清く正しいネット恋愛のすすめ_126_焦燥

どうしてこうなったのかわからない…
だが、嫌な状況になっていることだけは間違いない…

体育祭の終盤からずっと、武藤まりは焦っていた。


理由は亜紀が突然裏切ったことにある。
そんじょそこいらのクラスメートならとにかく、相手が亜紀となると本当に青天の霹靂だ。
想定の範囲をはるかに超えている。

なにしろ幼稚舎からの付き合いで、ずっと共にやってきたのだ。
同じ相手を好きなわけだから、一緒に幸せな結果を掴むなんてことはありえないのは元々わかっているし、亜紀が好きかと言うと好きでも嫌いでもない。
その人間性になど欠片も興味はなかった。

とどのつまりは居たら便利な相手というだけではあったのだが、一緒にやってきた時間、やってきたことが多いため、敵に回られたら誰よりも厄介だと思う。
…というより、敵に回るということを全く想像だにしていなかった。

裏切るのは自分が先だと思っていたのである。
だって錆兎君と恋人同士になるのは自分だ。
ライバルの追い落としは一緒にやったとしても、彼の恋人になれるのは1人きりなのだから、その時点で協力関係は終了する。

譲る気はない…というより、それが譲れないものでなかったとしても、亜紀が欲しいものを手に入れる手伝いなんてする気はない。
彼女は自分が欲しいものを手に入れる手伝いさえすればいい存在だ。
いや、彼女だけではない。
周りは皆、自分がほしいものを手に入れるための道具にすぎない。

武藤まりは本気でそう思っていた。
だから最初は極力実際に手を動かさせる。
そうして武藤の企みに加担したという事実を作り上げ、それをバラされたら…と怯える相手に次々と役割を命じていくのがポイントだ。

幼稚舎の頃は自身も幼くてまだ愚かだったため、胡蝶しのぶへの嫌がらせの時などは伊藤亜紀と共に自ら手を汚して、時にはバレて怒られたりもしたが、ライバルの追い落としに関しては噂を流しただけで証拠を残したりせず、うまくやったと思う。

小等部で錆兎君が男子科に移籍してしまったのは少し想定外だったが、よくよく考えてみれば、そのまま共学科に居られるよりは、年頃になって既成事実の一つでも作れるようになった自分が迎えに行くまで、女のいない環境に隔離しておいてもらえると思えば、むしろ喜ばしい事だ。

そんなこんなで、いつか錆兎君が異性に興味を持つ年になった頃にライバルになりそうなちょっと可愛い系の女の子の自意識は地の底まで落としておく必要がある。


幸いにして学年三大美少女と呼ばれるうち、甘露寺蜜璃はどこが良いのかわからないがとにかく互いにべた惚れしている彼氏がいて、冨岡義勇は学年一の乱暴者と言われている不死川実弥のお気に入りで日々追いかけまわされている。

最後の1人は幼稚舎の頃に潰し損ねた憎き胡蝶しのぶだが、彼女はそもそも錆兎君に興味はなさそうだ。
あるなら、あの幼稚舎時代、他の女子が避けるため唯一くらいに普通の距離感の女子で居た頃になんらかのアクションを起こしているだろう。

ということで、トップクラスの強敵は放置で、それより少し落ちるあたりにターゲットを絞って日々こつこつと潰すか弱みを握るかどちらかに勤しんだ。

それはそれは勤勉に。
そのマメさと情熱を他の方向へ向ければ大成するんじゃないかと思われるくらいに続けた結果、ほぼライバルはいないんじゃないかくらいの状況にはなったと思う。

それと並行して小等部の高学年になったあたりから、なんとか男子科の錆兎君に接近できないかと色々と画策してはみたのだが、彼はどうやら友人も多く児童会や生徒会の役員などを歴任していつも人に囲まれて忙しくしていることもあって、近づくことどころか声をかけることもままならない。


脈がありそうなレベルの女子は潰したものの、まあ放置しても相手にされないであろう程度の女子は放置しておいたため、そんな中で身の程知らずな何人かが近づけないならと手紙を託したらしいが、丁寧なお断りの返事が戻ってきたらしい。

大学に入れば有無を言わさず共学科と男子科の境はなくなるが、その代わりに外部からまたライバルが入ってくるかもしれない。
できればその前にカタをつけたい。



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