オンライン殺人再びっorg_18_江○川○○ン探偵さっ

総勢7名。
ものすご~く賑やかな夕食。
よく食べる3人が加わってさらにおかずの品数も増えて豪勢だし。

”おかげでまた仲良しのお友達が”っていうフロウちゃんの言葉が本当になった感じ。
こんな状況なのにすごく楽しい。


そんな楽しい食事時間が終わると、また楽しいゲームの時間。
せっかくだからたまにはと全員リビングでパソコンを並べて和気あいあいとログインする。


「とりあえずさ、ランス、お前はアイジュから情報引き出せっ」
「カイはゴッド3人組に接触試みろ」

ユキ君がてきぱきとその日するべき事を指示して行く。
日々3人こんな感じでやってたんだねぇ。


「俺はちと例のイヴと接触持ってみるから」
と宣言して画面に集中するユキ君。

彼らにとってはゲームも本当に遊びじゃなかったんだねと、いまさらながら実感。

画面の中のキャラはおちゃらけた台詞はいてるのに、ディスプレイと対峙してる当人達は
すごく真面目な顔だ。


そんな周りに全く影響されることなく、フロウちゃんはまったり釣り中。
コウも珍しくその隣でおつきあい。

そんな中、一人難しい顔をしてるユート。

「どうしたの?何かあった?」
ユートのパソコンをのぞくと、そこにはウィスのオレンジ文字。

相手は…エドガー?!


「ちょっ、これっ!」
驚く私にユートがうなづいてみせる。

「自称…エドガーのリアル弟。
一応兄貴と俺のやりとりは日々隣でみていたって事だから兄貴に教えてた俺にメール送ってみてくれるように言ってみた。
まだあの時の捨てアド残してあるしさ。
本当にエドガーの弟で兄貴見てたなら例の暗号も入れてくるだろうしね」

あ~~あれ!
そういえば私まだ答え教えてもらってなかったよ…。

そんな事言ってる間に2年前にほとんどの参加者でメルアド交換したアドレスにメールが届く。



*****

一応始めまして、になるのかな。
僕的には初対面の気はしないんだけどね......
僕の方は日々兄の横で君を見ていたので、ユートは自分の友人みたいな感覚があるんだけど、
君の方は当然僕を知らないだろうから自己紹介をさせてもらおう。
僕は2年前に亡くなった芳賀耕助の弟。ここで本名を明かしても意味もないし、とりあえず
小五郎とでも呼んでもらえるとありがたい。
2年前は亡くなった兄耕助と仲良くしてくれてありがとう。
兄は君の事を唯一信頼できる友人だと言っていたし、僕もそう思っていた、いや、今でも
そう思っている。
だからその友人である君をこの陰謀渦巻くゲームで見かけた時、僕の探偵としての心が
君に迫る危機を忠告しろと僕をうながしたんだ。
おそらく君達参加者には知らされてなかっただろう、そしてそのまま君が平和に暮らして
いるのなら知る必要もなかったであろう真実を僕は知っている。
どうか驚かずに聞いて欲しい。
2年前の殺人の驚くべき真相と、現在起こっている真実を!

2年前のあの日…兄は真相の一部に辿り着いた。
連続殺人の犯人はイヴ。
その根拠についてはここでは割愛する。
そしてそれを知らずにそいつと行動を共にしていたアゾットというプリーストに忠告したのだが、
おそらく彼はイヴに騙されていたんだろうな…。兄を信じずイヴにそれを打ち明けたんだと思う。
結果、兄はイヴによって殺害された。
僕は念のためと託されていた、世間を騒がせている連続高校生殺人事件は三葉商事の企画した例のゲームが起因しているものだという兄の推理を記したノートを持って、兄が殺害された後三葉商事を訪ねたんだ。

そこでそれを隠蔽しようとする三葉商事の社員に囲まれてピンチだった僕を助けてくれたのは、なんと三葉商事のNo2だという酒井氏。
たまたま通りがかった彼は僕を自分の知り合いだからとかばい、自分の専務室まで連れて行ってくれた。
そして僕はその時、彼の口から飛んでもない事実を聞かされたんだ。
あのゲームの真の目的は1億円じゃない!

