「潰すなら念入りにゴリゴリ潰して、二度と立ち上がれなくしましょうっ!」
その夜…いつもならレジェロ勉強会のあとはそれぞれ別行動なのだが、今日は放課後の出来事を踏まえての打ち合わせと相成った。
おそらく、ディスプレイの向こうでは、さぞや生き生きとした目をしていることだろう…と、不死川は遠い目になる。
しかしながら、これを止められる唯一の人物であろう錆兎が止めるどころか言い出しっぺなのだから、もう相手は人生終わったんじゃないだろうか…と、わずかばかり相手に同情をした。
小等部から高等部まで…今年で産屋敷学園も10年目に突入するので、不死川も拝島とは2回ほど同じクラスになったことがある。
そのどちらも義勇とは違うクラスだったので、彼が義勇に対してどういう思いを抱えてどういう態度で居たかは知らない。
さらに言うなら、相手は学年で万年2位。
そして不死川は下から数えた方が早い劣等生だったため、そもそも接点がないので、あまり強い印象はなかった。
強いて言うなら、なんでもできるのは錆兎の劣化版と言う感じだが、雰囲気がどこかイラっとさせる男だったように思う。
顔が悪くはなくて、清潔感があって、スポーツも出来て成績もいい。
だから一部の女子にはモテるのだが、男からは嫌われていたような気がした。
そう言えば自分も接点がなさ過ぎて喧嘩を吹っ掛けるようなことはなかったが、あえて関わりたくないと思っていたように記憶している。
何故…と言われれば、単に出来過ぎて気に食わないから…というのが正しいのかもしれないが、それを言ったら錆兎なんてそれ以上に出来過ぎる人間なのだから、今にして思えばよくよく見て見れば嫌味な性格の人間だったのかもしれない。
それにしても…義勇が好きなら自分と違ってめちゃくちゃ嫌われていたわけではなかったのだから、少しくらいアプローチしてみれば良かったんじゃないだろうか。
何故、ハイスペック過ぎる錆兎が彼氏になったタイミングでちょっかいをかけようと思ってしまったのだろう。
もしかして、実は自分よりも馬鹿なんじゃないだろうか…
どうせどういう風に追い詰めていくとかは、やる気満々のしのぶが提案、錆兎が補足するところは補足して決定となるのだろうから、何かさせられることが決まってから真面目に聞けばいい…と、不死川はディスプレイの向こうで流れていく会話を適当に流し読みをしながら、そんな風に自分の知っている拝島に関する記憶に思いを巡らしていた。
そうして流し見ていると、どんどんしのぶが過激な方向へと向かい始めるのにストップをかける意味もあったのだろうか、宇髄が
「潰すのには異論はねえけどな、その材料を追加するためにも、拝島が冨岡に何を言おうとしていたのか知っておいた方がよくね?」
と、口をはさむ。
まあ、もっともな意見なので錆兎も反対はしないのだが、
「それはそうなんだが…義勇と二人きりでないと本音は話しそうにないし、義勇の意志を尊重するような人間ならこうなってはいないし、二人きりの時に無理に拘束されたら危険じゃないか?」
と、眉を寄せた。
それにもしのぶがノリノリで手をあげる。
「私、良い物持ってますっ!
防犯ブザーなんですけど、鳴らすと音声で『不審者ですっ!助けてっ!!』って鳴るんですよ!!
身体に触れてきたりしたら有無を言わさず鳴らしてやればいいんです。
一応二人きりで人のこない場所でと言っても、最大音量にして流せば学校内であればどこかしらの人には聞こえますし、なんなら茂部君達に近場に待機してもらうってどうです?」
非常に楽しそうな様子だ。
よほど拝島のことを嫌いなのだろう。
「まずは、女子に迫って防犯ブザー鳴らされたという実績を作ってそれを録音しておいて…その後、それは公にしないで煽って錆兎さんに何か勝負しかけてコテンパンに伸されて、その後に……」
と、指折り数えている。
どんどんエスカレートしていきかねないしのぶに錆兎が大きくため息をついた。
「とりあえずは…茂部に連絡を取って協力依頼したうえで、昼休みにでも、しのぶの防犯ブザーをポケットに忍ばせ、念のため小型のボイスレコーダーつけて拝島に特攻か…。
義勇、それで大丈夫か?
無理なら別の方法を考えるから、遠慮なく言ってくれ」
「ううん、大丈夫。
私も早く解決したいから」
と、錆兎の方はそれが一番確実だと思いながらも少し気が進まなさそうだったが、義勇の方がわりと乗り気になったことで、当座の方針は決定した。
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