清く正しいネット恋愛のすすめ_57_茂部太郎の日記_架空世界と現実の狭間で

【レジェンド・オブ・ロード】通称レジェロ。
それは若者の間で大人気のオンラインゲームで、俺達3人も当然やっています。

ファンタジー好きのアニメオタクなので…ということもありますが、もう一つの理由は…そう!カインに激似の鱗滝君が、サビトというキャラ名でナイトをやっているからですっ!!

カインに似た鱗滝君がゲーム内でカインと同じように剣をふるっているわけですよっ!
しかもこれが、鯖一の神ナイトと称えられる巧さ!カッコよさっ!!

ナイトは唯一無二の盾役で、武器が変われば派手に強さを実感できるアタッカーと違い、武器よりもスキル回しや立ち回りが重要な、地道で難しいジョブなので、絶対数が少ない上に、優劣の差が歴然とするのですが、そんなジョブで、鯖1と言われるのは、さすがカイン似の鱗滝君です。

見ててとても楽しい。
だけど、物足りない。
何が物足りないって、ヒーローはいるのにヒロインのアリアがいないこと。

いっそのこと俺達の誰かがアリア似のキャラを作ってしまおうかと思いましたが、俺達はやっぱりモブなのです。
自分が舞台に登ってはいけない…というか、俺達みたいなモブがアリアを語ったらアリアに対する冒とくというものだと気づいてやめました。

そして、これはアリアと出会う前のカインの物語なのだ…と、いつか彼がアリアと出会って恋に落ちる話を妄想しながら、俺達は鱗滝君のキャラ、ナイトのサビトさんのおっかけをしていました。


サビトさんは何度も言いますが、鯖でトップクラスのナイトです。
だから彼がやるクエストや潜るダンジョンはだいたいが最難関のもので、メンバーもだいたいトップクラスの人達。
いつも一緒なのは黒魔のマコモさん。
おそらく…というか、絶対に中の人は鱗滝君の1歳年上の従姉妹で女子科の生徒会長の鱗滝真菰さんだと思います。
そしてそんな彼女は多くのギルドが取り合いをしている鯖一の火力の持ち主として有名でした。

そもそもが黒魔導士は魔法による攻撃のみのジョブだけにMPが枯渇しやすく、長時間コンスタントに狩りを続けるレベル上げには向かないのでレベル上げPTに入りにくいため、カンストの黒魔導士はアタッカーの中でもレアな存在です。

が、彼女の場合、逆にレベル上げでも必須で絶対数の少ないタンクのサビトさんと一緒だったので、レベル上げにもさほど苦労もせず、カンスト出来たのでしょう。

そうしてカンストしてしまうと、アタッカー一の火力を誇る黒魔は一躍大人気になるわけなんですが、それから楽になるかと言うとそうでもなくて、ただで殴って減るHPをヒーラーに回復してもらえる他のアタッカーと違い、今度は強い魔法を連発するためにがんがん減っていく魔力の補充に高いマジックポーションをがぶ飲みしてなんぼと言われるようになります。

高額なレアアイテム取りのPTに入れてもらうには、まずその初期投資が必須で、1本数千するマジックポーションを1時間に10本20本空けるのが当たり前なので、その初期投資をできない黒は割の良いPTには入れず、割の良いPTに入れないから資金や良い装備を調達できないという悪循環にはまるようです。

が、それをクリアして、そこは人数が少ないので競争相手も少ない黒用の火力装備を揃えるまでになれば、あとはもう、最強のアタッカーの黒魔様として、マジックポーション代くらい用意してもその火力が欲しい廃人達に装備だけつけて身一つでいらして下さいませという扱いで迎え入れられるようになります。

彼女の場合、装備が揃うまでの不遇時代に人気ジョブのタンクとセットで活動していたため、レベルが上がるのも早く、鯖最速で最強の黒魔に育っていったので、トップレベルのレア狩りPTに誘われて、さらに強く、強く、強く…と、鯖で最も強い黒として名を馳せていました。

と、そんな鯖1の廃黒のマコモさんと鯖1の神ナイトサビトさん、そして何故かいつのまにかそこにいると皆に言われている謎の赤魔導士のムラタさん。
この3人がいつもセットで、あちこちのPTやギルドの助っ人に呼ばれていたのです。

おおがかりなダンジョン攻略の時などは、メインのアライアンスの8人以外が現地までの雑魚を掃除したりすることも少なくはないので、野良でサビトさんが参加すると言うダンジョンの掃除屋を募集していたりする時には、俺達も参加して、カインのように強敵を相手にする彼の雄姿を堪能していました。

掃除係として雇われた人間がレア狩りを見物させてもらうというのは珍しい事ではないので、時折サビトさん以外のタンクの狩りも見ることがあるんですけどね。
これが全然違うんですよ。

なんというか…サビトさんがメインタンクをやっている狩りは、被ダメが違うとかそういうのは当たり前にしても、滲み出るオーラと言うか安心感みたいなものがあるんです。

さらに彼がただ防御が高いだけの他のナイトと違うのは、ケースバイケースで立ち振る舞いを変えること。

例えば普段のレア狩りの時には防御装備なんですが、狩ってみて火力が足りないなァなんて時には、瞬時に判断して、何段階か用意しているらしい火力が足りない時用の装備に着替えたりスキルを変えてみたりするんですよ。

基本は完ぺきで臨機応変。
伊達に鯖一の神ナイトと呼ばれてはいません。

そんな彼の戦いをみるたび、ああ、いいなぁ…やっぱりカインみたいだなぁ…と、俺達は心躍らせていたわけなのでした。



そんな風にサビトさんのおっかけをしていた俺達は、当然彼のログイン場所も知っています。

たいていのプレイヤーはホームポイントでログインやログアウトをしているんですが、サビトさんは何故かいつも城の裏庭でゆっくり登場。
それから競売横の預り所で装備を整え、狩りに行くという感じでした。


その日俺達は、あの帰り際の冨岡さんとの一連の出来事に盛り上がって、そのことを一晩語り明かそうと、仁と一緒にノートPCを持って射人の家に集合し、3人並んでログインしたのですが、そこで俺達は信じられない光景を目にするのです。

なんと…サビトさんの横に、ギユウという名のアリア似の白姫がっ!!!!
それが冨岡さんであることは一目瞭然。

ついにカイアリキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
…と、俺達は狂喜乱舞。

その翌日に見かけた時には二人がお揃いでつけたノーブルローズが金色に輝く光の糸でつながっていて、めでたくヴァナ婚をしたことを知ってまた涙でした。




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