三葉商事の社長には現在跡取りとなる子供がいない。
だから本来はもう世襲制である必要はなくなったのだが、社長が個人的に気に入っている高校生がいて、そいつに跡を継がせたいのだが、酒井氏を始めとする志ある社員は当然それに反対をした。
そこで、社長はそいつがいかに優れているかを証明するため、あのゲームを作らせたんだそうだ。
そして無作為に選出した11名とその高校生にあのゲームをやらせ、そいつを勝たせる事でそいつが優れた人間である事を立証させようとしたらしい。
しかもその無作為に選出したはずの11名の中に、その高校生が勝つ為に邪魔になる能力ある者を殺させる為の刺客を潜ませると言った卑劣な手を使ったんだ。

酒井氏は自分達にはそれがわかっていても社長の暴走が止められなかった、そのために兄を死なせてしまった、申し訳ないと泣いて謝罪して、もし本当に社長がそいつに会社を継がせるような事をするなら、自分は体を張って阻止するつもりだと言っていた。

結局ゲーム終了後、酒井氏達の活躍で社長の野望はいったん阻止され、平和が戻ったわけなんだが
2年後の今、また社長がそいつに跡を継がせようと画策しているらしい。

ユート…僕は君がアゾットと違い賢明な人物だと信じている。
だから兄がしたのと同じ様に、黒幕と行動を共にしているであろう君に忠告したい。
コウこと碓井頼光こそ、その社長と結託して会社を私物化しようとしている人物だ。
どうか僕を信じて彼から速やかに距離を取って欲しい。
君の身の安全を心より祈っている。

君の友人、小五郎より

*****


「な…なによ、これっっ!!!!」
「うあああ~~~アオイ!姫んとこのパソコンなんだから壊しちゃ駄目~~!!!!」
「あ…そか」

思わず持ってたマグカップをユートのパソコンに投げつけかけて、思いとどまった。

パソコンに覆いかぶさって怒髪天の私からかばっていたユートがホッとした様にソファに座り直す。


「取りあえず…この馬鹿野郎に、”お前は脳みそ腐ってんのかっ!このエセ探偵もき!!”ってメール返してやって!!!」

ユキ君さながらにピシっとパソコンを指差してユートを怒鳴りつける私をみんながいったん手を止めて驚いた顔で見上げる。

「お前らは続けてろ」
とカイ君とランス君に指示して、まずユキ君が近づいて来てユートのパソコンを覗き込んだ。

悔しい…悔しい…悔しい…!!
何にも知らない馬鹿になんでコウがこんな事言われなきゃいけないのよっ!!!

「お前が泣くな、馬鹿」
笑いを含んだ声と共に上から白い布が振ってくる。
コウのハンカチだ。

「なんかさ…アオイって馬鹿だけど良い奴だよなっ」
ユキ君も笑って言った。

馬鹿だけどって何よ、馬鹿だけどって…
私はハンカチで涙を拭くとパソコンに目を走らせてる二人に目をやる。

どうやら読み終わったらしく、パソコンから目を離す二人。
全く表情を変えず…むしろすっきりしたような顔で少し考え込むコウと対照的にユキ君は笑みを浮かべるが目がどう見ても怒ってる。

「確かに…こいつムカつくなっ。今からいぢめに行ってやろうかっ」
「や~め~と~け!」
コウがそれに苦笑して上からユキ君の頭をくしゃくしゃとかき回した。

「とりあえずユート、メールの返事ちょっと保留。
下手な返しかたすると、こいつの身が危なくなる」

「らじゃっ」
ユートが敬礼すると、ユキ君がガタン!と立ち上がる。
かろうじて口元に浮かべていた笑みがすでに消えて、怒り全開の表情だ。


「俺何がムカつくって、お前のその果てしない馬鹿みたいな人のよさが一番むかつくわっ!」
震える拳をきつく握ったまま自分を見上げるユキ君に、コウは相変わらず苦笑する。

