清く正しいネット恋愛のすすめ_155_合宿の夜_女子会・海底神殿にGo!

「うあああぁーー!!音楽家さんだっ!!!
めっちゃテンションあがるねっ!!!」

亜紀のキャラ、アキを連れて行ったら、マコモにむちゃくちゃ喜ばれた。

確かにどのクラスでも音楽家が居れば色々底上げされるので喜ばれるが、特にMPを大量消費しながら大攻撃を行う黒魔導士は、MPを回復する【魔術師達のロンド】を使えば激減するMP消費を劇的に抑えられるし、魔法攻撃力をあげる【知恵者のためのファンタジア】を使えば出せるダメージがとてつもなく上がるので、音楽家を切望する人が多い。

もちろんダメージ厨のマコモもその一人だ。


「アキちゃんは私のパーティーねっ!
ナ、白、黒、音で、全員MP持ちだから、ロンドは全員にかけて…私にはファンタジア頂戴ね!」

張り切って言うマコモに、アキは構成をみながら、
「じゃあ…基本的には、ナイトのカナエさんが前、マコモさんが後ろで、その間にギユウちゃんと言う感じで、カナエさんとギユウちゃん、ギユウちゃんとマコモさんは一緒に曲をいれられる位置にたってもらって、最初にギユウちゃんとマコモさんにロンド。
最後尾のマコモさんにだけファンタジアをかけて、前方のカナエさんとギユウちゃんに防御あげる【守護されし者のオラトリオ】かけて、最後にカナエさんに残りMPとか状況に応じてロンドか物理攻撃あげる【戦士達のプレリュード】入れる感じで良いですか?」
とお伺いを立てる。

「うん!OK!完璧だねっ!!」
と、機嫌よく応じるマコモ。

その裏でギルド会話で
『音楽家も当たりはずれ激しいけど、ちゃんとかけ分けわかってるみたいだし、デキる音楽家さんだねっ。
イベント終わったらギルド勧誘してみていいかな?
音楽家…マジでギルドに1人は欲しい!!』
と語る。

よもや隣で見ているとは思っても見ないからギルド会話なのだろうが、実は横で見ているので、良い評価で義勇も蜜璃もホッとしつつ苦笑した。

「亜紀ちゃん…今どこかのギルド入ってる?
入ってないならうちに来ない?」
と、リアルで聞く義勇に、亜紀はまた恐縮しながら
「え?…あ、…入ってない…けどっ…」
と、ワタワタ動揺する。

「私なんかで良いのかな…がっかりさせないかな…」
と、とりあえず嫌と言うわけではなさそうなので、
「たぶん、このイベ終わったらマコモちゃんからお誘いがあると思うけど、良かったら、ね?」
と、とりあえず促しつつ、義勇はディスプレイの向こうに視線を戻した。



海底神殿の最奥にある、人数制限のある特別エリアまでの道のりは、モブタロウを始めとするギルドで手が空いているメンバーが敵の駆逐を手伝ってくれる。

そうして、特別エリア前、いきなり合流したためよくわかっていないギユウ達にマコモが説明をしてくれた。

「今回はね、ナイトのポセイドンの盾と私の魔女の水晶狙いなのね。
だから盾は出たらナが2人でロット勝負。水晶は他に黒いないし私。
で、他にも色々出ることあるから、基本的には装備できるジョブの人。
誰も装備できないモノは悪いけど私がロットさせてもらって、換金して、ここまで道を作ってくれたヘルプも含めて、何ももらってない人で平等に分けるからね。
それがうちのギルドのやり方だから、アキちゃんもそれで大丈夫?」

と、特にギルドのメンバーじゃなく、そのあたりのギルド【コンコンキツネ】のシステムは当然知らないアキには名指しで確認。

「あ、はい。大丈夫です」
と、返答をもらってから、マコモは扉にトリガーになるアイテムをかざして中に入った。



「カナエさん、ギユウちゃん、マコモさん、それぞれこの位置にお願いします!」

中に入って扉が閉ざされると、まずギユウが全員に防御魔法をかけると即、アキが立ち位置を指定して、それぞれがその位置に立つと必要なあたりにはかかるよう、不必要な人間にはかからないよう、絶妙の位置で曲をかけていく。

そうして全員に防御魔法と曲がかかったタイミングで、カナエとキョウが敵に向かって駆け出して行った。

ボスはカナエが引き受けて、キョウは左右に現れる側近を引き付ける。

ゆえに一撃が大きくて痛いカナエには回復力の高い白の義勇が、攻撃が細かくて多彩な側近を相手にするキョウには回復は白には及ばないが、支援が多彩な学者のシノブがついた感じだ。


