウはいつものようにリビングで仕事。
食事の後片付けが終わると、フロウちゃんはいつもの朝のお掃除。
「ね、アオイ先輩っ。ここん家の人々っていつもこんなん?」
シュタっと手を挙げてユキ君が聞いてくる。
ま、最初はみんな驚く。
「うん、こんなんだよ~」
私がいつものようにネットサーフィンしつつ答えると、ユキ君はう~んとうなった。
「あの人達って…お金持ちのお嬢様、お坊ちゃまじゃないん?
なんでその二人があんな忙しく働いてるんさ」
ま~ごもっともな質問で。
「フロウちゃんは…たぶん好きでやってて、コウは…早く生活基盤作りたいらしいよ?」
「生活基盤てお姉さん…卒業後じゃだめなん?
昨今の大学生って金持ちのボンボンでも在学中から親にスネかじり拒否られるん?」
ま、その疑問も正しいな。
「えっとね、コウの方がスネかじりしたくないぽいよ?」
「ふ~ん…」
ユキ君はチラリとコウに目を向けた。
「俺らいわゆる普通の生活してこなかったからさ…もしかして今時の若者にすごい偏見もってたかねぇ…」
「いや、コウやフロウちゃんを普通と思ったら駄目。
特にコウは…ユートいわく普通の育ちかたしてないから」
「そうなん?」
「うん。ある意味私達よりユキ君達に近いかもね。
小さい頃にお母さん亡くしてて仕事で忙しい厳格なお父さんと二人暮らし。
生活の心配ないだけで小さい頃から勉強と武道だけやらされてて遊びの部分全くなくて、なまじ才能あって競争勝ち残っちゃうから周り中が本分と違う所で自分を追い落とそうとするライバルで、普通の友達もいない。
高2で私達と会うまでほぼそんな感じだったらしいよ?」
「うあ…それきっついなぁ…」
ユキ君は素でひいてるぽい。
「俺ですらカイとランスいたしな…。
あいつらいたからやってこれた部分あるし…」
「だから…コウはすごく仲間大切にするんだよ。
私さ、2年前の事件でずっとコウにおんぶにだっこでさ、さらにコウの注意守らないで犯人に捕まっちゃってさ、それでもコウ助けにきてくれた。
で、その時色々あって私コウ疑ってて、それも笑って許してくれてね。
その後もユートとの仲でちょっと困ってた時とかも相談のってくれてさ、今に至ってる。
だからさ」
そこで私はユキ君を振り返った。
「絶対にコウ傷つけるような事しないでね。
それやったら私もユートも絶対に許さないからね」
私の言葉にユキ君は笑顔を浮かべる。
「なんかさ、アオイ達いいな。
育った環境とか性格とかみんなてんでばらばらなのに、それぞれすごく相手の事思ってるよな。
な、思わない?みんなでさ、三葉商事動かしてったら面白くない?
このままみんな一緒でさ。
もちろん俺だって当初の目的が全く関係ないとは言わないけどさ、コウとやってきたいって言うのも本気で本当」
確かに…ずっとみんな一緒だったら楽しそうだけど…
「俺この家に来て思ったんだけどさ、できればマンションかなんか買ってさ、あ、別に俺的にはシェア慣れてるから一軒家でもいいけど、それぞれすぐ顔見れる距離に住んで、時間取れる時はみんなで飯食ってとかさ…共有スペースで仕事の話でも雑談でもなんでも話してって良くない?」
う~ん…どうしよう…。説得されちゃいそうな自分がいる。
楽しそうすぎっ。
「は~い、ストップ。アオイ口説かない様にね、ユキ。
そういう事は決定権あるやつに言いなさい」
そこでいつのまにか側に来ていたユートが笑いながら割って入った。
「ん~でもユートも実は楽しそうだな~とか思ったりしてない?」
にやりといたずらっぽく笑うユキ君。
「ん~だって腹黒なんしょ?ユキ。俺ってほら、臆病だからっ」
さすがユート。スルリと交わした。
でも…ホントそんな風にできたら…楽しいだろうな。
なんて素敵な未来予想図。
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