「お前、10年色々学んで来たって言ってたけど自制心だけは学ばんかったみたいだな」
コウの言葉に、カイ君とランス君がディスプレイに目をやったままクスクス笑ってうなづいた。
ユキ君は口をとがらせてその二人をにらみつける。

「ま、そうカリカリするな。こいつのおかげでイヴがかなり見えて来たしな」
「イヴが?」
ユキ君が少し驚いた顔をコウに向けた。

コウはそれには答えず、カイ君に
「な、カイ、ゴッドシリーズの正体そろそろ何か見えて来たか?」
と、声をかける。

「ん。もう頭んなか痛い決め台詞がクルクル渦巻いてますけど、一応それっぽい事は…」
カイ君はカチャカチャとキーボードを叩きながらうなづいた。

「ゴッドセイバーと何か関係あるのか?」
「あ~、キャラ名とかは聞いてないんすけど、高校の時は4人組で遊んでて、そのうち一人が2年前殺されたらしいっす。
で、そいつは殺される直前まで三葉商事のネットゲーやってて、今回その三葉商事から新しいネットゲーでたから、そいつを偲んで残り3人で遊んでるって事っすよ」

ほ~。じゃ、その一人がゴッドセイバーか。

「お手柄だ!カイ」
コウは嬉しそうにカイ君の側に行く。

「ども…」
褒められてカイ君もなんだか嬉しそうだ。


「頼みがあるんだが。そうだな…その2年前のネットゲーやってたリアフレが家に来てるんだが、そいつが懐かしいし少し話がしたいって言ってるんで替わっていいか?って聞いてくれ。
念のためゴッドセイバーの本名だして確認したい」
「らじゃっ。ちと待って下さい」

二人がそんなやり取りをしてる間、コウに言われたのかフロウちゃんがみんなに冷たい飲み物を作って持って来てくれた。

リビングのテーブルを囲んでる面々にまず配って回って、最後に私とユキ君に持って来てくれる。

「…ども…」

今日は可愛いピンクのハート型のゼリーの浮いたレモンスカッシュ。
ユキ君はそれを受け取ると、にっこり微笑んで席に戻ろうとするフロウちゃんを呼び止めた。

「姫様…」
「はい?」

「ちょっと話きいていい?」
絨毯にペタンと座って、フロウちゃんに手招きをするユキ君。

「なんでしょう?」
フロウちゃんもそのユキ君の隣にペタンと座り込む。

「率直に聞いちゃいたいんだけど…」
ユキ君はズズっとジュースをすすって口を開いた。

「コウってさ…どうやったら会社継いでくれると思う?」
上目遣いにフロウちゃんの様子を伺うユキ君。

フロウちゃんはユキ君の言葉にちょっと考え込むように首をかしげた。

「ユキさんは…やっぱり10年間そのために努力なさってきたから、今更他の職業にっていうのは出来ないってことです?能力的には可能ではありますよね?」

聞き返すフロウちゃんに
「…それもあるんだけどさ…」
と、ユキ君はうつむいた。

「俺さ…コウの元で働いてみたいんだよね…。
俺、誰かの下につきたいなんて思ったの初めてだよ?
俺は孤児で最低限の法律の範囲以外で誰かの保護とかほぼ受けてないしさ、誰かのために働く義理なんてぜんっぜんないと思ってきたわけよ。
でもさ…今楽しいんだよな、困った事に…。
金になるわけでもなければ将来に続くかどうかもわかんない、ぜんっぜん美味しくない状況なんだけどさ、実は今すっげえ楽しい。
コウってさ、もうしょっちゅう上から目線でさ、他の奴にそんな態度取られたら内心すっげえむかつくんだけどさ、コウだと腹立たないっていうかさ…
たぶん…それがカリスマってやつなんだよな。
それはさ、努力だけじゃどうしようもないものがあって…持って生まれた才能と、それに溺れない精神。
それを両方兼ね備えた人材ってのは確かにすごいレアで、でも必ずしも順調な時ばかりじゃない大企業をまとめていくっていう大業を果たすには絶対に必要なんだよな。
だから…三葉商事の社長が一見無意味な世襲制ってのにこだわったのも、少しわかる気がしてきた。
ま、俺は三葉商事自体にそれほど感情的なものがあるわけじゃないから、三葉商事が理想なだけでもうこの際三葉商事じゃなくてもいいんだけどさ、とにかくコウの下で働きたいんだ」

