きゃあああああぁあーーー!!!!
女子の嬌声が教室に響き渡る。
まるでアイドルのコンサート会場のようだ。
「鱗滝君、げっとだぁああーー!!!」
半数くらいの女子が手を取り合って喜び合う中、不死川や宇髄、それに伊黒など、知人男子達はひらひらと手を振り、甘露寺は
「義勇ちゃん、一緒のクラスで良かったわねっ」
と、義勇に寄り添って一緒に喜んでくれる。
担任に続いて入ってきた男子2人。
クラスの大方の男子はそれを見て、
「あぁ~、今回は女子来ねえのかぁ。可愛い女子だったらよかったのになぁ…」
と言って、
「あんたたちっ!鱗滝君が来てくれたってのに、何ふざけたこと抜かしてんのよっ!!」
「お前らが出て行けっ!!」
と、血走った女子にどつかれているが、当の移籍組の男子は固まっていた。
大騒ぎも手が出るのも別に男子科でもあることだが、声のトーンがとにかく高い。甲高い。
それに驚いていたが、
『大丈夫っ!錆兎は私がちゃんと守るからねっ!』
と、いきなりノートに書き書きし始めて、それを錆兎に見えるようにかざしてくる義勇が可愛すぎて、錆兎は思わず吹き出した。
本当に、本当に自分の彼女はなんて無邪気で可愛いんだろうと思う。
そんな風にいきなり噴き出す錆兎に、女子は
──鱗滝君が笑ったぁ…素敵…
と言いつつも、一部、何故だろうと思ったあたりがその視線の先を追って、義勇のかざすノートにたどり着くと、途端に険しくなる視線。
しかし、普段は内気でおっとりした平和主義者の義勇も、錆兎のことになれば話は別らしい。
睨みつけてくる女子の視線もフンスフンスしながら弾き飛ばす。
教室内が落ち着くのを待っていたらきりがなさそうだ…と、いつもにもましてテンションの高い生徒たちにややあっけに取られていた教師に、
「先生…そろそろ自己紹介、良いでしょうか?
授業時間になってしまいますし」
と、錆兎が声をかけた。
「あ、ああ、そうだな。そうしよう。どちらからにする?」
と、教師に言われて、錆兎は男子科でも親しくしていた友人にちらりとお伺いの視線を送るが、彼に
「この様子じゃ錆兎が終わるまで、俺の自己紹介なんて誰も耳に入らないんじゃない?」
と言われて、じゃあ、俺から…と、教師に一歩譲られて教壇の上に立つ。
一旦後ろを向いて、かつかつかつと小気味いい音を立てて黒板に大きく名を書くと、またクルリと前を振り向く。
「鱗滝錆兎だ。
この学園には幼稚舎から通っているし、去年の中頃までは男子科の生徒会長も務めていたので、そのあたりの活動を通して知っている者もいると思う。
幼稚舎は共学科、小等部、中等部は男子科に通っていたのだが、今回、また共学科に戻ってきた理由の一つは、知っているあたりは知っていると思うが、婚約者の護衛と、勉学の補佐のためだ…」
と、そこまで言い切ったところで、斜め後ろで担任がむせて咳き込んだ。
教室もさきほどまで以上にざわついている。
「先生、大丈夫ですか?」
と、そこで本人のみ非常に落ち着いた様子で振り返り、担任に気遣いの言葉をかけると、担任はどう反応して良いやらと言った感じで
「おまっ…婚約者って…」
と目を白黒させるので、錆兎は
「ああ、夏に彼女の両親にも挨拶をして、法的に問題がない歳になればということで許可ももらいました。。
もちろん、互いに学生ですから、共に学業に邁進することを一番中心に置く、清く正しく節度のある交際をしています」
と、にこりと笑って言う。
それに担任は、
「うわぁ…お前、ほんっとうに絵に描いたように清く正しい学生の見本みたいな奴だよなぁ…」
と、教師としてはそれを推奨すべきではあるものの、あまりに今時の若者らしくないその言葉に苦笑した。
「…というわけで…」
と、教師の方が大丈夫と判断した錆兎はまた生徒たちの方を向き直る。
そして
──静かにっ!!静粛にっ!!
と、腹の奥から出す声に、騒いでいた声が思わずぴたっと止んだところで、まっすぐ前を見据えて宣言をした。
「さきほども少し話したが、当座の目標としては彼女の速やかな学力の向上、そして最終的に100位以内の成績をキープさせて共に産屋敷学園大への進学を目指しているため、勉学に集中できる環境を整えたい。
しかしながら、夏休み前に2度ほど、彼女に対しての嫌がらせおよび嫌がらせ未遂があったとの報告を受けている。
犯人の目星もついているが、ここでやめておくならおおごとにはしないでおくつもりだ。
が、今後同じことを繰り返すなら、各科生徒会と弁護士を通して学校側に正式な調査依頼と処罰を要請するので、覚悟しておいてほしい」
さきほどまでと打って変わってシン…と静まり返る教室内。
錆兎はその前のやりとりなど知らないのだが、朝方の胡蝶の話を聞いていたクラスの生徒の視線は無言で一人の女生徒へ。
その妙な空気に錆兎の横にいたもう一人の移行生、村田が
「お前…それ自己紹介じゃないって。いきなり重いよ、びびるよ」
と、苦笑しつつ場を取り持とうとするが、いきなり教室の中央あたりで視線を浴びている女生徒が1人青ざめて泣き出したので、ぎょっとした顔になる。
しかし、そんな諸々の尻拭いも慣れたもので、
「じゃ、錆兎の自己紹介はこれまでねっ!
村田、自己紹介始めますっ!!」
と、村田はやや強引にそのあとを引き継いだ。
「村田大志ですっ!
もう、錆兎のあとだと、ほんっきで印象に残らないかもしれないけど、小等部から男子科で、今回錆兎に引っ張られて共学科にやってきましたっ。
よく聞かれるけど、髪がサラサラなのは、初恋の子に髪を褒められたのが嬉しくて、それ以来、髪だけは気を使って母親に頼み込んで母親が使っているめっちゃお高いシャンプーとトリートメントを使わせてもらってるからですっ!」
と、男子科のクラス替えの時は毎度おなじみのネタを交えて自己紹介する村田に、一部男子が笑い、一部の女子からは、笑いながらも
「確かにサラサラだね~!どこのシャンプー使ってんの?」
と言う声が飛ぶ。
こうして空気が和らいだところで、担任があとを引き継いで、2人は揃って一番後ろに追加された席に座って授業の開始と相成った。
>『大丈夫っ!錆兎は私がちゃんと守るからねっ』
返信削除あの人見知りで引っ込み思案の義勇が・・・(*_*)
その心意気、原作どおりですご~くいいです!
お互いが自分のためでなくお互いのために
最強になれる関係って憧れます😍💓💓
そう、自分のことだと臆病で泣き虫ですが、錆兎のこととなったら頑張っちゃうのが義勇ちゃんなのです😁💕💕
削除誤字というか変換のミスかと思いますが➡腹の声から出す声に...腹の奥から とかの間違いでしょうか?ご確認ください(^_^;)
返信削除ありがとうございますっ。
削除腹の声ってなんだ、腹の声って💦💦
腹の奥から、ですね。
修正しました。
また何かありましたら、ご報告よろしくお願いします。