皆さん、こんにちは。
茂部(もぶ)太郎(たろう)です。
茂部太郎？どこかで聞いたような…と思われる皆さま、それは当然のことです。
由緒正しい白モブ家系出身の白モブ、茂部太郎は、物語の主役が居る限り、あちこちに影のように存在するのですから……
親友は壱藩(いっぱん)仁(じん)、園辺(そのあたり)射人(いるひと)の2人。
いつも3人で楽しくモブ生活を送っています。
清く正しくモブらしく…それをモットーに幼稚舎から産屋敷学園共学科の片隅に籍を置いている俺ですが、オタク気質の俺と友人にとっては、この産屋敷学園は萌えの宝庫でなかなか幸せな学校です。
主役級の方々って幼稚舎の頃からすでにオーラみたいなものがあるわけなんですよ。
女性で言えば幼稚舎の圧倒的トップは胡蝶しのぶさん。
外見はめちゃくちゃ可愛いのに、知的で毒舌。
もう、どんだけ設定盛ってるんだって感じでした。
男性陣はタイプが違う二人。
1人は清く正しい将軍様か勇者様と言った感じの、もう後光が射してる勢いの正統派主人公な鱗滝錆兎君。
幼稚園児にしては随分と礼儀正しく、どこぞのお武家の若様といった感じの雰囲気だと思ったら、驚くほど大きく立派な日本家屋に住んでいて、お爺様が剣道を教えているとのこと。
もう一人は美形だがやや皮肉屋で、王道おとぎ話なら主人公を助ける友人役、少し大人向けの物語なら主人公ポジな雰囲気の宇髄天元君。
これで可愛くて優しい、勇者に守られる系のお姫様がいれば完璧だね…と、モブ3人組ははしゃいでいました。
そんなある日、年中組の時、鱗滝君がいきなり数日にわたりお休みをして、戻ってきた時には頬に大きな傷痕が出来ていたんです。
それはそれでカッコいいな、と、モブな俺達は盛り上がったんですが、そこで目立たないがゆえに居ても認知をされないモブならではのアクシデント…。
そう…俺達3人は連れションした時に射人がちょびっと漏らしてしまって、廊下から戻って見つかったら恥ずかしいから…と、裏の扉からこっそり園舎外に出た時に、2人の女子が…それも秘かにいじめっ子気質の女子達が園舎の裏でダンゴムシを集めているのを見てしまったんです。
武藤まりと伊藤亜紀。
先生や皆の前ではそんなことはないんだけど、裏ではすごい。
気の弱い女子が泣かされているのを俺たちは何度も見ていました。
何故俺たちだけ見ているかと言うと、俺たちは3モブとか空気仲間とか言われるくらいに存在感が薄いらしく、何故か武藤達に認識されないことが多いんです。
そして…まあ、とってもモブなので、いじめを見たところでそっとその場を離れるから、俺たちが見ても何も起こらない。
だから、今回も、何かしてんなぁと思いつつも、こっそりその場を離れる予定でした。
武藤達の口から、『胡蝶しのぶさん』の名が出なかったなら。
「ねえ、まり…本当にやるの？」
「…当たり前でしょっ！しのぶ、言う事聞かないんだもん！
せっかく、錆兎君の傷は呪いだから近寄るとうつるって脅かしたら皆錆兎君に近寄らなくなったのに、ここで言う事きかないしのぶに何も起こらなかったら、みんなに錆兎君に近寄っても大丈夫なんだってバレちゃうじゃないっ」
「…でも…ダンゴムシ気持ち悪いよ…」
「気持ち悪いからいいんでしょっ！
良いから黙って集めなさいよっ！錆兎君を他の女の子に取られても良いのっ？！」
「…いやだけど……本当にやるの？」
「しつこいっ！しのぶがいう事きかないから呪いがかかって、靴がダンゴムシでいっぱいになったってことにするんだからっ！」
俺たちはとんでもないことを聞いてしまったと思いました。
しかし、いつもと違って逃げたりしない。
だって、憧れの胡蝶さんに嫌がらせなんてさせられない！！
…というわけで…3人揃って武藤達が胡蝶さんの靴にダンゴムシを詰めるのを見届けて、彼女たちが部屋に戻ったところでこっそりダンゴムシを逃がしたうえで、3匹ずつくらいは武藤と伊藤の靴に移します。
そう！胡蝶さんの靴は俺たちが守るんだっ！！
3人で固く誓い合って、その後、様子を見ていたら、帰りに何事もなかったように靴を履く胡蝶さんに、
「しのぶちゃん、呪いで靴に何か入っていたりするかもよ？」
と、胡蝶さんがダンゴムシに気づかないのだと思ってそう笑って言ったが、胡蝶さんは靴を脱いで
「この通り、何もはいってませんよ？」
と、靴を逆さに振って見せました。
「え？うそっ！ダンゴムシは？！」
「…なんのことです？」
焦って胡蝶さんの靴をひったくって覗き込む武藤達。