「じゃ、それ言ってコウさんにお願いすればいいんじゃないですか?」
ユキ君の話がいったん途切れたところでフロウちゃんがにっこり言った。

「いや…だって警察目指してるから駄目なんしょ?
俺学歴ないから本庁狙いのコウの下に行くの無理だし」
ユキ君の言葉にフロウちゃんはあっさり断言する。

「別に警察じゃなきゃってわけじゃないと思いますよ?」

「そうなん?」
拍子抜けしたようなユキ君。

そりゃそうだ、あれだけコウにきっぱり断言されてきたんだもんね。

「コウさんが前回三葉商事継ぐの断ったのは、三葉商事が跡取り選出っていう目的のために参加者、特に自分の仲間の危険を放置したからで…。
それに激怒して賞金の2500万円の小切手を主催さんの目の前で啖呵切ってビリビリに破いちゃいましたからっ」

あ~、そんな事あったな~。懐かしい。
フフっと思い出して笑うフロウちゃんにユキ君はぽか~んと口を開けて惚けた。

「ちっきしょ~。生き方かっこいいな~!」
我に返って言うユキ君。

ま、確かにあれは爽快だった。


「会社を継ぐにしても警察で働くにしても信念を通すには絶対に道は困難で犠牲はつきもので…でもあの頃のコウさんはなんだか何でも一人で抱え込んで色々に傷ついて疲れ果ててて…それを即実行するだけの気力がなかったんですよね。
警察なら早くてもあと6年後ですけど、会社は即でしたし。

あのとき即動けって言われたら多分潰れてたから…少し元気取り戻して良い状態で物事に取り組めたらいいなって思って警察の方がいいんじゃない?って薦めてみて、コウさんはとりあえず了承したんですけど…今はどっちでも良いと思ってるんじゃないかと思いますよ。

というか…たぶん実は職種とかにこだわりない人なんだと思います。
あの時…ケーキ屋さんがいいんじゃない?って薦めてたら今頃パティシエの勉強してると思いますし」

うああ…フロウちゃんて実はすっごい鋭いっ!
つかまんま丸わかり?!

「だからね…ユキさん達がそれがどれだけ必要でどれだけ真剣に考えてるかをちゃんと伝えたら、意外に考えてくれるかもですよ?」

にっこりとそれだけ言うと、フロウちゃんはまた空いたグラスを回収して片付けにキッチンへと消えた。



「あれってさ…」
フロウちゃんの姿がキッチンに消えると、ユキ君が口を開いた。

独り言にも聞こえるけど、たぶん私に言ってるんだろうな。

「ホントだと思う?」
ユキ君は案の定クルリと私を振り返った。

ん~~~~

「コウが職業にこだわりないってのはホント。
前聞いた時には実は別に普通のサラリーマンでも教師でも八百屋でも良いって言ってたし」

「そうなん~?じゃ、あの強固な姿勢はなんだったんだよ~。
俺もしかして仕事に関してはコウ利用しようとしてるだけだと思われてる?」
がっくりと肩を落とすユキ君。

「いや、そういうわけじゃなくてさ…。
フロウちゃんの今の話、本当なんだけど一番重要な一点がぬけてる」

「重要な点?」
ユキ君が顔だけあげて私に向ける。
私はうなづいた。

「コウは職業自体にこだわりはなし、なんでもいい。それは本人に聞いたんだ。
でもさ、そのなんでもいいの前には”フロウちゃんが望む職業だったら”って一言がつくんだよね」

