…???
休み時間…音楽室へ移動するために教科書を抱えて廊下を歩いていた義勇は、ふと視線を感じて振り向いた。
だから、人がいたとしても、全く不思議なことではない。
「…どうしたんです?冨岡さん」
「不穏なガンでも飛ばしてきた奴がいたかァ?」
と、左右を歩く胡蝶と不死川がそれぞれ不思議そうに聞いてくるが、義勇にもよくわからない。
なにか…見られている気がした、と言うだけで、実際にそうなのかもわからないので、義勇は
「ううん、なんでもない」
と言ったが、時遅し。
「あなたはそうやってわざわざ不穏になる原因を作らないでください、不死川さん」
「ああ?別に何もしてねえだろうがぁ!」
「言い方と表情が不穏すぎるんですよっ!」
などと、胡蝶と不死川の言い合いが始まった。
こうなると義勇ではどうにもならなくて、辺りを見回すとちょうどいい所に宇髄がいたので、ちょいちょいと手招きをして、間に入ってもらう。
普段なら錆兎が間に…いや、錆兎がいれば言い争い自体を回避させてくれるのだが、今日は一足先に音楽室だ。
なんと、音楽の授業で合唱コンクールの課題曲を練習するのに音楽の先生が休みだそうで、自習というか、生徒だけで練習をすることになったのはいいが、曲が決まったのが一昨日のことで、まだ伴奏も決まっていない。
アカペラか?アカペラで練習か?となった時に、昨年、男子科で中等部の担任をしていた現社の先生の
「課題曲、『大地讃頌』か。それなら鱗滝なら初見でも行けるだろ」
の鶴の一声で休み時間に譜に目を通しつつ、サラッと練習しているらしい。
というか、何故ピアノまで出来るんだ…と、もうあれこれ出来過ぎて不思議なレベルだ。
宇髄が仲裁に入って…というか、不死川の態度や言い方を彼の代わりに胡蝶に謝って、お前は今は錆兎から義勇を任されてる身だろうが、と、不死川の後頭部を軽くどついて、落ち着かせて、そうして結局4人で音楽室へ急ぐ道々でも何故か視線を感じて…気配に敏い宇髄が少し不思議そうに後ろを見やったので、あとの2人は気づいていないのか気にしていないのか反応はないが、おそらく義勇の気のせいではないのだろう。
刺すような視線…。
なんとなく、自分に向けられているのではない気もするが、集団でいるので本当のところはわからない。
でもそんなのを気にしている暇はない。
急がないとそろそろ予鈴がなってしまう。
「不死川さんがあんなこと言ってるから…早くしないと遅刻です!」
とポコポコ怒っている胡蝶に、もう諦めて、
「はいはい、俺が悪かったァ。急ごうぜェ」
と、投げやりに謝罪する不死川。
そうして速足になる二人を小走りに追う義勇と、もう一度だけ後ろを振り返った後、さらにそれを追う宇髄。
…可哀そうに…俺が助けてあげるからね……
そうして急ぎ足で音楽室に向かう時に、背中からそんな声がかかった気がした。
一番最初の義勇が義だけになってます…(;・∀・)
返信削除ご報告ありがとうございました。
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