ふふっ…馬鹿め！胡蝶さんの靴は我らモブ三銃士が無事守ったんだ！
と、俺達はそんな奴らを遠目で見て、にやりと笑みを浮かべます。
こうして胡蝶さんの無事を確認後、俺たちは安心して帰ろうとしたんですが、そこで後方の玄関から悲鳴と泣き声が聞こえてきました。
──いやあああーーー！どうしてっ？！なんで、あたしの靴にダンゴムシがっ？！
──亜紀っ！！入れ間違ったのねっ！！このばかあああーーー！！！
と、武藤と伊藤が自分達の靴を振り回しながら泣き叫んでます。
そこで俺達は胡蝶さんの靴から一部あいつらの靴にダンゴムシを移動させておいたことを思いだしました。
もちろんその後に犯人探しが行われます。
武藤が口を滑らせたことで、武藤達が胡蝶さんに嫌がらせをしようとしたことはバレてて、仕返しに胡蝶さんが？と言う話もでましたが、胡蝶さんは目立つ子だから、下駄箱に移動なんてしたらすぐわかるし、ずっと教室にいたのでそれはないということになったし、もちろん俺達を疑うものは誰もいません。
結局、武藤の言葉通り、胡蝶さんに嫌がらせをしようとして間違って自分達の靴にダンゴムシを入れてしまったのだろうということで、武藤と伊藤は随分と先生に怒られていました。
ざまあみろだ。
…と、それ以来、2人が何かしようとしても、俺達がこっそり2人が胡蝶さんにしようとしていたことを本人たちにやり返したりしているうちに、自分達が胡蝶さんにやったはずのことが何故か自分達に返ってくることに怖くなったのでしょう。
2人とも胡蝶さんに手を出すのは諦めたようでした。
そんなこんなでそれから1年ちょっとが平和的に過ぎていき、俺達は揃って小等部に。
そして小等部の入学式で衝撃的な出来事が起きました。
鱗滝君がいない。
どこにもいない。
おかしい…と思っていたら、いつのまにか男子科に移籍していたようでした。
幼稚舎時代は、宇髄君と鱗滝君が一緒に色々活躍するのを見るのが、大好きなアニメのヒーローを眺めるような感覚で好きだったので、のちに宇髄君の口から鱗滝君が移籍したのは女子に避けられまくったせいだと聞いて、俺達は平気な顔をしていたから気にしてないんだと思って鱗滝君に真実を教えてあげなかったことをとても後悔しました。
特に…小等部で正統派の美少女、冨岡義勇さんに出会ってからは…。
俺達の学年には胡蝶しのぶさんとか甘露寺蜜璃さんんとか、可愛い子が多い。
でも二人ともメンタルがとても強い感じで、守ってあげたいヒロイン的な感じがないんです。
その点冨岡さんはおっとりと大人しくて、ヒーローにお守りされるヒロインにぴったりなんですよ、これが。
俺達の大好きなアニメ【エルサイア・オデッセイ】のヒロインの巫女姫アリアと同じ黒髪に青い目で、顔立ちも性格もなんとなくそっくりでっ！！
俺達はこの時ほど鱗滝君が男子科に移籍してしまったことを残念に思ったことはありませんでした。
だって、彼は【エルサイア・オデッセイ】でヒロインの恋人のヒーロー、カインにそっくりなわけなのでっ！！
並べたいっ！並べて眺めたい！できれば【エルサイア・オデッセイ】の2人のようにいちゃついて欲しい！！！
…と、まあカイアリ推しの俺らは思ったわけなんです。
なのに…それなのにっ！！
そんなヒロインに危害を加える悪の魔王は何故かいるわけで…
もう見るからに人相が悪い乱暴者、不死川実弥。
こいつは本当にいつもいつも、アリア…もとい冨岡さんに暴言を吐いたり暴力をふるったりするので、カインがいないなら、せめて村人Ａにでもなってヒロインを逃がさなければっ！！と、
「不死川君！女の子を殴ったりするのは良くないよっ」
と颯爽と姫と不死川の間に立ちはだかって……秒で伸されました。
ええ、ええ、俺らはしょせんモブな村人で、魔王と戦うようには出来てなかったんです。
ああ、カイン…もとい鱗滝君さえいれば…！！
そんなことを思いながら、小等部、中等部と、彼らと一緒の俺らに出来ることと言えば、村人らしくヒロインを捕まえようとする悪の大魔王に姫の行方を聞かれた時に、こっそり姫が逃げた方向とは逆方向を指さすことくらいでした。
姫にとっても俺らにとっても暗黒の時代。
しかし、いつだって諦めなければ希望の火は灯るんです！
そう、高等部に進学して3か月ほどたったある日…ヒーローが帰ってきたのです！
それもとても感動的な形でっ！！
ちょっとエルサイアオデッセイが気になってきました(*'ω'*)
返信削除茂部太郎やモブースなど、白モブ君達が登場する時は必ず出てきますもんね😁
削除