私の言葉にユキ君はズルっとずっこっけた。

「警察に固執すんのも、フロウちゃんが薦めたからっていう一点だけだし」

「もしかしてさ…姫様にお願いするのが実は一番の近道?」

「ん~でもさ、一応ね、その前にちゃんと自分で努力はした方が良いと思うよ?
長いつきあいにするつもりなら誠意はみせておかないとね」

私がユキ君にウィンクしてみせると、ユキ君は

「忠告感謝っ!さすが最初にフレになっただけあるよねっ」
と私に手を合わせて立ち上がった。




「ほぼ特定したっ!」

私達がそんなやり取りをしてる間に、コウはカイ君の所でゴッドシリーズから何かを引き出したらしい。

「なに?何が特定したって?」
コウの宣言にユキ君とユートが駆け寄る。

「ま、若干の想像は混じるけどほぼ間違いないと思う。
イヴは2番目の犠牲者秋本翔太の彼女」

それは…またいきなりな…。

「とりあえず…今例のエドガー弟と当たり障りなくエドガーの思い出話でつないでるんだけど、一応いったん打ち切っていい?
普段使ってるメルアド聞き出したから何かあったら即連絡取れるし」

ユートはユートでちゃんと色々手を回してたらしい。


「ん、また接触取る必要は出るかも知れんがいったんは切っていい。
ただし…弟にユートと接触持った事は他に言わない様に伝えろ。特に酒井な。
下手に動くと口封じに消されるかもしれないから。
そうだな…とりあえず今自分は俺からも三葉商事からも即距離取りたいから、それが完了するまで自分と接触持ってる事は言わないでくれって感じで」
コウの指示に、ユートは
「らじゃっ」
と敬礼して再度キーボードに向かう。

「あとは…ユキ!」
「ほいっ?」
「お前面が割れてないから早川梓名乗ってイヴからゲーム以外での連絡方法聞き出せ」

「えっと…それどなたざんしょ?」

「5番目の犠牲者アゾットの姉貴。
アゾットは殺人犯のイヴの参謀だった男で最終的にイヴに警戒されて殺されてる。
で、弟はマメ男でな、日記残してくれてたからそこから俺ら色々な事実知ったわけなんだけど遺族ならその日記見る機会は当然あるはずだ。
で、そこには俺に対する奴の恨み言がやまと書かれてたから、それ見て弟が人生狂わされて殺されたのは俺のせいだから俺に恨みもって復讐の機会を狙って近づいてるとでも言っておけ。
で、あくまで個人的に動いてて酒井には接触持ってない設定な。
万が一酒井に確認いれられるとバレるから。
あ、ちなみに弟は俺の高校時代の同級生だから、一応」

説明しながら一瞬、ほんの一瞬だけコウの表情が曇った。
自分の傷口には自分で塩塗り込むような真似して進むんだよね、コウって。

「ま、過去の事だからいい加減気にするな」
私の視線に気付いてコウはそう言うと、クシャクシャっと私の頭をなでた。

「とりあえず…捨てアドかもしれないけどメルアドげつっ。他は?」
カタカタとキーボードを打ってたユキ君が手を止めてコウを見上げる。

「ん~今はそれだけでいい。適当に切り上げて落ちておっけー」

みんながそれぞれ忙しく動いてて所在ないな~って思ってると、コウは今度は
「アオイ、ちと頼んでいいか?」
と私に視線を向けた。

「うん!何でも言って!」
張り切って言う私に柔らかい笑みを向けると、コウは
「取りあえず今の時点での状況を説明したいんだが、単純に2年前の殺人の情報だけじゃなくて、人間関係とかそれぞれの人物像なんてのもある程度把握してないとわかりずらいんで、覚えてる限りで良いからユキ達にゲームが始まってから俺達が出会って他にどんな奴らがいてどんな感じでやってきたか、最終的にアゾットの日記まで説明しておいてもらえるか?
お前が一番あっちこっちひっかかって当事者だったから一番よく色々見てるだろうからな。
俺はその間ちょっと仮眠取らせてもらう。今日は寝れそうにないから」
と言う。

