清く正しいネット恋愛のすすめ_68_お昼は弁当

4時間目の授業を受けたあとの昼休み。
錆兎と義勇と胡蝶しのぶ、それに不死川と宇髄は化学部の部室に集合した。

もちろん3時間目と4時間目の間の休み時間に義勇を除く4人の机の中に放り込んであったメモの件を話し合うためである。


まあ、それでもまずは昼食、ということで、全員弁当箱を持参しているのは良いが、大きな会議用の机を囲んで座った途端、錆兎と義勇が弁当箱を交換した。

義勇が開けたのは錆兎が持ってきた弁当箱の蓋である。

そして
「あっ!鮭大根っ!!」
と、弁当箱の蓋を開けた義勇がぱあぁっと顔を輝かせた。



「…お前ら、それ、なんなの?」
と、突っ込みをいれるのが宇髄なのは、まあ、このメンツのお約束だ。

そして、そんな言葉は聞こえないとばかりに、義勇が大好物の鮭大根をもきゅもきゅ頬張るのも…。
そして、それに錆兎が答えるというところまでワンセットである。


「あ~、義勇の料理の勉強のため?」

そう言いながら、錆兎が義勇の持ってきた、彼女の物にしては確かに大きい弁当箱を開けると、そこにはいびつな形のおにぎりと、微妙に茶色の卵焼き、それに、それはかろうじて普通に見える鶏の唐揚げが入っている。


それを覗き込んだあと、宇髄は義勇が抱え込んでいる弁当箱をちらり。

そちらには、義勇が目を輝かせて食べている鮭大根の他にも、ねじり梅の形に飾り切りした人参の煮物、こちらは綺麗な黄色に焼けた卵焼きに、ほうれん草の胡麻和えが、実に美しく詰め込まれていて、宇髄ははぁ~~とため息をついた。

「どっちが料理を勉強中なんだか、俺にはよくわかんねえんだけど?」
と、思わず漏らすその声に、不死川が実に真顔で

「下手な方が勉強してんに決まってんだろォ。
冨岡が今食ってる弁当のレベルの料理作れんなら、とりあえず勉強する必要性は感じねえ」
と、言われてみればその通りかも?と、思う納得の意見を述べた。

「まあ…確かにそうだけどよ…」
と、同意はしてみるものの、釈然としない顔の宇髄に、錆兎はにこりと

「料理を含めてなんでもしてやりたい気はあるんだが、実際問題、義勇が何も作れないままだと、将来、俺が体調を崩したりとかして作ってやれない時に義勇が困るだろうからな。
やらないのと出来ないのとでは大きな差がある。
簡単に手早くできるものだけでも、と、考えたら、毎日の弁当が一番だろう?
で、自分のためと思えば面倒になるものでも、食わせる相手がいれば飽きないかと思って…」
と、少しパサパサ感というか、パリパリ感がありそうな卵焼きを口に放り込む。

それを見た宇随の
「…卵焼きって…そんなに茶色いもんか?」
と、言う突っ込みに答えたのは、それを咀嚼中の錆兎ではなく、不死川だった。

「あ~…卵料理は単純だけど難しいんだぜ?
特に砂糖いれると焦げやすくなるしな。
それまで全く料理してなかった奴が練習初めて間がないくらいで一応焦げ付かせてぐちゃぐちゃにせずに、うっすら火が通りすぎたくらいでも綺麗な卵焼きの形になってんなら上等だァ」

「…そう言えば…先日の調理実習。
不死川さんもずいぶんと手馴れてましたね。
料理、得意なんです?」

と、胡蝶が問えば、不死川は
「あ~、うちは下に6人の弟妹がいる上、親が忙しいからなァ
長期の休みは家事はほとんど俺の仕事だから嫌でも慣れらァ」
と、鼻の頭を掻く。

「意外。不死川さんて家庭的な人間だったんですね」
と、普段は手厳しいことしか言ってこないしのぶのその言葉に、油断したのだろうか、

「胡蝶は料理できねえだろ?」
と答えた不死川はいつものお約束の、しのぶの裏拳と宇髄の後頭部へのチョップをくらうことになった。


「痛えなァ。図星かよっ!」
「放っておいてください」
頭を抑える不死川に、ツンとそっぽを向くしのぶ。

そこで不死川はクスリと笑みを浮かべる。

「お前も末っ子だもんなァ、実は。
ま、兄弟姉妹なんざそんなもんよ。
親も色々出来る年になれば長子には頑張って教えるんだけどな、なんでか下の子どもはいつまでも子どもな気がするし、助け手が必要ならできる長子にやらせた方が早いし、危ねえからってやらせねえんだよな。
だからうちも俺は小学校低学年の頃には普通に包丁握ってたが、下の方の兄弟は小学校4,5年になっても湯を沸かすくらいしかできやしねえ。
かろうじて中3のすぐ下の弟と、小6の一番上の妹が湯をわかして何か茹でたり、レンチンしたりする程度か」

「なるほどな。
器用不器用の問題じゃなくて、親の姿勢の問題かぁ。
俺や錆兎みたいに保護者が暇じゃねえ一人っ子は、実質長子と一緒だな。
教われる時に教わっておいて、自分で動かねえと、インスタント三昧になっちまう」
と、それに納得したように宇髄が頷いた。


「でも…ちゃんと教わってきた人が羨ましいな。
うちも母さんと姉さんで料理していて、私が手伝いたいって言ってもお皿運びくらいしかさせてもらえなかったから…。
…今から頑張らないと…。
将来、錆兎と錆兎と同じ顔をした小さい錆兎に美味しい手料理を食べさせたいから…」
と、そこでようやくごっくんと口の中のものを飲み込んで、一息ついた義勇が弁当から顔をあげた。

「いやいや、ウサとクリソツとは限らねえだろ?
冨岡似とか、2人を足して2で割ったようなのとかいう可能性も…」
と、突っ込み役としては突っ込んだ宇髄だが、横でさらに突っ込みのしのぶが

「…突っ込むところはそこですか…」
などとそれに対して突っ込みを入れている。

しかししのぶの突っ込みは宇髄に対するものだから自分には関係ないとばかりに、義勇は宇髄にしっかりと視線を向けて

「そんなことないっ。将来は錆兎にそっくりな息子に囲まれているはずっ」
と、断言をした。

「根拠は?」

「だって、錆兎は完ぺきだから。
神様だって錆兎の血で世界を埋め尽くすべきだってことくらいはわかるはず」
と、まるで宗教のようなことを言い始めて、誰も反論できずに黙り込む。

唯一、錆兎だけがぼそりと
──…俺は義勇に似た可愛い娘が良いが…
と、つぶやいたが、その小さなつぶやきが、その後に続く、もし錆兎にそっくりな子がいっぱい生まれたら…という壮大な計画を語る義勇の声に飲み込まれていった。



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2 件のコメント :

  1. 誤変換発見( ̄ー ̄ゞ-☆何故か最初だけ宇随さんになってます。

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    1. ぉおう、ホントだ(;'∀')
      修正しました。
      ご報告ありがとうございます😊

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