清く正しいネット恋愛のすすめ_91_茂部太郎の鱗滝君観察日記_ネクタイのこと

鱗滝君が共学科に来て、早半月以上が経ちました。

二学期はもともと行事が盛りだくさん。
これからは各種イベントで大活躍する鱗滝君を目の前で見られると思うと、なんだか今から幸せです。

幼稚舎ではリーダー的存在で人気者だった鱗滝君は高校でも変わっていません。
相変わらず何でも出来て、親切で、頼りがいがあって…。

あとは、鱗滝君はいわゆる他人の悪口というものを一切言わない。
武藤のことで男子科に移籍するくらいに辛い思いをしたはずなのに、これはすごいことだと思います。

マイナスな事を口にしないだけではなく、逆にフォローをいれてくれる。



産屋敷学園は夏場は朝礼のある日だけネクタイ着用で、このネクタイの色が二種類の中から選べるんですが、その色が何故か紺とピンクだったりするんです。

紺はとにかく、何故ピンク??と、思うのは、俺だけじゃなくて、ほとんど99%くらいの男子が紺のネクタイなんですが、二学期の二回目の朝礼で、鱗滝君がしてきたネクタイはピンク。

それはそれは注目を浴びていました。


その頃はまだ女子はとにかくとして、男子は鱗滝君が色々できるからこそ、彼に対して好意を持つ奴、悪意を持つ奴が半々で、このピンクのネクタイに関しても

「なに、あいつ。女子受け狙い過ぎじゃね」
などと馬鹿にする失礼な輩がいて、俺も仁も射人も憤慨。

女子達もキレて一発触発な雰囲気でしたが、そこで空気を読んでいないようで実はめちゃくちゃ空気を読む人である宇髄君が

「なに?ウサ、ネクタイピンクかよっ。ウケルっ。
どうしてそのチョイスにしたし?」

と、笑いながら声をかけると、鱗滝君はそんな宇髄君の意図に気づいているのか、笑われることなど気にしない懐の深さなのか、もしくはその両方なのか、

「あ~…なんだか替えのネクタイを紛失したようで、先日購買に買いに行ったんだが、購買のおばちゃんがな、仕入れたは良いがピンクのネクタイが売れないと嘆いていたから、別に行事の時しかつけんし、色にこだわりもなかったから、もう、それならピンクで良いかなと」
と、にこりと穏やかな笑みで答えます。

うん…知ってます。
実は紛失じゃないんです。

最初の朝礼の日…。
体育の時、見学していた武藤がこっそり教室に戻っていたので、たぶん目的はそれだったんだと思います。
でもそれを俺達が言うのも変なので、無言を通したわけですが…

ともあれ、すごい!優しい!カッコいい!!
…と、はしゃぐ女子達……と、心の中で同じ言葉を絶叫する俺達3人。

次の休み時間…3人揃って購買に走って、同じピンクのネクタイを買ったのは、もうひとえに推しと同じ物を身につけたいと思うオタク心です。

そして…ネクタイを買う俺達の隣で、女子用のピンクのリボンを買う冨岡さんの姿が…。
息を切らしていたので、走ってきたのでしょう。
予備用も含めて2つ買っていました。

その後、ドドドッ!!と購買に駆け込んできた女子達がこぞってピンクのリボンを購入していましたが、男子ほどではないにしろ、女子もリボンは圧倒的に紺が多かったため、数を仕入れていないピンクのリボンは先にたどり着いた数名で売り切れて、買えなかった女子達が絶叫しています。

幸いにして男子用のネクタイはそんなこともなく、俺達3人はゆったりと買い物を済ませました。


そして3回目の朝礼の日…俺達3人は颯爽とピンクのネクタイを締めて登校。
やや周りの物珍し気な視線を受けながら教室に入ると、なんとそこには俺達以外にもピンクのネクタイをしたクラスメート達。

まあクラスの男子の3分の1くらいでしょうか…
こころもち…内向的な奴が多い気もしますが、中には宇髄君などクラスの男子の中でもトップクラスに目立つ人間も混じっていました。

彼などはネクタイの目立つ場所に“β”の飾り文字の小さなブローチをつけたりと自分なりに着こなしていて、なんだかオシャレ臭満載です。

俺達3人が教室に入ると
「また、ピンクネクタイかぁ。
ウサ、ファッションリーダーかよっ!」
と、宇髄君が爆笑。

それに
「みんなして鱗滝の猿真似かよっ。
そうまでして女子に受けたいか?馬鹿じゃねっ」
と、一部の男子が不快そうにそう言った時、当の鱗滝君が冨岡さんと共に教室に入ってきました。

そして目を丸くします。

「女子の称賛は羨ましいけど、猿真似することすらできねえやつのひがみかぁ?」
と、応戦中の宇髄君に視線を向け…その後、喧嘩を売っているクラスメートに視線を向け…なんとなく察したのか一瞬だけ考えて、それからにこりと爽やかな笑みを浮かべて鱗滝君が言ったのは

「猿真似じゃなくて、”お揃い”だろう?
ずっと紺ばかりだったところにピンクもあると思い出して、気分を変えてみようと思った奴が多かったんじゃないか?
学生本人は気晴らしになって、購買のおばちゃんは残っていた在庫がはける。
良い事尽くしじゃないか」
と、言う言葉で……ピンクネクタイの面々と女子の視線がハート形になった気がします。

ああ、もう、鱗滝君はいう事からして違いますっ!
主役ですっ!主人公のキラキラしさですっ!!

その横で冨岡さんが、
「そうだよね。私も錆兎とお揃いだし♡」
と、嬉しそうに自分の胸元のピンクのリボンをいじるのもめちゃくちゃ可愛いです。

もう圧倒的光のオーラを振りまいた鱗滝君は、猿真似発言をしていた安藤というクラスメートの前までくると、やはりニコリと笑みを浮かべ、

「安藤は紺にこだわりがあるんだな?
よく似合っているもんな。
他は他、自分は飽くまで自分の好きな色という姿勢も良いよな」
などと言いつつ至近距離であの神々しい笑みを見せると、それをまともに喰らって、安藤も

「お、おう。まあな」
と言う声からは、険が取れてしまっていました。

宇髄君がよく鱗滝君のことを『ウサは人たらしだから』というのがよくわかります。


こうしてクラスの面々を無意識に次々陥落させていった鱗滝君は、最終的にこのあとの二学期最初のイベントでクラスの満場一致で名前があがることになるのでした。



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2 件のコメント :

  1. 誤字報告:何故か途中2回くらい宇随になってる宇髄さん…(・・?
    MMさんの窃盗罪が…❕立証されるのかなぁ~?

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    1. ご指摘ありがとうございます。
      単語登録もしているのにどうしてかたまに髄が随になっちゃうんですよね😅💦💦

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