清く正しいネット恋愛のすすめ_108_産屋敷学園高等部体育祭の裏

何か命じられるっ!!

伊達に幼稚舎からの付き合いではない。
武藤は亜紀のことなど目に入れていなかったが、亜紀は武藤をずっと見ていた。


──あっ…の、役立たずがっ!!!

と言うのが拝島が完全に武藤の計画から外れたことに対する苛立ちの言葉なのは確かで、そうなると彼女の計画はまた、錆兎君の彼女に嫌がらせをすることで彼女が離れていくように仕向けるという方向へと逆戻りするのは明らかだ。

だから逃げた。

亜紀は即、
「やばっ!ちょっとアレになっちゃったかも。
トイレ行ってくるっ!」
と宣言をして、武藤が何か言う間を与えずに校舎に駆け込む。

武藤が何をやらかす気でも実行犯になるのは避けなければならない。
あわよくば拝島のように錆兎君側の人間に接触して改心した姿というものを見せて保護してもらいたい。

でも、誰にどう接触すれば良いのかわからないので、とりあえずは最低限、敵対行動をせずに、逃げ回って様子を伺うことにする。


競技の方は鱗滝&甘露寺ペアが圧倒的強さで障害物競争を制して、生徒席に戻ってそれぞれの恋人に祝福されていた。

大柄な錆兎君にしがみつくように抱き着く小柄な彼女、冨岡義勇ちゃん。

彼が共学科に迎えに来たあの日までは、すごい美少女だけど大人しくてテンポがちょっと独特な天然系で、不死川君にいつも怒鳴られている子…という認識しかなかったが、錆兎君のおかげでクラスの女子の半数くらいからは秘かに敵対心を向けられている子…という印象がある。

普通なら天然美少女と言うと男子にはモテそうだが、それまではおっかない不死川がずっと追い回していたため手を出そうと言う猛者はいなかったし、その後は錆兎君のライバルになろうなんて身の程知らずも現れず、意外に浮いた話一つ出ていない。

一瞬、武藤の策略で拝島空太が…というのもあったが、まあ本当に一瞬で撃沈したから、”彼氏と居る”義勇の図と言うのは、なかなか新鮮なものがあった。

美丈夫の錆兎君と戯れる小柄な美少女の図は、見た目は素晴らしく絵になる。
いいな、羨ましいな、と、思わないでもないが、義勇の位置に自分がいたとしても、錆兎君はきっとあんなに嬉しそうな顔をしてはくれない。
それがわかっているから、亜紀はもう幼稚舎時代と違って、自分がその位置に収まりたいとは思わなかった。

ただ無事に平穏に高校を卒業し、大学に進学したい…それだけだ。

しかしそれを錆兎君の側に打ち明けて、信じてもらえるか、それが問題である。
拝島空太と違い、幼稚舎時代にやりすぎている。


はぁ…とため息一つ。
少し離れたところからそっと武藤を伺えば、彼女は同じクラスの皆川沙奈に何かこっそりと声をかけている。

そうして沙奈は頷くと、ムカデ競争が行われている校庭に視線を向けているクラスメート達の席の方へと駆け寄って行った。


いや…正確には、その中に居る、義勇の元へ……



Before<<<    >>> Next(11月13日0時公開予定)


0 件のコメント :

コメントを投稿