あはは…確かに…もう本気で色々ひっかかったよね、私。

「まじ罠に片っ端から足突っ込んでまわってたよね、アオイ。
よくあれで生きてたもんだよ。」
ユートもコウの言葉に笑ってうなづいた。

「そうなん?」
ユキ君もそんな私達の様子に笑いを浮かべる。

私が了承すると、コウはそのままソファに腰を下ろし、フロウちゃんに手招きする。
フロウちゃんはそれに気付くとトテトテとソファまで来てコウの足の間に腰を下ろした。

フロウちゃんが座るとコウはアイマスクをして、後ろからフロウちゃんを抱え込むようにしてそのままフロウちゃんの肩に額を付ける。


「え~っと…何してるん?」
ユキ君がその様子にきょとんとした表情を浮かべると、そんなコウに構わずゲーム内での釣りを続行していたフロウちゃんが、シ~っと人差し指を口にあてた。

「寝てるんで放置してあげて下さい」
とユキ君に答えてフロウちゃんはまた釣りを続行。

なんというか…器用な体勢でまた…。
そいえば仕事とかも人の気配がする所でやるのが好きだって言ってたよな~、コウ。


とりあえずそっちは放置する事にして、私は2年前に記憶を飛ばす。

何を取捨していいやらわかんないから、まずディスクが送られて来た日の事、キャラ制作の事、グズグズしてたらジョブが埋まっちゃった時の気持ちとか…懐かしい思い出を一つ一つ語っていった。

ソロの日々、フロウちゃんとの出会い、ユートと出会った時は初めてパーティー組む事覚えたっけ。
コウは間違って高レベルの狩り場に迷い込んじゃった時に助けてもらったのが最初だったんだよな。
あの頃のコウは今以上に空気が読めない男で…俺様で…でもやっぱりありえないお人好しだった。

その後4人でパーティーを組む日々。
イヴちゃんとゴッドセイバーの会話。その後ショウを加えて3人でパーティー組んでる時にたまたま近くで狩りしてて二人してイヴちゃんの機嫌取るため敵釣り合戦してたショウとGSが倒せない敵釣って来ちゃって、それをコウが助けて…その後コウをパーティーに欲しくなったイヴちゃんから嫌がらせウィスもらったっけ。

その後DS、ついでショウ死亡。メグも行方不明で、怯える日々。
なりすましメールで簡単に呼び出されちゃってコウにすっごい怒られた事も今では良い思い出だ。

本気で思いつくままダラダラと語ってたんで必要無い事もいっぱいだったかもしれないけど、ユキ君はそれを楽しそうに聞いている。

かなり長い時間かけて本当にたくさんの思い出をたどって、最後にアゾットの日記で知った真相で話を締めたとき、それまでずっと黙って聞いていたユキ君が口を開いた。



「なるほどね…そんな事あったなら結束固くもなるよなぁ。
俺もそれ参加したかったな…ま、血筋じゃないから無理なんだけどさ」

まあそうなんだけど、ユキ君達いたらもっと楽しかっただろうな。

「とりあえず…説明終わったとこでどうしよう?」
私はユートを振り返った。

「ん~起こすしかないんじゃね?」
言ってユートがフロウちゃんに声をかける。

「姫~、アオイの説明終わったんだけど?」
「あ、はい」
フロウちゃんはパソコンを閉じる。

「コウさん、起きて下さ~い」
小さな声なんだけど、ちゃんと起きるコウ。

「コーヒーいれてきますね♪」
コウが身を起こすとフロウちゃんは立ち上がってキッチンへ。
コウはアイマスクを外して伸びをした。


「んじゃ、とりあえずイヴ、GS、ショウの3人の付き合いとかも説明終わってるんだな?」
「うん」
私がうなづくと、コウは私達を向き直った。
そして以前私にイヴの正体について話した推察をユキ君に話した上で、話を始める。

