清く正しいネット恋愛のすすめ_140_事件後

…そらたくん…そらたくん……そらたくん……怪我は……

亜紀が泣いた。

「大丈夫っ!僕はこれでも優秀なタンクだからねっ!!
トレイ盾は最強だなっ!!」
と、その震える背を片手でさすりながら空太は晴れ晴れしい笑みを浮かべて片手でガッツポーズを決める。

「…タンクって……なんのこと……?」

「ああ、僕はレジェロでナイトをやってるんだよっ!
亜紀君はやってる?レジェロ。
やってるならフレ登録しようっ!」

「…っ…やって…る…けどっ!…でもっ…無茶だよっ…!
刃物持ってたんだよっ?!
刺されて死んじゃったらどうすんのっ!
わかんないけど…っ……わかんないけどっ、私が目的だったんだから、空太君は逃げないとっ!!」

そう言って号泣する亜紀の両肩に手を置いて、空太はその顔を覗き込んで言う。

「僕がいて君に怪我をされるのはとても困るからね。
それより僕は約束を守っただろう?
だから君がすべきことはただ一つだ。
泣くよりは笑って約束通り君を一番に守った僕を褒めたたえてくれたまえっ!」

そう誇らしげに胸をはる空太に、錆兎がぱちぱちと拍手をしながら、

「合格だなっ!友人に格上げだ、拝島空太。
今から俺はお前を名で呼ぶから、お前もそうしろ」
と笑って言った。

「本当かいっ?!!
やったねっ!!亜紀君っ、君は僕の幸運の女神だよっ!!」
と、空太はそれを聞いて亜紀を抱き上げてくるくる回る。

そのなりゆきに亜紀は戸惑いながらも泣き止んで、おそらく約束とやらを守ることにしたのだろう、

「…空太君は…すごいね…。
咄嗟にトレイを盾にするなんて、私じゃ思いつかない…。
カッコ良かったよ……でも…でもね、なるべく危ないこと、しないでね…。
空太君が優秀だってわかってるけど…私は万が一を考えると怖くて泣くから…」
と、困ったように小さな笑みを浮かべながら言った。

ほおぉぉ…と、そんな二人に生温かい視線が向けられる。

しかしそこで何故か
「さっ…錆兎もカッコ良かったよっ!!
まるでドラマのヒーローみたいだったっ!!」
と、張り合うように錆兎のタキシードの袖をぎゅっとつかんで見上げてくる義勇に、こちらの彼氏も

「当然だなっ。お前といる時の俺は無敵の男だっ」
と、さきほどの客への対応が嘘のようにドヤアッと子どものように得意げな顔で言って、

「お前ら、無茶をしすぎだ…」
と、どこか疲れた様子の教師に呆れ混じりに言われた。


警察が到着後、とりあえず教室内の全員が軽く事情を聞かれて解散。
亜紀は名を叫ばれていたこともあって、さらに詳しい事情をと言われたので、担任の教師と、空太と共に責任者である錆兎、そして本人のたっての希望で義勇もついていくことに…。

もちろん学園祭は安全のため、中断。
学生たちは後片付けも後日ということで、帰宅させられた。


その後…改めて自分が犯人のターゲットだったのであろうことでショックを受けている亜紀に左右で寄り添う空太と義勇。
そして義勇の反対側には錆兎。

そこでそれぞれが話を聞かれたのだが、その中で空太が飛んでもない事実を口にする。

「僕が亜紀君について聞いて回っていた犯人の話…実は、クラスメートが犯人に冨岡君と亜紀君の居所を聞かれたっていうことだったんだ」

ええっ?!!!
義勇は驚きに目を丸くして、錆兎は一気に青ざめた。

「つまり…伊藤だけじゃなく、義勇もターゲットだったってことか?!!」
詰め寄る錆兎の勢い臆することなく、空太は

「僕はまた聞きだから、詳細を知りたければ実際に聞かれた結城に聞いた方が良いかもしれないね。
もともとは結城が聞かれて、僕は彼に、僕が最近いつも亜紀君と一緒にいたから、『1Bの生徒だから1Bに行けば分かるかもって言ったけど、お前知ってる?』って聞かれただけだから…」
と頷く。

証拠はない…ないのだが、この時期に伊藤が狙われるという事は武藤関係か?と予測はつけていたのだが、義勇までとなると、もう確定と言っていいだろう。


「…義勇、悪いが、当分俺は冨岡家に泊まっていいか、義一さんに聞いてみてくれ」

まだ犯人の事情聴取は終わっていないのですべてが明らかになったわけではないが、だからこそ、何かあった時に自分が介入できる位置に居たい。

そう思って口にする錆兎に、
「それなら亜紀君だって危険だし僕も一緒に居たいところだけど、さすがにいきなり泊まらせてくれと言えるほど付き合いが長くもないし、うちに来てもらうのも許可されないよね?」
と、空太が亜紀を振り返る。

そこで義勇が
「なら、錆兎の家に生徒会役員全員集合ってことでどうかな?
部屋はいっぱいあるしっ!」
と、ポン!と手を叩いて、名案でしょ!と言わんばかりに錆兎を見上げた。

「え?!鱗滝…いや、錆兎君の家かいっ?!!」
と、それにすっかり乗り気な空太。

「蜜璃ちゃんにもメッセ送っておくねっ!」
と、義勇はもう返事も聞かずにスマホをいじりだす。


「…あ~…先生、今回のトラブルを受けての生徒会としての安全管理と連絡系統の話し合いの合宿ということで……」

彼女のいう事は絶対な錆兎は、その義勇の暴走を止めるよりは道を作る方向に動くことにしたようだ。

こういうことになると、有名な剣術家の鱗滝左近次の家と言う事実がとても物を言う。
さらに、結局、元々学生の自主性を重んじる産屋敷学園の校風もあり、学園長の許可も出たことで、生徒会役員全員が今回の件で学校が臨時休校になる間の3泊4日の予定で、鱗滝家に集合することになった。


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