kmt 清く正しいネット恋愛のすすめ

清く正しいネット恋愛のすすめ_142_ユキ

へ？？

いきなり真後ろで聞こえた笑い声に驚いて振り向くと、サングラスをかけたどこか可愛らしい雰囲気の小柄な青年が手を振っている。

錆兎はもちろん知っている人物で、宇髄は直接会うのは初めてだが、相手は有名人なので知っていた。

「ユキさん、何しているんですか、こんな所で…」

と、お徳用の豚小間のパックを手に取った状態で固まる錆兎に、

「ん？今回、ウサちゃんがコウに頼んだ諸々、対応したの俺でさ。

お礼にお茶でも奢ってもらおうと思ってきたんだけど？」

と、にししっと笑う。

「…めちゃくちゃ仕事が早くないですか？」

と、それに驚く錆兎に、ユキはチッチッチッと指を振って

「ヒーラーのヘイトを稼ぐだけが腹黒魔導士の能力じゃないからねっ。

俺、他人の秘密を暴くのも大の得意よ？」

と、楽し気に言うと、ポケットからUSBを出すと錆兎に差し出した。

お茶…と言うのは、その中身の説明も兼ねているのだろう。

「先に買い物してからでいいですか？

さすがにこれを全部戻してくるのもなんなので…」

と、錆兎は礼を言ってUSBを受け取るが、お茶に関してはちらりと商品でいっぱいになっているカゴの乗ったカートに目を落として、そうお伺いを立てる。

「おけおけ。全然無問題よ？

車で来てるからさ、買い物終わったらファミレスにＧＯ！かなっ！！

パンケーキ食いたいっ！！」

キラキラとした目で言うユキに、とても自分より一回りも上の人間には見えないなと錆兎は思わず吹き出した。

そうして予定が決まったところで、

「あ～…天元、こちらは……」

と、紹介しようとするが、宇髄はそれを制して

「東山雪人。通称ユキちゃん。三葉商事の若き社長碓井頼光、通称コウさんの側近な。

ゲームを始めとする自社コンテンツの宣伝で、しょっちゅうTVや動画で見る顔だから、さすがにわかるわ」

と、TVで見るような人物と普通に親し気なあたりはもう驚きはしないが、人脈が相変わらずパネエと苦笑する。

こうしてユキの方には宇髄を紹介、その後3人並んで買い物を済ませ、それをユキの車に積み込むと、3人揃ってファミレスへ。

「一応、テンゲンちゃんには全部ばらしておけぃ？」

ファミレスにつくと、本当にフルーツや生クリームたっぷりの胸焼けしそうな量のあるホットケーキを注文して、それにナイフをいれつつ聞くユキに、錆兎は頷く。

「んじゃ、とりあえずざ～っと説明しちゃおうかねぇ」

ぱくり、と、大きめに切ったパンケーキを口に放り込みつつ、ユキはノートPCをテーブルに置いて開いて見せた。

そして、説明。

「まず犯人の自供はコウの海陽生徒会ＯＢ繋がりで加藤警視からの情報。

まあ、パワポでまとめてみたのをそっちのUSBにも落としてあるから、今はサラッと流すな？

犯人は女に縁のない寂しい男で、簡単に言うとリア充なんか爆発して死んでしまえって感じのことをシャレとかじゃなく割とガチで思ってて、それを公言してる奴だったのね。

で、そこに伊藤亜紀を名乗る垢が近づいて仲良くなったと。

犯人、女くだらない発言もただの僻みだったからさ、もう亜紀垢に夢中。

で、しばらく互いに好き好き言い合ってて、電話で話すまではしてて、もう超盛り上がり。

つきあっちゃおうぜってとこまで言ったんだけど、一ヶ月弱くらい前？、いきなり亜紀から別れ話。

友達にお前みたいに底辺のブサメンとつきあってんの恥ずかしくね？とか毎日のように言われてて、別のイケメン紹介してもらったし、お前、イラネって感じで。

その友達が冨岡義勇な。

ってことで、もともとちょっとイッちゃってる系の奴だったし、亜紀と義勇許すまじと、亜紀のストーカー開始。

確かに毎日イケメンと帰ってる。

亜紀の通っている高校突き止め、学祭があることを知り、2人を刺すために包丁新調して、殺しにＧＯ！

これが大方の自白内容。

まあ普通に考えてだ、ウサちゃんから聞いてた彼女像と、その冨岡義勇と違うなと」

「当たり前だっ！義勇がそんなこと言うわけがない！」

「うんうん。言わないってより、コミュ障ぽいから、自力で紹介する男とかみつけられなさそうだし、そうするとウサちゃん繋がりの紹介だろうし？

そうすっと、ウサちゃん、すでに付き合ってる相手いるのに、他の男あてがったりしないだろうしねぇ～」

「義勇はコミュ障じゃないっ！少し…奥ゆかしい性格なだけですっ！」

と、そこはムキになって言う錆兎の言葉に、ユキがプハっと噴き出して、

「さすが、コウの弟弟子っ！

兄弟子のコウの方はね、少し電波と名高い愛妻のお姫様のことを、『姫は電波じゃないっ！少しやんごとない性格なだけだ！』って言う奴なんよ」

と、宇髄にふる。

その突っ込みに、宇髄も思わず吹き出した。

そこでプスプス膨れる錆兎を前にひとしきり笑ったあと、

「…ってことでね、別人のなりすましなんだろうなァということで、色々調べてみたわけだ」

と、ユキは続けた。

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