清く正しいネット恋愛のすすめ_141_お泊り合宿

事情説明を終えて警察を出て、そこからは担任と錆兎の生徒会役員自宅行脚が始まる。

今日の出来事を説明。
生徒会と学校側で万が一今回のような不審者が出た場合に備えて学校側のセキュリティも当然見直すが、同時に学生側の代表としていかに速やかに伝達と避難ができるかを模索し、協力体制を取るべく、話し合う時間を取りたいという事で、保護者に了承を得て回った。

学校関係でも部活動関係でも、宿泊行事は少なくはない学校なので、保護者もそのあたりわりあいと理解がある。

宿泊先も有名な剣術家の自宅で、過去、内弟子も多くいたため、旅館のように館内にワンルームがいくつもある合宿所のような造りになっているということも即了承が取れた要因の一つになった。


一応、今回の犯人が捕まって、事件も終わったと保護者も安堵しているが、実は根本的な部分は何も解決してはいなくて、再度似たようなことがあるかもしれないことは、少なくとも錆兎と宇髄は知っている。

だから、状況を整理するまでは、出来れば危険かもしれないあたりを1人にはしておきたくない。
黒幕が思いがけず暴走。
犯罪が起きるレベルのことを扇動することも辞さないということがわかったのだから、たとえ自宅で家族がいたとしても、今回のように武器を持った人間が攻撃してきた時に、一般人の集まりしかいない環境は危険だ。

少なくとも鱗滝家は祖父が教え子である子どもを預かって合宿を行うこともあるため、セキュリティがしっかりしている上に、家のところどころにある竹刀を持てば、今回程度の暴漢なら軽く撃退できる。


などと言う、なかなか緊迫した理由ではあるのだが、宇髄の目から見ると、錆兎はなんだか嬉しそうに見えた。

セキュリティはしっかりしていて、怪しい者が入ってくれば即セコムに連絡が行く家ではあるが、今回は危機管理についての話し合いという意味合いもあって、その軽い訓練も兼ねてと、各自携帯は即鳴らせるように、行動する時は一人にならないこと、など、ルールを決めて、二人一組で急だったので手入れはできているものの干していない布団に部屋数分ある布団乾燥機をかけた上でシーツをセットしたり、人数分の食器を出したりと、宿泊準備をさせて、錆兎は宇髄と共に買い出しに行く。


「ウサよ、今後どうするよ?」
スーパーで、8人分の食料なので2人でそれぞれ2つずつの籠を乗せたカートを押しつつ宇髄が聞くと、錆兎は大量のジャガイモと玉ねぎをぽいぽいと籠に放り込みながら、

「そうだな…警察の方からの報告がないと何とも言えないが、たぶんネット…SNS関係で病んでるか病みそうな奴を見つけて扇動したとか、そういう系だろうな。
偶然目を付けられるなんてことは、学年3大美少女とか言われている義勇ならとにかく、良くも悪くも目立ったところがない伊藤にはありえないだろう。
ちょっと、爺さんの弟子で、俺もすごく世話になって今でも親しくしてもらっている兄弟子の親が警視総監で…そこまで行かなくても、その兄弟子は親とは別のルートで警視レベルの知り合いがいるから、当事者でもあるしそちらから速やかに情報を流してもらえるかと思っているし、その兄弟子…レジェロの開発会社の三葉商事の社長で情報関係すごく強いから、なんなら裏から色々調べてもらえるかもしれない」
などと言う。

ここは普通なら驚くところなのだろうが、もう前回の拝島空太の騒動の時のインターナショナルな政財界の人脈を知ってしまうと、国内レベルならと納得してしまった。

「可能な限り俺は義勇から離れないようにはするし、最悪、義勇の父に頼み込んで冨岡家で暮らすことも考えるが、異性だからな、どうしても一緒に居られない時もある。
相手が犯罪レベルのことを犯してでも危害を加える気があるとなると、そういう時に何かされると厄介だからな…。
いっそ計画通りに俺の方を刺しにでも来てくれれば手っ取り早くていいんだが…」

はぁ…とため息をつく錆兎。

武藤が義勇にリアルでもネットでも色々嫌がらせを企て続けていたことを知った錆兎が、実際にそれを狙って行動していたのを宇髄も知っている。
だから体育祭後の錆兎は目に見えて、宇髄でも引くほどに武藤まりに塩対応だった。

彼女がやってきたこと、やったであろうことを言及はしない。

ただ、冷ややかな口調ではっきりと、
「俺のことはとにかくとして、義勇に良い影響を与えないと俺が判断した相手とは、俺自身も関わりたくはない」
と、公言して、ある時など、それでも近づいて錆兎の腕を掴んだ武藤の手を振りほどいて、なんとハンカチで触れられたところを拭いて、そのハンカチをゴミ箱に捨てたのだ。

影で行われていたため物理的な嫌がらせは知らなくとも、武藤がやってきたこと、そして、義勇に対する無視や嫌味などは皆、聞いたり見たりして知っているので、義勇を溺愛している彼女の恋人である錆兎の怒りはわからないでもないのだが、誰にでも…それこそ自分に対して敵意を向けてくる相手にすら、にこやかで公平で親切な態度を崩さない錆兎の武藤に対するその行動は、衝撃的ですらある。

本当にその時のクラスの凍り付いた空気と言ったら、呼吸をするのも辛いほどだった。

決して直接的に何かをするわけではないが、そんな錆兎を見て、武藤の周りで彼女と同調していた女子達も、自分が、クラスどころか学年、いや、高等部共学科の中心にいる錆兎の嫌悪の対象になったらと恐れて、武藤から離れて、義勇にすり寄り始める者が増え始める。

しかし、武藤により強力な印象を与えて攻撃の矛先を自分の方へ…と考えてのその行動も、どうにもうまくいかなかった。

「…やっぱり…女子は難しくて苦手だな…」
と、野菜を選び終わって肉売り場へと足を進つつ錆兎が口にした瞬間…

──さ~すが、コウの弟弟子っ!!
と、すぐ後ろで笑い声がした。


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