清く正しいネット恋愛のすすめ_4_白姫ギユウ爆誕!

「炭治郎、今のは魔法?あ、あれ可愛いな?え?敵なのか?」


一学年上の悪の魔王、不死川実弥に騙されてオンラインゲームをやることになった義勇。

炭治郎はそれを守るべくスマホ片手に色々と教えながら、今日は憧れの女性と一緒にゲームを楽しんでいる。



最初のキャラ作成の時だけは一度作ると容姿を変えられないため、後悔のないキャラクタになるようにと、自宅に招いて一緒に作った。

彼女と同じ黒髪に青い瞳。色白で華奢な美少女キャラ。
実物の義勇を隣に見ながら、限りなく彼女に似せるため微調整に2時間もかけた炭治郎渾身の作である。

義勇からゲームをやる話を聞く前から、いつか一緒に出来る日がくるかも…と信じて、ひたすらダンジョンにこもって揃えたレアドロップの魔力増幅のアクセサリー、サファイアシリーズをティアラ、イヤリング、腕輪、アンクレットまで一式。

そこまでそろえていたので、今回、義勇が本当にやってくれるということが分かったら、やることはもう一つ。
現ナマつぎ込んで服のための課金ガチャ(くじ引き)だ。

そして貯め込んだ小遣いをつぎ込んで運良く出たウンディーネのドレス。
この流れる波を思わせる繊細なドレープが美しいブルーのドレスを身に着けさせれば完璧である。


義勇さんのために頑張りましたっ!と、グッ!とこぶしを握り締めると、アイテムの入手難易度を知ったら青ざめそうではあるが、そのあたりは全く知らない義勇はただそのビジュアルを見て

「ありがとう。すごく可愛いな。これで遊ぶのが楽しみだ」
と、ふわりと笑顔をみせてくれた。


ああ、この笑顔をみれたなら、ここまでの苦労なんて吹っ飛んでしまう。

そんな風に炭治郎が幸せをかみしめていると、義勇は

「じゃあ…やってみるか。とりあえずどうすればいい?」
と、尋ねてくるので、炭治郎は一通りのジョブの説明をする。


「ジョブは大雑把にいうと、タンク、アタッカー、ヒーラーに分かれます。
タンクは自らが盾となって敵のヘイトを取って仲間を守るジョブです。
アタッカーは盾からヘイトを奪わないように調整をしながら攻撃。
ヒーラーは回復ですね。
俺は剣士なのでアタッカー枠です。
義勇さんなら…後方から魔法で回復支援する白魔導士あたりですか?」

「ああ、うん。それがいい」
と、義勇は最初の村を出るのに行かなければならない職業選択の神殿に足を踏み入れ、白魔導士の部屋に入って確定を押した。

すると部屋が光ってディスプレイの向こうの義勇のキャラがクルクル回る。

そして、ヒール、キュアーという、体力回復と毒の回復の、レベル1から使える二つの魔法が義勇のキャラのスキル欄に追加された。

そうして、神官たちに祝福を受けながら神殿を出ると、普通なら装備をそろえる所だが、このゲームでは最初に神殿から各ジョブに合わせたLv1の装備を贈られて身につけているため、即冒険に出発できる。


こうして完成したキャラは、攻撃や防御に関する実質的な装備は神殿から贈られる初期装備だが、実際の攻撃力や防御力とは別に、効果は全くないが外見が変わるドレスを身につけているため、ほとんど廃プレイヤーのセカンドキャラのようだ。

だが、中身はぴっかぴかの新人白姫。
楽しそうにあたりを走り回ったりジャンプしたりしている様子は大変愛らしい。


そこまででだいぶ時間が経ってしまったので一旦は解散。
あとは夜に義勇と互いの家でログインして一緒に遊ぶ約束をして別れた。


そして夜。

初心者の街にいて、万が一にでも悪の魔王に待ち伏せされて姫君を拉致されては大変なので、炭治郎はログアウト前にギユウを村から少し離れた街に移動させて、そこで待ち合わせの約束をしていた。

向こうは炭治郎が協力しているとは知らないはずなので、よもや初心者の義勇がそこまで辿り着いているとは思っても見ないだろう。


それでも念のため、

──もしログインした時に俺より先に不死川さんに見つかったら速攻ログアウトして俺に電話下さい。
と、義勇にはそう言い含めておいた。


そして夜…用心に用心を重ねただけあって、不死川には見つからずに無事合流。

さあ、これからどうするか…と、炭治郎が悩みつつ、念のため

「義勇さん、行きたい所とかやりたい事とかありますか?
どんな感じの…とおっしゃって頂ければ俺が探しますけど…」
と、聞くと、義勇は言った。


「あの…夕方、炭治郎が最初に見せてくれた場所、あそこに行きたい!」

…とっても可愛い場所だったから…と、画面越しなのになんだかウキウキと嬉しそうなのが伝わってくるような感じだ。


なるほど。確かに、森の中に愛らしいビジュアルのキノコがいっぱいという、女の子が好きそうな可愛らしい場所だ。

だが、問題は…義勇のキャラのレベル。

あそこのキノコはレベル50のモンスターで、自分よりも強いキャラにはこちらから攻撃しない限り反応しないが、自分よりも弱いキャラのことは襲ってくる。

すでにレベルが58とカンストの60間近の炭治郎のキャラは良いが、まだレベル1のギユウのキャラは確実に絡まれるだろう。

1体なら普通に倒せるが、集団で襲ってこられた時に、殴る以外ではヘイトを取れない剣士の炭治郎ではギユウを守り切るのは難しい。


「俺は行くのは全然かまわないんですけど…」
と言いつつそのあたりの事情を説明すると、義勇は

「私はどうせレベル1だから、死ぬことによるデスペナルティで経験値が減っても全く問題がないし、炭治郎が良いなら…」
と、それでも行ってみたいと言ってきた。

例えゲームのキャラとはいえ、ギユウを死なせるのは心苦しい。
そんな思いはあるものの、ここで義勇をがっかりさせたくないというのもまた事実で…


「わかりましたっ!二人で景色を楽しんだあと、潔く死に戻りしましょうっ!」
と、結局二人でマジックフォレストに出発した。


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