「…という事でショウとメグが殺された日を境にイヴの行動はアゾット色濃くなってるから、今のイヴはショウやメグが殺された日を境にゲームを目にする機会を失った者、つまり殺されたGS、ショウ、メグの関係者ってことになる。

で、もしそれがそいつらの遺族だとしたら、抗議する気があるならその後もゲーム見てると思うんだよな。
ところがアゾット色の濃いイヴを知らないって事は、参加者当人が殺されて参加しなくなった時点で見られなくなった人物、でも、そいつのために犯罪者になっても良いくらい相手に執着してた人物って事になる。
家族以外でそこまで思い入れを持てる相手って通常誰だ?」

「恋人っ」
ユートが即答してコウが続けた。

「ん。俺を刺そうとした奴は女って事だから、ここでリアル女のメグは省いて、可能性があるのがショウとGS。
で、さっきちょっとカイに代わってもらってGSのリアフレシリーズと話してみたんだが、そこでわかった事。GSは女っけなし。
ショウは年上の彼女がいたんだけどリアル高校生のイヴに舞い上がっててって構図だったらしい。
これはGSがリアフレに話してたんだと。
で、ここからは本人達以外はわからんから推測の域をでないんだが、ショウがイヴに会いに行くって話になった時、ショウ彼女はそれを知ったんじゃないか?
で、その後ショウが殺されれば当然犯人はイヴだって思うよな。
そこでショウ彼女はイヴのリアル身元を知らないわけだし、それを追求しに三葉商事に行って…
あとはエドガー弟と同じような状況で同じような事を言われたんじゃないかと思う。
2年前の時点では俺は跡取りの話断ってたし、酒井もその話がお蔵入りすると思っててそのまま放置してたのが、今回社長のジジイがこのゲームを使ってまた新たに動き出したんで、丁度良い手駒としてショウ彼女を焚き付けたんじゃないかと…そう考えると俺らしい人物というのはわかっても、俺かどうかはっきりした事がわからんというのは充分ありうるしな」

なるほど……


「で?犯人の人物像がある程度わかったのはいいけど…どうするん?
警察に言うかジジイにちくって終わり?」

「警察は証拠ないと動けんぞ。
証拠あっても2年前の時と同様に”大人の事情”が発動する可能性高いしな」
コウの言葉にユートは苦い笑いを浮かべた。

「ジジイにちくってもなぁ…ショウ彼女が全てかぶって終わりになりかねん。
下手すると口封じにショウ彼女とエドガー弟が酒井に消されて終わりだ。
それは避けたい。
二人は身内殺された犠牲者だし…。
エドガー弟はまあ酒井がなんとかできれば放置でもいいが、ショウ彼女は…できれば説得して自首させたいな。
あとは…酒井の殺人教唆立証できるのが理想なんだが…無理ならせめてそういう動きをしていたというのを内外に知らしめて実質権力を取り上げるくらいの事はしないとキリがない」

コウの言葉にユキ君が大きく息をついた。

「コウ…お前さ、わかってる?
ショウの女って身内殺された犠牲者以前にお前刺そうとした馬鹿なんだけど?」

「まあ…そこがコウのコウたる所以だからさっ」
ユキ君にユートがケラケラ笑う。

「ま、普通に考えろ。こんな企業の都合でな、そいつのためなら人殺してもいいってくらい好きだった相手殺されて、しかもその後もその企業に利用されてんだぞ。
利用してる側は無傷でその犠牲者が犯罪者になるっておかしいだろ、どう考えても…」
コウがその秀麗な顔を少ししかめた。

そう…だよね。


「とりあえず…どう動くかはちと考えるから少し待ってくれ」
最終的にコウが言って、ソファにまた身をうずめて考え始めた。





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