清く正しいネット恋愛のすすめ_36_少女たちの夏、日本の夏

兄弟の多い家の長子つながりでなんとなく関係を修復できそうな二人に安心して、錆兎は分解が終わってあとは片付けるだけの流しそうめんの道具を勝手を知る炭治郎と不死川に任せて、女性陣の方の様子を見に行くことにした。

台所を覗くと、すでに洗い物は終わったらしく、かき氷を食べる暇のなかった真菰と不死川の妹二人と義勇が茶の間でかき氷を食べながら、おしゃべりに興じている。

それを確認後、錆兎は台所に戻って大きめのワイングラスを8つ出し、冷蔵庫の野菜籠を覗いてオレンジとキウイ、それにサイダーとかき氷の残りのシロップを取り出した。

それから冷凍庫で作ってあった水で作った氷の中央にシロップを入れて色付けをして固めた丸い氷を出し、それをグラスに入れて下にシロップを少々、そしてその上からサイダーを注いで、グラスの縁にオレンジやキウイを差して飾る。

それを8つ作ってストローを挿し、デカいトレイに乗せて茶の間へ運んだ。

「真菰、女性陣全員呼んできてくれ。
義勇も不死川家の2人も今日はお疲れ様。
手伝いありがとうな?
あとは少しゆっくりしてくれ」
と、まず3人に色とりどりのサイダーの中から好きなものを選んでもらう。

それに歓声をあげる不死川家妹達。

真菰に呼ばれてカナエと禰豆子と花子、それにことが入って来て、少女たちはテーブルに置かれたドリンクに、同じく歓声をあげた。

「禰豆子、今日は夏休みだって言うのに呼びつけてすまなかったな。
でも手伝い助かった。ありがとうな」
と、頭を撫でると、嬉しそうに
「ううん。錆兄の手伝いなら何でもするから、いつでも呼んで」
と、ほわりと頬を染めて微笑む禰豆子。

それから錆兎は真菰の隣に視線を向けて
「カナエ先輩も助かりました。
せっかく真菰と約束してたのにすみません」
と頭を下げた。

それにカナエは
「ううん。私も流しそうめんとか初めてだったから楽しかったわぁ。
お姉ちゃんだけ楽しんで、妹達に申し訳ないくらい」
と、ふんわりと笑みを浮かべながら言う。

彼女は胡蝶しのぶの姉であり、妹は1人だけなのだが、近所に住んでいる大勢の従姉妹たちの中で一番年長ということもあり、皆のお姉ちゃん役でもあるので、年少者の扱いにはとても長けていて、今回は本当に大活躍をしてもらった。

そんな中、
「あ~、手伝い組には、礼になるかはわからんが、皆が来る前に急いでちょっとしたものを用意したから、良ければもらってやってくれ」
と、錆兎は戸棚から小さな袋を出してきた。

「錆兎、相変わらず器用だよねぇ。朝の短い時間でよくこの数作ったよね」
と、まず真菰が袋を開けて、ピンクと白と赤の花びらの摘まみ細工の花がついたピン止めを出すと、そのまま髪につける。

「うっわぁ~!可愛いっ!!」
と、それを見て、不死川姉妹が揃って自分達の袋を開けて、中を確認して嬌声をあげた。

「え?え?可愛いっ!めっちゃ可愛いっ!!あたし、オレンジっ!寿美ねえのは?!」
と、はしゃぎながら、真菰と同じく即オレンジと白の花のピンをつける貞子。

「あたしのは白…と黄色。ほら、」
と、寿美もその場でつけて見せる。

禰豆子はピンクの花に二枚の葉のついた髪ゴムで、
「禰豆子はよく手伝いをするからな。その時に髪が落ちないようにと思ってゴムにしてみた」
と言う錆兎の言葉に、
「…嬉しい……錆兎兄、ありがとう」
と、それをぎゅっと胸元に抱きしめた。

カナエは大きめの花にビーズ細工の蝶が止まっているバレッタ。

「カナエ先輩には…姉妹両方に世話になっているし、もしかしたら…ちょっと今後世話になるかもしれないから、賄賂で」
と、皆がその細かさと完成度に注目する中、錆兎が苦笑しつつ言う。

