清く正しいネット恋愛のすすめ_44_粘着ヒメと嫌がらせ

──テンゲ~ン君、ちょ~っと相談があるんだけど~?

廃黒マコモちゃんは正直おっかない。
笑顔でもおっかない。

別に怒っていなくても対応を間違うとヤバいタイプだ…と、宇髄は自身の所属するギルド【コンコンキツネ】のボス、マコモに対して思っている。


なにしろリアルでもゲーム内と同じく小さくて可愛らしい女子高生なのに、女子科を仕切る生徒会長だったりするのだ。

そんな彼女は従兄弟の錆兎の”影の保護者”を自認。
何故自分で影つけちまうかな?と思いつつも、可愛い弟分のためには確かにたまに黒いので、少なくとも宇髄は納得してしまう。

そんなモンペぎりぎりの姐さんの最近の関心は、その弟分である錆兎の恋愛事情で、ずっと女子が苦手だった錆兎にようやくめぐってきた遅すぎる初恋を全力で絶賛応援中である。

ゆえにその彼女の義勇は現在彼女の保護対象ナンバー2。
2人の恋と安全を守ること…これが真菰姐さんの目下の最優先事項なのだ。


そして…今、そのマコモ姐さんが自分を呼んでいる理由を、勘が良すぎる宇髄はなんとなくわかってしまっていた。

非常に残念ながら宇髄自身も非常に情報網が広い。
そんな彼の情報収集の網に昨今引っ掛かってきたのは、まさにそれ、錆兎と義勇の恋愛に対して障害を与えている存在だ。


2人の恋愛はネットゲームに始まり現実に波及。
今はその両方でいわゆるラブラブ状態である。

元々は宇髄の友人の不死川が義勇に惚れていて追いかけまわしていたりもしたが、色々あって落ち着いたと思ったら、今度はサビトの方がネット内で謎の少女キャラに追い回されているらしい。

そのキャラの名前はヒメ。
出会いは彼女がレジェロを始めた初日だったらしい。
3人固定+サネミで狩りに行く前、競売でいきなりsayでパーティー組んでくれと言われて、固定だからとサネミが答えたら、お前じゃない、自分はサビトと組みたいのだと随分と刺々しい言葉で言われたのだそうだ。

そこで今度はサビトが、固定パーティーで出かけるから無理な事を伝えつつ、初心者の村の案内人よろしく彼女に適したパーティーの組み方を懇切丁寧に教えたらしいが、初心者であることを前面に押し出しながら飽くまでサビトにパーティーを組んでくれというので、他を当たって欲しいということでもう一度だけパーティーの探し方や仲間の見つけ方を説明した。

だが、それでもだめだった。
飽くまで”サビトと”パーティーが組みたいと言い張ってきかない。

だから最終的には自分は無理な事と時間がないことだけ伝えて、返事を待たずにホームポイントにワープすることで逃げたらしい。

まあそこまでは良い。
良くはないが、良いこととする。

問題はその後だ。


何故かそのヒメというキャラの中の人は諦めていなかったらしい。
その後もしつこくメッセージを送ってきたので、サビトは当然のように早々に彼女をブラックリストにいれる。

レジェロはPKは出来ないゲームなのでメッセージなどが送れなくなるブラックリストに入れて交流を絶てば一安心…なはずだったのだが、彼女は一味違った。


最初に会った時はただの電波娘かと思ったが、なんと着々と支持者…もとい、従者を増やしていったらしい。
それは別にいい。

そういうプレイをしたいならそういうプレイが好きな相手を探してやってくれと言ったのはこちらだ。

だが、彼女の目的は従者造りではなかったのか、あるいは、断られたことを根に持っているのか、とにかく初志貫徹をするつもりらしい。

迷惑と言えば迷惑だが、それでもサビト本人を追い回すならまだしも、彼女の思考は、『サビトと組むのに固定の白が邪魔』という方向に行ったようだ。

まずギユウにサビトの固定から出て行くようにと何度もメッセージが来た。
それを最初に相談されたのはマコモで、即ブラックリスト入りを勧められて、彼女をブラックリストに放り込む。

それでもうめでたしめでたしかと思えば、今度は見知らぬ多数のアカウントから、
『ヒメちゃんにサビトを返せ!ブス!』
『ヒメちゃんのナイトを横取りしやがって、ふざけんな!』
などなど、誹謗中傷が届くようになった。

そんないくつかのアカウントに関して運営に訴えれば、厳重注意が行ったらしいが、今度は
『他の人の彼氏を略奪成功しての狩りは楽しいですか?』
などと、言葉が丁寧になっただけのメッセージが届く。

