清く正しいネット恋愛のすすめ_130_真の狙いは

──ヒメちゃんを陥れたクソ女に今日もメッセ入れておいたからっ

1週間ほどで取り巻きの数はおよそ10人ほど。
この手の人心掌握は得意な方だ。

あなただけが頼りなの。
本当にあなたはすごいのね。

と、繰り返しながら、知っていることでも知らないふりで相手が調子に乗って教えてくることにいちいち感心してやれば、3人に2人くらいは簡単に釣れてしまう。

男なんて単純で馬鹿だから…と内心、思いつつ、悪い人ではないのだけれど"あなたのように賢明ではないから"、悪どい性悪女に騙された元パートナーに追い出された可哀そうな私を演出して、『別に復讐なんてしたいわけじゃないの……ただね、思い出すと悲しくて涙が出ちゃうだけなの…』と、ヒメことまりは、か弱く優しい…ゆえに、相手に攻撃なんてできない女であることを強調した。

そうすればかなりの確率でそれを信じて義憤に駆られた男たちが、勝手に性悪女…ギユウを攻撃してくれる。
そう、今回ネットゲームを始めた目的はそれだ。

すでに先行されている以上、錆兎君の気持ちをこちらに向けるのは難しい。
そうなれば、取る手段は一つ。
女のほうを叩いて潰して消せばいい。

幸いにして内気で気が弱そうな女なので、叩いて叩いて、錆兎君と一緒に居る限り叩かれるのだとわかれば、自分から離れてくれるかもしれないし、さらに病んで学校から消えてくれれば尚良い。
そのためには足が付きにくいネットゲームの中でまずはアンチを増やすのだ。

どんどん増えていく手駒。
彼らを集めて作ったギルド内で、性悪女にいかにキツイ言葉を投げかけたかで盛り上がる。
そこで時折、
『ヒメは彼女を傷つけたいわけじゃないの。辛い思いするのはヒメだけで十分。ただ思い出した時に1人で泣くのは寂しいから、悲しい時にみんながいてくれたら少し嬉しいなって思うだけだよ』
などと、性悪女をかばうような発言で火種を投下してやれば、
『なんて優しいヒメちゃん!』
『こんな優しいヒメちゃんにひどい奴だ!』
などと、さらにエキサイトしてくれる。

そうしてギユウの悪評が愉快なほど広まっていった。


匿名のネットの世界では、悪人だと認定された相手に関してはどんなひどいことを言っても良いと気軽に好き勝手に叩く人間が多い。

誰ともわからない多数の人間に攻撃されるストレスはかなりのものだろう。
リアルの攻撃は周りを固めれば阻止できても、流れる情報でなされるネットの攻撃はいくら錆兎君が優秀で、多くの人材で囲んでも止められるものではない。

病んでしまえ、病んでしまえ、病んで消えてしまえっ!!!


可哀そうなヒメを陥れた性悪女を叩くため、倉庫キャラまで総動員して叩き始める従者たち。
メラメラと燃え広がる火は、もうまりにだって止められない。

あいにく今は夏休みでリアルの冨岡義勇の姿を確認することはできないため、感情で表情が変わったりはしないネットゲーム内のキャラでは目の当たりにすることはできないが、そろそろかなり参ってきているのではないだろうか…

日々そんなことを考えながら適度に止めている風を装って周りを扇動しながら過ごした。


夏休みが終わる頃にはさすがに錆兎君の前から消えているだろう。
そうしたら傷心の錆兎君に近づいてそれとなく慰めて、そこから……と、幸せな想像が脳内に広がった。

12年…そう、12年越しの恋だ。
そんな風に離れている間も長く思い続けた自分だから、簡単に飽きて離れていった冨岡義勇と違って、錆兎君を裏切って消えたりはしない。
ずっと傍に居る…と、そんな風に言えば、彼の心も自分に向くだろう。

そう思っていたのにっ!!!


それはある日突然のことだった。
従者の1人がギルド会話で、『ヒメのいう事は嘘で、元々ヒメとサビトがパートナーだった事実はないし、ヒメがレジェロを始める前からギユウとサビトはパートナーだったのだ』と真相をバラしたのである。


きっかけはレジェロチャンネル。
そこで、サビトの友人であるテンゲンが降臨して全てを語ったらしい。

しかもその前から彼はスレにいて、ヒメがキャラを作る前に起こった別件でサビトとギユウがパートナーである話をしていたのだ。

それで不審に思った従者が疑問をぶつけてきたのだが、個人的に聞いてきてくれればまだごまかしも効いたのに、いきなりギルド会話だったため、うまく対応することができずに

「いい加減なこと言わないでっ!」
と、ヒステリックに言った挙句に、反射的に彼を思わずギルドマスターの権限でブロックしてしまう。

この対応は本当に悪手だった。

感情的になった挙句に相手をギルドからいきなり追い出したため、他のギルドメンバーから疑惑の目が向けられ始める。
そうこうしているうちに、直接その従者に状況を聞き始める者が続出して、自分が関われない場所で話が広まってしまった。

言い訳ができないまま、さらにテンゲンが逆にこのままだとヒメに加担して理不尽に無実な優しい白姫を攻撃した一味だと思われるぞと周りの取り巻きを取り込み始めて、昨日までギユウを叩いていた元取り巻きが、今度はヒメを叩き始める。


…あと…一歩だったのに……
…あと一歩で錆兎君の彼女になれたのに…大人しい顔して宇髄なんか取り込みやがってっ、あの女ぁぁああーー!!!!


こうなれば三十六計逃げるに如かず、リアルを特定しようなどということを言い出す輩がでないうちにさっさと証拠になるキャラを消すに限る。

そのあたりは伊達に幼稚舎時代から色々画策してはいない。
ダメとなれば見切りは早い方だ。
まりは速攻でヒメのキャラを消し、レジェロのアカウントを削除した。



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