「すごく素敵…」
と、カナエもソッと今つけている髪留めを取って付け替えて、真菰と一緒に笑いあった。

そんな中で自分も…と袋を開けようとする義勇に錆兎が
──すまないが…義勇はあとで見てくれ。
と、耳打ちをする。

何故?と義勇が小首をかしげると、
──他と少し差があるから……元々渡せればと思って作ってたから、かけた手間暇が…な
と、視線を逸らして言う錆兎の耳が赤い。

それに釣られて義勇も顔を赤くして、
──うん…わかった。
と、こっくりと頷いた。


と、そこでみな楽しく終わる…と、思っていた錆兎はやはり一人っ子だった。
不穏な空気をいち早く感じた真菰がヒクリ…と引きつった笑みを浮かべる。
次に気づいたのはカナエで、隣で妹が泣き出す寸前、禰豆子も気づいた。

うわあああ~~~ん!!!!
と、泣き出したのは不死川家3女のことと、竈門家次女の花子。

「「お姉ちゃんたちだけずる~~いぃぃ~~!!!!!」」
と号泣する二人。

それに不死川姉組は
「だってことは手伝ってないじゃないっ!あたしたちは食器出したし運んだし?
洗い物だってしたも~ん!!
これは手伝いしたからもらったんだよ!!」
と、容赦なく言い、禰豆子はそこまで妹を突き放すことも言えずにオロオロしているものの、でも自分のを渡すのは絶対に嫌とばかりにしっかり握りしめている。

それに見かねた真菰が
「あ、じゃあ、花ちゃんには真菰ちゃんのあげるっ」
と、慌ててピンを髪から外して差し出すが、花は
「それは真菰ちゃんのだもん~~!!花のは?!花に作ってくれたのがいいっ!!」
と、泣きながら首を横に振った。

そこで困り果てた真菰は、なんとかしなさいよ!とばかりに錆兎を睨む。
睨まれても錆兎は
「これは一種のご褒美だからな。
褒美をもらえるようなことをした者だけもらえるんだ」
と、平然と言い放った。

え?え?えええ???
と、その返答に驚く真菰とカナエ、それに義勇。

禰豆子は今、お姉ちゃんである自分と、大好きな相手からの贈り物を手放したくない女の子である自分の狭間でそれどころではないようだ。

そして、錆兎の言葉にうんうんと頷くのは不死川姉組。


しかし、錆兎の言葉はそれで終わりではなかったらしい。

少し身をかがめて号泣する二人に視線を合わせると、
「…だから、な」
と、続ける。

「今度二人とも夏休みの宿題を持って集合だ。
遊びじゃなくてちゃんと宿題をやって終わらせたら、2人にも褒美に作ってやる。
やるか?」
「「うん!やるっ!!」」
と、2人そろって袖口で涙をぬぐって錆兎の言葉に頷いた。

「よし!じゃあ二人とも、炭治郎と実弥に連れてきてもらえるよう、家でもいい子にしないとな」
と言ってやると、2人共に、お手伝いもちゃんとするっ、と、口を揃える。

それに、いい子だなと、頭を撫でてやると、錆兎は
「じゃあ、希望を聞いておいてやる。
ピンが良いか、髪ゴムがいいか、それともブローチでもいいぞ。
花の色も好きな色を言え」
と言うと、2人はキラキラした目をして真剣に考え込み始めた。

そうして二人それぞれの希望を聞くと、錆兎はもう一度二人の頭を撫でて
「わかった。用意しておく。約束な?」
と、それぞれと指切りをしたあと、

「じゃあ、真菰、あとは任せた。
俺は実弥に貸す課題図書の本を出した後、年少男子組の方の宇髄と炭治郎と玄弥を手伝ってくる」
と言って、茶の間を出て行った。





2 件のコメント :

  1. 義勇さんのは明日にはわかりかすか?
    スゴ~ク知りたいです(^人^)

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    1. 義勇の分については、明日ではありませんが、後日45話でおばみつとWデートでお祭りに行く回があるんですが、その時に描写があります😊

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