高レベルも低レベルも入り混じっているため、おそらく従者の本垢だけではなく、倉庫垢なども使っているのだろう。

ヒメ本人に苦情を言っても、本人は別に自分が煽ったわけではないととぼけるし、なんなら一時的にでもヒメと一緒に居れば収まるんじゃないかしら?などと、飽くまで善意の第三者としてサビトに自分といるようにと提案してくる始末だ。

そもそもが略奪じゃない、ヒメとパーティーを組んでいたこともなければ彼氏になったことなどさらにないとサビトが従者達に言っても、悪女に惑わされて嘘をついていると言い張って信じない。

彼らの言い分からすると、元々はサビトとヒメがレジェロ婚をしていたのにギユウに騙されて解消。
ギユウが略奪婚をしたというのだ。

ありえない!と言っても、レジェロ婚自体は確かに解消も出来るし、レジェロ婚をした年月日というのを証明するものは何もない。
飽くまで今現在結んでいるかどうかということしかわからない物である。
家に関しても同様だ。

サビトとギユウの周りは当然二人の事を知っているが、あちらはないことないこと言いふらしていて、全く関係のない第三者にまでギユウの悪名を広められつつある。

別にリアルで会えるのだし、無理にレジェロをやる意味もないのだが、だからと言ってこんな風に汚名を着せられてやめたくはない。

自分の事ならまだしも、ギユウに関してはさらに嫌だ…と、サビトは激怒しているわけなのだが、付き合ったことがあるという証明は出来ても、付き合ったことがないという証明は難しい。

とにかくもう、色々どうでもいいから、ギユウに被害が行かないように出来ないか…と、マコモの所に話が来て、サビト以上に激怒したマコモが腰をあげた…ということらしい。

「こんなことで万が一にでも錆兎が義勇ちゃんに振られたら、真菰ちゃん、どんな手を使っても相手を社会的に抹殺して地獄の底までご案内する気満々なんだけどね」
と、ニコニコと笑みのマークをつけながら言うのが怖い。


「えっと…で?相手に負けないくらいの速度で真実を広めろとかそういうことか?」

確かに宇髄は顔が広い。
広めろと言われれば広めることもできるが、それは善意の第三者の陣取りゲームのようなもので、相手の側のいう事を信じた人間に、それが絶対に嘘だと証明できるものではない。

「広めろって言われんなら広めるけどな?」
と言いつつ、そのあたりを指摘すると、マコモは

「ん~、それじゃあ意味ないでしょぉ?
相手が噓つきの粘着女ってことを、鯖どころかこのゲームやってる皆に知らしめないと…」
と、にこにこと笑顔で言う。
そう、笑顔でだ。…怖い……。

「…了解。女王様の仰せには従うってことで…俺に何をしろって?」

「うん、簡単な事だよ?
あのね、この鬼滅ちゃんねるの姫スレの”神”ってテンゲン君だよね?」

え…?!!
テンゲンは青ざめた。

いやいや、確かに前に少しばかり悪ノリして楽しませてもらったが…あ、マコモの事も書いてたな…いや、悪いようなことは書いてねえよな?
と、たらりと冷や汗。

「…あ、いや、それは……」
「うん、別に怒ってるわけじゃないよ?
君は本当によくやった。おかげで真実の証明ができるから。
…もちろん、協力してくれるよね?…否って返事を聞く気はないけど…」

可愛いのに錆兎よりよほど圧がある。
これを断ったら、リアルで女子科生徒会から学校生活が辛くなるレベルの何かをされそうだ…。

ヒメなんかよりよほど恐ろしい…というか、あのバカはわざわざ即死レベルの地雷の上で足踏みを始めちまったな…と、宇髄は相手の未来に少し同情すら覚えつつ、お怒りの女王陛下のお言葉にただひたすらにコクコクと頷いた。



Before<<<    >>> Next(9月10日0時公開予定)


4 件のコメント :

  1. マコモちゃん、頑張って(⋈◍>◡<◍)。✧♡
    錆兎と義勇の平和を守って(^人^)

    返信削除
    返信
    1. マコモちゃんは無敵なお姉ちゃんなので、錆兎と義勇とお祖父ちゃん(鱗滝さん)の平和を乱すものには正義の鉄槌を下す気満々です😁

      削除
  2. ここでかつてのスレが役にたつとは…ヒメがどんな目に合うのかちょっと楽しみです。

    返信削除
    返信
    1. 人を呪わば穴二つどころか、10倍返しされます。
      なにしろヒロインの敵ですから😅💦

      削除