清く正しいネット恋愛のすすめ_119_産屋敷学園高等部体育祭__男女混合リレー前半

──位置について…よおぉい…スタートっ!!!

パアァァン!!というピストルの音と共に第一走者がスタートする。

B,Cは第一走者に男子を投入。
A組は女子で男子よりやや遅れて走っていた。

湧き上がる歓声。
圧倒的な速さを誇ると思われていた宇髄だが、意外に拝島もそれにぴったりと食いついて行く。

拝島は中等部まではアンカーを走ってきたため、いつも好んで第一走者になっていた宇髄と走るのは実は初めてで、なかなか珍しい対決となった。


宇髄の方が一足先にバトンを渡すが、いままでで初めての僅差で同じく第二走者にバトンタッチした拝島との勝負に会場が沸く。


身体を曲げて膝に手をやり、
「…ああ…くそっ!もう少しだったのにっ!!」
と、はぁ、はぁ、と荒い息の下でそう吐き出した拝島は、しかし、すぐ顔をあげ、

「…ゆっくりしてる時間はないなっ!!」
と、身体を起こして実行委員席に視線を向けた。


同じく荒い息を整えていた宇髄は、その視線の意図を察して
「おまっ…本当に中継に戻んのかよっ」
と、呆れて言うが、拝島はきっぱり

「なんのためにわざわざ走行順を代わってもらったと思っているんだっ!
最後まで鱗滝君が生徒会長にふさわしい人材であることを学校中に訴えなければっ!」
と言いおいて、ダッシュで戻っていく。


理解は出来ないが、根性だけはみあげたものだ…と、その一貫した献身の姿勢に感心しながら、宇髄はすぐリレーへと視線を戻した。


A組はここでも女子、C組もここでは女子なので、胡蝶しのぶは女子3人の中を走ることになる。
もちろん彼女の足の速さは学年でもダントツトップなので、もともと1位でバトンを渡された彼女は気持ちの良いくらい差をつけて2位との差をかなり大きくしながら軽やかに走っていく。

ここまでは非常に順調だ。
しかし問題はこのあとである。

ここでA組は残りが男子2人なので、普通でも男女差で厳しい戦いになるだろう。
だからこそ、第二走者までで圧倒的な差をつけておかねばということもあって、ここで胡蝶を投入した。

実際彼女は期待以上の走りを見せてくれて、今、2位のC組との差はおそらく50mほど。
第一走者が唯一の女子で第二走者にパトンを渡すまでにかなり出遅れたA組とは走行距離の半分、100mほど差がついている。

このままいけば逃げ切れる気がするが、問題は義勇だ。
普段ならA組が男子を投入しても200mを走るのに100mもの差がついていたら、さすがに逃げ切れるだろうが、さきほどの靴の諸々の感触が忘れられないらしく、気持ち悪そうに足をもぞもぞしている。

本当に…どうせ嫌がらせをするのでも、こういう対処の必要なやつにすんなよ…と、宇髄もかなりイラっときた。

まあ…だが、今回ばかりは武藤も直接的にやりすぎたと思う。

これまでは自分が視野に入らないように気を付けていたんだろうが、今回はかなりやり方が直接的だ。

何故この方法が取れたのか?…という所から、関係者を追って行けば、必ず武藤にたどり着くし、義勇がショックを受けているところを目の当たりにして、その原因をわかりやすすぎるルートで追って行けば、おそらく錆兎は相手を逃しはしないし、許しはしないだろう。

錆兎は自分を空気が読めない他人の心を察することが出来ない男だと言うが、それはプラス方向にであって、実は相手を追い詰めたり傷つけたりする手段は恐ろしいほど熟知している。
熟知しているからこそ、この上なく厳しく自分を律してそれを行わないよう気を付けているだけだ。

だが、拝島の一件でそれを一部外した錆兎の様子を垣間見てしまった宇髄は、それがどれだけのものかが容易に想像がついてしまって身震いする。

拝島は"黒幕に騙されていただけ"ということで、首の皮一枚でなんとか生き残ったが、今回の"彼女"の場合は紛れもなく黒幕そのものなわけなので、それも望めない。


あ~あ、体育祭終わったら即修羅場かぁ?
と思えば、今回のこの自分の苛つきも可愛いものに思えて、宇髄はくしゃりと頭を掻いた。




Before<<<    >>> Next(11月24日0時公開予定)





0 件のコメント :

コメントを投稿