清く正しいネット恋愛のすすめ_51_夏祭りの2カップル

──きゃああぁぁ、義勇ちゃん、可愛いわ、愛らしいわっ!
──…蜜璃さんも、すごく綺麗…

同級生同士の女性陣二人組が互いの着物について褒め合っている間、男二人はその横でそちらを気にしながらも初めましての挨拶をしている。

「リアルで会うのは初めてだなっ!改めて、サビトこと、鱗滝錆兎だ。
実は2学期から共学科に移行する手続きを取ったから、同じ科の同級生になる。
ずっと男子科で共学科の諸々は詳しくないから、色々教えてくれると嬉しい」

にこやかにハキハキとそう言って手を差し出すと、伊黒の男性にしては華奢な手をガシっとつかむ錆兎。

甘露寺以外には塩対応というのは自他共に認める伊黒はそれに対して

「伊黒小芭内だ…。共学科のことなら宇髄あたりに聞けばいい。
幼馴染と聞いている……」
と、淡々と答えかけたが、それを遮る

「ええっ?!!!この髪留め鱗滝君のお手製なの?!!
そっかぁ~!だから義勇ちゃんの瞳と彼の瞳の色、両方入ってたりするのねっ!!
羨ましいわぁ!!私も自分と伊黒さんカラーの髪留めとかしてみたいわっ!!」

という、義勇との会話の中で響く甘露寺の声に、さっと握手を交わして放しかけた錆兎の手をグイっと思いのほか強い力で引き寄せて、

「俺と甘露寺の目の色の髪留めを作るなら、色々教えてやってもいい。
できるだけ早くだ!!」
と、身を乗り出してきた。

その変わり身の早さに錆兎は驚きもせず、不快な様子も見せず、
「わかる!彼女の望みは万難を排しても叶えてやりたいよな!
出来れば彼女に完璧に似合う物を与えてもやりたい。
そういうものだろう?伊黒」
と、むしろ大きく頷く。

「お前にもわかるかっ!!そうかっ!!」

「ああ、もちろんだ!
義勇に作ってやったのは摘まみ細工という布で作った花飾りなんだ。
俺が作ってやっても別に良いのだが、どうせなら自分で完璧に甘露寺に似合う物を作ってやりたくないか?」
「やりたいっ!」

「そうだろうっ!なんなら明日にでも作り方を教えるから、うちに来ないか?
派手じゃないものなら学校に付けて行ってもいいし、自分で作れればピンだけじゃなく、髪ゴムやクリップ、なんでも贈ってやれるぞ」
「最高だなっ!
貴様は本当に良い奴だと思っていたんだ!」

…彼女厨の男が2人、思わぬ盛り上がりを見せる。
こんなに男と…いや、甘露寺以外に好意的な様子を見せる伊黒を見たことがない…と、彼女組はそれまでの浴衣の褒め合いから一転、彼氏組に驚きの目を向けた。

それでも…いかに彼女が可愛いかということを熱く語る彼氏たちを見て悪い気はしない。

「これからもWデートできそうねっ」
と、フフッと嬉しそうに笑う甘露寺に、義勇も笑顔で頷いた。

ここに宇髄でも居た日には、──バカップル同盟締結かよ──とでも呟きそうな勢いである。


それでもとりあえず浴衣姿のカップル二組は祭りが開催されている神社へと向かった。

「うわぁ…すごい人ねぇ…」
祭りばやしが響く中、甘露寺がそう言いつつもキラキラした目を食べ物の屋台に向ける。

「りんご飴に焼きそば、フランクフルトも美味しそう!」
と言う彼女に、すかさず
「…買ってくる」
と、伊黒が動く。

「え?え?大丈夫よ?私自分で買ってくるわ」
と、その言葉に慌てる甘露寺だが、

「いや…その格好では動きにくいだろう?
せっかく綺麗に着付けた浴衣だ。俺が綺麗なまま居て欲しいのだから、俺が買いに行く」
と言う伊黒の返答に、きゅん!としたようだ。

「さすが伊黒さん、優しいわ」
と、うっとりとした様子で微笑む。


その横では錆兎が当たり前に
「義勇は?何を先に食いたい?
お前はでも、甘露寺と違って食べるの遅いから、まずは一つにしておけよ?零すから」
と、義勇に聞いて、彼女がう~ん、と悩んだ挙句、
「とりあえず…りんご飴…かな」
と言うと、錆兎は伊黒に金を渡し、
「俺が2人を護衛しているから、すまないが伊黒が買ってきてくれるか?」
と依頼。


それに返ってくる伊黒の返事。

「…小芭内でかまわん。俺も鱗滝ではなく錆兎と呼ぶからな。
りんご飴でいいんだな?
こういう時にもう一人男がいるとなかなか便利でいい」

と、ニコリと笑みを浮かべるのに、女性陣はびっくりするが、錆兎は普段の伊黒のことなど知らないので、宇髄や不死川が散々不愛想な男だと言っていたが、何を持ってそう言っていたんだ?と不思議に思う。


こうして伊黒が大量に買ってきた甘露寺の食べ物で手が塞がっていることに気づいた錆兎が、

「俺は両手が空いていて義勇のことは片手で対応できるから、小芭内のを半分持とう。
お前も片手は空いていないと甘露寺に何かあったら困るだろう?」
と、半分持つことを申し出ると、伊黒は素直にそれを受け入れて

「さすが甘露寺が選ぶ友人の恋人だな。
よく気が付く」
と、錆兎の大きな手に山盛りの焼きそばとお好み焼きとたこ焼きを渡す。

「義勇の大切な友人…ということもあるが、小芭内は彼女を持つ彼氏という意味で俺の先輩だしな。
男として彼女にはどうあるべきかなど、色々と教えてくれ」
と、それに錆兎は笑みを浮かべて言った。



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