清く正しいネット恋愛のすすめ_124_関係友好、地位上昇

──伊藤さん…この前はありがとう。これ…

体育祭が終わり、その翌日に錆兎に全てを告白、謝罪した日から週末を挟んで初めての登校日。
亜紀が学校に着くと義勇が錆兎を伴って歩み寄ってきた。

そうして渡されるのは、わざわざクリーニングに出した運動靴と新品の学校指定の靴下。
そして、小さな包みだった。

「わざわざクリーニングに出してくれたのね。
普通に返してくれても良かったのに。
えっと…それで、これは…」
と、亜紀が包みに視線を移すと、

「あ、お礼っ。
週末にね、錆兎と選んだんだ」
と言いつつ、ねっ!と、後ろにいる自分よりかなり大きな彼氏を振り返る笑顔は可愛い。

いつもおどおどと困った顔か泣きそうな顔しか見たことがなかった気がするが、こうしてなんだか信頼しきったというか、安心しきったような笑顔を浮かべていると、美少女なだけに眼福…と言えるレベルで愛らしいと思った。

それに対して返す錆兎の笑みも、普段のキリリと精悍な印象の彼にしては驚くほど柔らかく甘やかで、互いが本当に互いにとって特別な相手なんだな…と、思い知ってしまう。

とりあえずそこで遠慮しても仕方がないので、素直にありがとう、と、受け取って中を見ると、可愛らしい付箋紙とマーカーペンのセット。

「もうすぐ試験だしな。
俺達は仲間内で予想問題とか回してるんだけど、伊藤も良かったら要るか?」

などと、これまでは大勢いるクラスメートの1人くらいのものだったのが、一気に親し気に声をかけてくれるようになった錆兎に、
「え?私もいいの?」
と思わずパッと顔をあげれば、
「もちろん!義勇の恩人だしなっ。
良ければこれからも仲良くしてやってくれ」
と、まばゆいほどの笑みを向けられて、クラスの他の女子達からの羨望のまなざしが集まった。

ああ、なんて素晴らしい。
夢のようだ…いや、まさか、夢っ?!
思わず頬を抓ってみた亜紀だが、やっぱり痛いので夢ではないようである。

そんな亜紀の少し赤くなった頬を、
「どうしたの?大丈夫?」
と青い目で覗き込んでくる義勇。
至近距離で見ると、さらに美少女だ。

「あ、ああ、ええ!大丈夫っ」
と、慌てて笑みを浮かべる亜紀にきょとんとした目を向けるので、

「えっとね…夢かな?…って思って…」
と、思ったままを口にすると、義勇は少しの間のあと、
「わかるっ!」
と、やばいくらいに可愛い笑みを浮かべる。

「やっぱり推薦欲しいよね。
伊藤さんもやっぱりギリギリのライン?」
「あ、あ~、うん。そう、かな」

なんだか成績を上げたいから錆兎の申し出が夢のように思えるのだ、と、勘違いされているらしいが、まあ、そういうことにしておいても問題ないので、敢えて否定はしない。

とりあえず、彼らと上手くやっていく第一歩は同性の方に好意的に接して褒めたたえることだ、というのは、拝島空太の例でも見て取れるので、ここはせっかく話す機会ができたのだしと、亜紀はまず形から始めようと

「えっとね…私のことは亜紀でいいよ?
で、私も義勇ちゃんって呼んでいい?」
と、提案すると、義勇はびっくり眼で固まって、ほわわっと少し赤くなって、わたわたと錆兎を振り返る。
そして彼が笑顔で頷くと、再度、亜紀の方を振り向いて、こくこくと頷いた。


…あ、なんか可愛いじゃん…
と、もうだいぶ心に余裕ができて改めて彼女個人を見て見ると、なんだかそんな風に思う。

「なんか…義勇ちゃんって可愛いよね」
と、ぽろりと零すと、わたわたと動揺するのがさらに可愛い。

これまでは単に大人しくてつまらない子だと思っていたが、内気っ子も悪くはない…ただし美少女に限る…と考えが変わった。

やばい、拝島空太が手のひらを返した気持ちがわかってしまったように思う。
どうせハマるなら同性の方が色々面倒もないし、気楽に思いきりはまれてしまうのだ。

来年は拝島のように実行委員になって、義勇ちゃん可愛い中継をするのも楽しいかもしれない。
伊藤亜紀はそんなことを思いながら、新たに出来た推しを堪能することにした。


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