しかし、いざ始めてみると、これが意外に面白い。
盾役、攻撃役、回復役の各ジョブの役割がしっかり分かれていて、それぞれの役割をきっちりこなさないと速やかに狩りを行うのは難しい。
特に錆兎が選んだ盾役はナイトのジョブしかなれなくて、その立ち振る舞いによって狩りの安全度、しいては狩れるモンスターの強さも変わってくるとても重要で難しいものだ。
なのでナイトは絶対数が圧倒的に少ない。
しかしその分、武器が強ければなんとかなる攻撃役と違い、自分の工夫次第で出来ることの範囲がかなり変わってくるため、色々考えて行動するのが楽しかった。
装備なども絶対数が少ないため集めやすいし、パーティーにも入りやすい。
それでなくとも同ジョブが少ない中で、工夫して動けば、優れたナイトとして覚えてもらえて、次も優先して誘ってもらえる。
キャラは友人が出来て会おうとなった時に違和感が少ないようにと、リアルの自分に近づけた容姿にした。
もちろん頬に傷もつけてみたが、ゲームの中では気にしたり怯えたりする人間はいない。
中の人間も同じ性別とは限らないが、可愛らしい女性キャラでも気軽に接してきてくれるし、思う存分守ってやれる。
誰にも怯えられたり避けられたりしない。
とても楽しい。
もちろんそれでも過度にのめり込むことなく、予習復習、鍛錬と、やることをやった上でゲームは21時から24時まで、長くても3時間。
その範囲内で効率的にキャラの強化に勤しむ。
レベル上げやレアモンスター討伐など、パーティーに入ってやるようなことを1日やったら1日は素材狩りや簡単なクエストなど、一人でできることをやる。
パーティーの時は3時間になる時もあるが、1人で行動する時は1,2時間で切り上げ。
ということで、2日を3セットで6日。
1日は休み。
そんなペースでも前述のように元々絶対数が少ないため装備も集めやすくパーティーにも入りやすいため、それなりにレベルもあがり、装備も良い物が揃って行く。
そうなると、1人で狩れる敵も増えて、より資金や装備に余裕が出てきた。
そして、運命の日…
その日は、1人で素材狩りをする予定の日だった。
そのあたりは自分よりもレベルの高いプレイヤーのことは襲ってこない敵がほとんどで、敵の強さは先日Lv60でカンストしたばかりのサビトよりは低いレベル50。
もちろんこちらから攻撃を仕掛ければ同族がワッとリンクして襲ってくるが、それでも防御力に優れたナイトならほぼほぼダメージを受けずに倒せる程度のものである。
そのポワポワマッシュルームと言うキノコのモンスターを倒し続けていると、時折その上位種であるキラキラマッシュルームがポップして、それを倒すと稀に、ポイズンナイフという忍者とシーフが装備可能な、毒を付与する短剣を落とす。
もちろんキラキラマッシュルームを倒している間もポワポワマッシュルームは普通に沸いて出るわけなのでリンク上等の狩りになるということもあり、それをソロで狩れるのは、少なくともポワポワマッシュルームに殴られ続けて放置しても支障のない、ナイトだけだ。
その短剣は自分のジョブでは装備できなくても、売ればそこそこの値段で売れるので、キラキラマッシュルーム狩りはナイトにとってはちょっとした資金稼ぎになる。
よしんばそのナイフをドロップしなかったとしても、ポワポワマッシュルームがこれはかなりの高確率で落とす”キノコの傘”は、調理の合成で使う。
消耗品の素材ということもあり売るには特に高額ではないものの、そのうち調理の合成をあげたくなったら大量に使うので、素材狩りには良い場所だ。
こうしてサビトは森でポワポワマッシュルームを殴りだす。
敵はリンクしてワラワラ集まってくるが、打たれ強いナイトのサビトには痛くもかゆくもない。
一気には倒せないが、自分のヒットポイントも減らないので、一体一体地道に倒しつつ、攻撃をしたり攻撃を受けたりすると徐々に貯まっていくスペシャルポイントがたまれば、必殺技で一気に攻撃する。
そうやって入り口から少し進むと、どうやら他にも戦闘しているパーティーがいるらしい。
戦闘音が聞こえて来た。
レベル上げ目的のパーティなら、素材狩りのために敵を枯渇させたら気の毒である。
相手のレベルによっては今日は狩りはやめて引き上げようか…そんな風に思ってそちらの方を見に行ってみて、息をのんだ。
「タンジロウ!俺をPTに入れろっ!!」
と、チャットで打ちつつ、とりあえずリンクしている敵に片っ端から【挑発】を入れて取っていく。
その間にも敵に囲まれている少女キャラと敵の間に自分の体を割り込ませ、敵の攻撃を防いでいった。
やがて飛んでくるパーティーの誘い。
それを受けると、サビトは即、パーティーの特定のキャラのダメージを自分が代わりに受けるタンクのスキル、【まもる】を発動して、少女をかばった。