そうして始まる戦闘。
ひたすらカナエを回復し続けるギユウとは対照的に、多彩な支援でキョウを始めとする前衛たちを忙しく支えるシノブ。

ギユウより確かに遅くレジェロを始めたはずなのに、生来の器用さゆえか、複雑な学者の仕事を完璧にこなす彼女に義勇は感心する。

さらに初めて音楽家入りのパーティーというものを経験したが、こちらもクルクルと走り回って曲の効果が切れる前にかけなおすのに忙しそうだ。


「すごいねっ!音楽家の曲入ると、与ダメが5割増しくらい違うっ!
MPも尽きないし、音楽家“様”って言われるの分かるね。
めちゃくちゃ快適だよっ!!」
と、マコモがすごく楽し気に強力な魔法をぶっ放していて、そういう時、いつも錆兎がそうであるように、カナエもまたタゲ取りに必死で無言。

おそらく鯖に何十人、何百人のナイトが居ようと、最強の黒魔マコモ姐さんが思いきり魔法をぶっ放してもタゲをキープできるのは、ギルド【コンコンキツネ】所属の3人のナイト、今のパーティの2人とサビトだけだろう。

ビリビリビリッ!!と、金色に光る稲妻が、12神の中では防御はやや低いが体力はトップレベルのはずのポセイドンのHPをガンガン削っていく。

そのすさまじい威力の雷魔法のヘイトにタゲが揺れかけるか?と思った瞬間、
「シノブ!こっちもヒール頂戴っ!!」
と、言った直後に、ガガンっ!!!と大きな音と共に燃え上がるカナエの剣。

いつのまにか盾を大剣に持ち替えて、通常のヘイト稼ぎに使うプロボだけでなく、攻撃力をあげるオフェンスを使って、さらに詠唱が早くヘイトも高い、ナイト専用の目くらまし魔法、フラッシュも使い、さらに自己ヒールでヒールヘイトも乗せて全力でタゲ取りに行くカナエに、シノブがキョウとカナエの両方にかかるように位置取りをして、範囲回復魔法を連打する。

そこへアキがすかさず1時間に1度きりしか使えない音楽家の1hアビ、【ゴッドボイス】を使ってカナエにMPを回復するロンドと共にHPを回復する【神官達のシンフォニー】をかけ、その後、ボイスの効果が切れないうちにマコモに魔法攻撃力をあげるファンタジアを二重にかけた。

「ナイスだよっ!カナエちゃん、アキちゃんっ!!
さあ、最後っ!全力で行くよぉぉ~!!!」

宣言してマコモも黒魔導士の1hアビ、魔法攻撃力が3倍になる、【魔王降臨】を使って雷系の最高位魔法ディバインサンダーを唱える。

グアアアアーーー!!!という雄たけびと共に倒れるポセイドン。
それとほぼ同時にキョウのパーティーでミツリとサネミが殴っていた側近二体もズドン!!と音を立てて地面に倒れ伏した。

「すごいねっ!前来た時は側近倒し終わってもポセイドンはまだHP3分の1くらい残ってたんだけど、ファンタジア最強だね!めっちゃ削れる!!」

ご機嫌に感想を述べるマコモ。

前方では倒れ伏す敵がわずかな時間差で光と共に消えて、宝箱が現れた。


「さあ、何が出るかなぁ~。
目的のブツが出るといいね~」
と言いつつ、マコモが前方に走って行って宝箱を開けた。

キラキラとした光と共に中に入っていたアイテムの名称が流れていく。

素材や宝石などに混じって装備品…魔女の水晶球、トリトンランス、そしてセイレーンの竪琴の文字。

マコモはとりあえず、
「じゃ、約束通り、私は魔女の水晶球をもらうね」
と、ちゃっちゃとロット。

そして
「トリトンランスは装備できるナイト二人とサネミンでロット勝負かな?
竪琴はアキちゃんロットしちゃって」
と指示を出す。

それにアキは、え?え?とやはり動揺しながら、
「いえっ…私は部外者ですし…申し訳ないしどなたか他の方が…」
と、遠慮して見せるが、マコモはそこでズイッとアキの方に歩み寄った。

「装備できる人がもらうっていうのがお約束だしねっ!
どうしてもってことなら、どうかな?
アキちゃん、うちのギルドの子にならない?
もちろんギルド入会とは関係なく持って行ってくれて全然かまわないんだけどね。
入ってマコモちゃん専属のファンタジア要員になってくれると、私がめちゃくちゃ嬉しい!」
と、ちびキャラで人懐っこい様子で飛び跳ねながら言う。

「え…あの…私なんか…良いんですか?」

「あのね、曲のかけ分けがめちゃ正確に出来て、状況に応じて入れる曲を選曲出来て、アビの使いどころも適切な音楽家様にギルドに入ってもらうのに良くない理由ってどこにあるの?」

きっぱりはっきりそう言いつつ、
「嫌じゃないなら、誘い送るねっ」
と、決断も行動も早いのは鱗滝家の人間の性質らしい。

ピコン!と言う音と共に表示されるギルドへの誘いをアキが了承すると、
「じゃ、そういうわけで、アキちゃんは竪琴ロットで他はパス。
3人はランスちゃっちゃとロット勝負してね。
あとはまとめて売って装備もらった以外の人で分けるから」
と、マコモは再度促した。


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