清く正しいネット恋愛のすすめ_129_下準備

そうして嫌がらせを煽りながらも、同時に情報収集の網を巡らせて仕入れた情報によると、錆兎君と冨岡義勇の出会いは、どうやら巷で流行っているネットゲーム、レジェロの中らしい。

盲点だった。
リアルで会えないなら、そちらからアプローチすれば良かったのか…。

ネットなら冨岡義勇の唯一の取り柄の顔の良さも関係なくなるし、立ち回りの上手さなら負ける気はしない。
行ける!。

おそらく義勇もそうしたのであろう、初心者でか弱い後衛職のキャラを作ればいい。
その手の演技はとても得意だ。

そうとなったらこれ以上義勇との仲が深まらないうちに一刻も早く行動だ。

確か、亜紀もレジェロをやっていたはずだから、ゲーム内資金だけはわけてもらうことにする。
普通にプレイするなら装備も欲しいところだが、か弱い初心者キャラを演じるなら初期装備でいなければならない。

こうして亜紀からゲーム内のお金であるゴールドを分けてもらう約束を取り付けてキャラを作成した。

華奢で可愛らしい少女キャラ。
自分だとバレては困るので、キャラ名はヒメ。
ジョブはもちろんヒーラー、いわゆる白姫だ。


そうしてレジェロの初心者の村を出て街へたどり着くと、錆兎君を探す。
噂によると、友人知人も多数やっているこのゲーム内で、他と同様、自分に似た容姿のキャラを作っているらしいので、会えばわかるだろう。
…とは言ってもあてはないので、誰もがログインした日には必ず寄ると言われている競売所の前で待機してみた。

当然人でごった返してはいるが、錆兎君の髪色は目立つのでみつけられるだろう。
そう踏んでいたのだが、大当たりだ。

21時を少し過ぎた頃、競売の人ごみに鮮やかな宍色の髪が見え隠れする。
近づいて確認してみると、キャラ名はサビト。
間違いない、錆兎君のキャラだ。
隣には見るからに不死川や冨岡義勇のものであろうキャラもいる。

あの女っ!!

カッと頭に血が上ったが、ネットでは顔が見えないため、表情を隠さなくていいのがいい。
まりは自分の顔が嫌いだった。
ブスというほどではないが、瞼に皺のない、つるんとした一重。
それに黒目が小さく吊り目でという条件が揃えば、別に何もしていなくても陰湿そうな顔に見えた。

ブスでも愛嬌のある顔の人間はいくらでもいる。
そして得てしてそういう人間の方が人間関係を作りやすい。

人は顔ではないというが、それが綺麗ごとだということをまりは知っていた。
だって、何も情報のない相手が大勢いた場合、人間はまず話しかけやすい雰囲気の相手に話しかける。

美醜はとにかくとして、人好きのする顔と言うのは、それだけで人生をイージーモードにするのである。

そして相手が異性という事になれば、さらに容姿が重要になる。
ブスには許されなくても美少女なら許されることが多々あるのだ。

冨岡義勇の顔なら『おっとりとして可愛い。守ってあげたい』と言われる性格も、顔がブスなら『陰気でうっとおしい。近寄るな』と言われるのである。

だから努力をする必要のない義勇と違って、まりは研究し、努力してきたのだ。
容姿…というアドバンテージさえなければ、負ける気なんてしない。


しかし初っ端…錆兎君には拒絶された。
一緒にPTを組んで色々教えてほしいのだと言ったのだが、今のパーティーメンバーとの先約があるからと、しかし、助け手が必要ならどうすればいいのかと言うことだけは丁寧に教えてくれる。
それでもなんとか…と粘ったら、ワープで逃げられてしまった。

まあこれも想定の範囲内だ。
彼が信用に足る相手かどうかもわからず、自分が庇護すると決めた相手を放り出すわけがない。

今回このキャラを作ったのは、このキャラで彼と親しくなることが目的ではないので、"偶然彼らと出会った姫キャラがいる"…ということを彼に印象付けられればそれでOKだ。


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2 件のコメント :

  1. 誤変換報告です。後衛食→後衛職ではないかと…(;・∀・)💦ご確認ください。

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    1. ご報告ありがとうございますっ✨
      修正いたしました😀

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