そしてサビトが少女を完璧に守りながら敵のヘイトを自分に固定すると、タンジロウはガンガンと敵を倒していく。
もちろんサビト自身もその間に敵を倒していくが、やはりアタッカーの方が殲滅は早い。
他といるとそれが若干不満だったりもしたのだが、今この状況では、自分がタンクをやっていて本当に良かったと思った。
こうしてすべての敵を倒し終わると、3人して森の外に移動することにする。
まだレベルがいかにも低そうな少女にすぐ【まもる】を発動できるように一応すぐ後ろにいてくれるように指示すると、少女はこっくりとうなづいて、サビトの真後ろに隠れるようにトコトコとついてきた。
そして森の外に出ると、サビトは少女を振り返った。
ほぼ実際の自分のサイズに合わせた大きさのサビトのキャラより頭一つ分以上小さく、真っ白な手足はあくまで華奢だ。
少し長めの漆黒の髪には青い薔薇をかたどった飾りのついた繊細なサークレット。
長い睫毛の下の猫のように丸く大きな目と同じ色合いだ。
「ありがとうございました…。助かりました」
と、手を合わせて胸元に寄せて、首をちょこんと傾げる様子はとても可憐で愛らしい。
しかしそこは幼稚園時代から、愛らしい者からは怯えられて嫌われる…という感覚が身につきすぎていて、ついつい距離を取りたくなってしまう。
なので、
「いや、無事で良かった。じゃあっ!」
と、即立ち去ろうとすると、
「待ったっ!!サビト、待ったーー!!!」
と、タンジロウが慌てて引き留めてきた。
そう言えば…白魔導士の少女を意識しすぎて、タンジロウのことをすっかり忘れていた。
今更ではあるが、そのあたりは指摘せねばなるまい。
そう気づいてサビトは足をとめて
「ああ、タンジロウ。お前もこのゲームしてたんだな。
で?なんだ?」
と、タンジロウを振り返った。
そこで、炭治郎から
「サビト、頼みがあるんだが、いいだろうか…」
と、切り出されて
「ああ、構わんぞ。
そちらの白魔導士は良いのか?
それとも、彼女のイベントか何かでタンクが必要なのか?」
そして森の外に出ると、サビトは少女を振り返った。
ほぼ実際の自分のサイズに合わせた大きさのサビトのキャラより頭一つ分以上小さく、真っ白な手足はあくまで華奢だ。
少し長めの漆黒の髪には青い薔薇をかたどった飾りのついた繊細なサークレット。
長い睫毛の下の猫のように丸く大きな目と同じ色合いだ。
「ありがとうございました…。助かりました」
と、手を合わせて胸元に寄せて、首をちょこんと傾げる様子はとても可憐で愛らしい。
しかしそこは幼稚園時代から、愛らしい者からは怯えられて嫌われる…という感覚が身につきすぎていて、ついつい距離を取りたくなってしまう。
なので、
「いや、無事で良かった。じゃあっ!」
と、即立ち去ろうとすると、
「待ったっ!!サビト、待ったーー!!!」
と、タンジロウが慌てて引き留めてきた。
そう言えば…白魔導士の少女を意識しすぎて、タンジロウのことをすっかり忘れていた。
今更ではあるが、そのあたりは指摘せねばなるまい。
そう気づいてサビトは足をとめて
「ああ、タンジロウ。お前もこのゲームしてたんだな。
で?なんだ?」
と、タンジロウを振り返った。
そこで、炭治郎から
「サビト、頼みがあるんだが、いいだろうか…」
と、切り出されて
「ああ、構わんぞ。
そちらの白魔導士は良いのか?
それとも、彼女のイベントか何かでタンクが必要なのか?」
と、答えると、続いて依頼されたのは、いかにも気が優しくて面倒見の良い炭治郎らしいものだった。
彼女、白魔導士のギユウの中の人は炭治郎が小等部で世話になった本当の女の子らしい。
もし彼女が自分のようにリアルの姿を模してキャラを作っているのだとしたら、かなり愛らしい少女である。
そう思ったら、その時点で錆兎はまた、少し距離を置きたくなった。
…が、次の説明で思いとどまる。
この小さくて華奢な愛らしい少女に対して、暴力をふるい暴言を吐く同級生がいて、そいつが同じゲームをやっているので、絡まれないように自分達と固定パーティーを組んで守って欲しいと言うのだ。
女子に暴言どころか暴力まで?!
…と、女の子を怖がらせたくない…と言うだけの理由で共学科から男子科へと移った錆兎は内心激怒する。
女性は守るものであって、力の強い男の自分達が無意味に暴力をふるって危害を加えるなど万死に値する!!
そんな事情を聞いたらもう、断るなどと言う選択肢は錆兎にあろうはずがない。
モンスターに対してだけではなく、その男の風上にもおけない輩たちに対しても鉄壁の盾になってやる!!
そう決意して、錆兎はその炭治郎の願いを受け入れた。
格好いいのになぜか...脳筋の文字が浮かぶ錆炭兄弟弟子(*´ω`*)
返信削除この次の回ではもっと脳筋になります(^o^)
削除