あれから2日。
マコモが欲しい新装備が出ないらしく、サビトがそちらに引っ張られて3日目だ。
サビトは最初一日で切り上げると言っていたが、元々はそうやってマコモや友人周りの装備のためのタンク役を引き受けていたらしいので、ギユウのためにそれをやめさせるのは申し訳ない。
だから、今回は時間があるうちに一気に調理スキルをあげてしまいたいのだとそう言って、サビトを送り出していた。
タンジロウはタンジロウで、初日は合成のスキル上げをしていたが、2日目からはギユウのイベントにも来てくれた狩人のゼンイツ達のレア狩りに誘われて、サビト達のほどすごいレアでないかわりにそれを落とすノートリアスモンスターを倒すギミックもそこまで難しくはないから、良ければ一緒に…と言ってくれたが、まだレベル59でカンストの60で覚える蘇生魔法の最高峰であるリバイブIIIを覚えていないため、万が一があると申し訳ないしと思い、レア狩りは60でカンストしてからのお楽しみにしたいからと言って断った。
…ということで、1人暇になってしまったギユウは、サビトに宣言した通りに、調理アカデミーにこもってスキル上げに勤しんでいる。
そしてそこでは隣にやはりせっせとスキル上げに勤しむシエルがいた。
そこでおそらく高めのスキルのレシピを使っているのだろう、パリン、パリン、と割りながら、それでも順調にスキルをあげているようで、ギユウは昔の自分を思い出して、ムフフと笑う。
そうして時折、調理スキルについての諸々を話しながら並んで合成をしていたが、パリン、と、一度素材を割った後、シエルが手を止めた。
「あのさ、ギユウちゃん」
「うん?」
「良ければこれから素材狩り手伝ってもらえないかな?
そろそろ割りながらだと素材代もかかってくるし、少し浮かせたいなと思って」
その気持ちはギユウにもわかる。
ギユウだってパリンパリン割るのを気にせずにスキル上げが出来ているのは錆兎の合成素材倉庫のおかげだ。
自分で素材を用意するなら、初期ならとにかくとして、スキルが上がってきたら競売で買うのはお財布に厳しすぎる。
なので、ギユウは自分が暇なのもあって快諾をして、2人でシエルが今調理スキルをあげるのに作っているドラゴンステーキの素材である恐竜の肉を集めるため、それを落とすアースサウルスを狩りに行くことにした。
こうして草原で狩り。
レベル60のモンスターなので、カンストナイトであるシエルはもちろんソロでも狩れなくはないが、その場合、ある程度防御も必要になるので火力が弱くなる。
その点、ヒーラーのギユウが居れば、防御を若干捨てて火力を重視できるため、殲滅速度があがるということからの、お誘いなのだろうと、ギユウは理解していた。
…が、シエルが相変わらず普通の防御用装備なので、
「あの…攻撃装備に変えてもちゃんと回復するから大丈夫だよ?」
と、声をかけてみたら、
「え?」
と、驚かれた。
「…殲滅速度をあげるのに防御が下がる攻撃用の防具を装備するから、HPが減った時の回復用に私を誘ったんじゃないの?」
と、義勇が不思議に思って聞くと、シエルは心外!と言った感じで
「俺は腐ってもナイトだからね。
そこらのエセタンクと違って、防御を捨てるなんてことは絶対にしないよ。
ましてや白さんを薬箱扱いするなんてとんでもない!
今回ギユウちゃんを誘ったのは、単に一緒に狩りをしたら楽しいかなと思ったからだよ」
と、言う。
そのシエルの言葉にギユウは内心ムッとした。
「違うと思う…」
「え?なにが?」
思わず出たギユウの反論の言葉に、シエルは不思議そうに聞き返す。
「タンクだってケースバイケースで攻撃力が必要になる時はあるよ?」
リアルでぷくりと頬を膨らませながら、そう打ち込むギユウに、
「ギユウちゃんはヒーラーだしまだ慣れてないからわからないかもしれないけどね、タンクが火力を重視して防御を捨てたら、ヒーラーの回復量が増えて、ヒールのヘイトでヒーラーが危険になるからね」
と、まるでわかってない相手に教えてやっている的な感じで言われて、さらにギユウはムッとするが、口下手なこともあって、うまく言い返せずに
「そうじゃないっ!」
としか言えずに、黙ってパーティーを抜けて、レジェロの家へ戻って籠った。
自分が上手く言えないせいで、サビトを馬鹿にされたままな気がして悔しくて悔しくて涙が出てくる。
突然怒って抜けたため、シエルからはtellが来るが、今日は話したくないから放っておいて、と、だけ言うと、静かになった。
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