清く正しいネット恋愛のすすめ_132_マリオネット

結局、錆兎君はまりのクラス、1Bに移籍してきたが、胡蝶の暴露、そして錆兎君自身の口から冨岡義勇とは親への挨拶も済ませていてすでに婚約者のようなものだと言う言葉が出るなど、出だしは最悪だ。

それでも結婚しているわけではないし…いや、結婚していたって離婚と言う手があるのだからと、まりはそのすべての事実を脳内でねじ伏せる。

捕まらなければ犯罪を犯すことも辞さない覚悟で、まりは日々必死に冨岡義勇を排除する道を模索し続けていた。


もちろん、自分の手は絶対に汚せない。
なんとか周りを操ってあの女を消さなければならない。
そのために校内はもちろん、学校外にも根を伸ばして、情報を集め続けた。

レジェロの失敗で学んだのは、完璧だと思う計画でも失敗の可能性は常にあるのだから、時間を無駄にしないためにも、一つの計画がつぶれても止まらないように常に計画を練り続け、なんなら複数の計画を同時進行するくらいのことをすべきである。

そうして張り続けたアンテナに、ひっかかった男の1人、拝島空太。
プライドが高くて傲慢で嫌な奴だが、錆兎君には到底かなわないとしても、成績良し、顔良し、背が高くスタイルも良し、運動もできるという、色々が揃った男である。
これがどうやら冨岡義勇に気があるようなので、利用しない手はない。

別にこれで成功しなくても仕方がない。
ただ、嫌がらせの波状攻撃を続ければ、いつかは冨岡義勇のメンタルも疲弊して潰れてくれるだろう。
だからいくつもいくつも罠を張り巡らせて、攻撃し続けるのだ…。

まあ、これで拝島空太が無理やりにでも既成事実の一つでも作ってくれれば儲けものだと思ったのだが、まりが思ったよりも奴は根性なしだったようである。
冨岡義勇を呼び出したまでは良いが、あっさり防犯ブザーを鳴らされて周りにバレて、挙句に教師陣から対応を任された錆兎君に呼び出されて何やら事情聴取を受けたかと思えば、あっさり寝返りやがった。
結局その後、冨岡義勇というよりは、鱗滝錆兎君のファンとして名を馳せ始める。

役立たずの能無しなまでは仕方がないが、よりによって相手側に寝返るかぁ?!と、まりは苛立つが、苛立っても仕方がない。
拝島に関しては、念のため、"あくまで噂だが"冨岡義勇が拝島を好きらしいと聞いたと本人に言うにとどめたのは、正解だったと思う。

そう、自分がそう思ったとかではなく、そんな噂を聞いたことがあるというだけに留めるのがミソだ。


拝島が失敗したなら、次に行かねばならない。
もちろん準備は万端だ。

体育祭の最後、冨岡義勇が走る予定のリレー。
ここでは必ず靴を履いて走ることになる。
だから、確実に履くその靴に細工をすればいい。

幸いにしていつも邪魔をする胡蝶しのぶは、リレーの前の競技、騎馬戦に出場するのでいない。
この日のために、特に気の弱い取り巻きの1人皆川沙奈を騎馬戦に立候補させておいた。
そうして色々怪しんで対策をする暇を与えないよう、競技のギリギリの時間に何かしら理由をつけて、冨岡義勇に競技に代わりに出場してくれるよう、依頼させる。

そこからは簡単だ。
毎年盛り上がりを見せる騎馬戦にクラスメート達が夢中になっている間に、冨岡義勇の靴にミミズをいれさせた。

案の定、騎馬戦から戻ってきた義勇は次のリレーにも出場するため、急いで靴を履き……そして青ざめて固まる。

それに胡蝶しのぶが気づいて、さらに錆兎君がかけつけて靴と靴下を脱がせて足を洗ってやっているが、それ以上のことはできない。

靴のサイズ23cm
平均より小さめのそのサイズの足の女子は少数派である。
さらに、憧れの錆兎君をたぶらかした女としてクラスの半数の女子には敵視されているので、普通に靴を貸してくれそうな人間はいないだろう。

かといって、普通に歩くだけならとにかく、速さを競って走るリレー競技に出場となると大きめの靴では走れない。

棄権をするか、潰れたミミズで汚れた靴で走るか…
どちらにしろトラウマになることは間違いない。

靴にミミズが投入された時、まり自身は騎馬戦に出ていたのだから、それが何よりのアリバイになる。
そう、自分は無関係だ。

義勇に騎馬戦に出るよう依頼した沙奈は飽くまで依頼しただけで、騎馬戦の時間は体調不良ということで保健室で養護の先生と一緒だし、ミミズをいれる時は大勢で観戦をしているふりでさりげなく実行した人間を囲んで見えないようにして一瞬で済ませたので、おそらく無関係な同じクラスの女子達ですら気づいていなかっただろう。


気持ち悪さに泣き出す冨岡義勇を見て、少しスカッとした。
ぽっと出の女が調子に乗って錆兎君に手を出すからこうなるのだ。

そう思って上機嫌になったのも束の間…とんでもない事態が起こって、まりを震撼させたのである。





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