それは唐突な呟きだった。
錆兎が仕事を終えて戻ったため義勇のお守りを終了。
宇髄の部屋のリビングで好物のおはぎと共に緑茶を飲んでいる最中の事であった。
特に高級というわけではない、シンプルで頑丈なお気に入りの専用の湯呑みで煎茶をすすっていた実弥が顔をあげた時に宇髄が唐突に呟いた言葉がそれだ。
ロミオとジュリエット…そんな言葉を自分が…しかも宇髄から投げかけられるなんてことは一生ないだろうと思っていた実弥は目をぱちくりする。
「唐突だなァ?」
「…でも、そうだろ?」
「あ~、まあそうだなぁ。
相手を死なせるくれえだったら離れた方がいいだろうし、離れてても自分が生きてりゃあ相手が生活に困った時に金くらい送ってやれるしなァ」
と、実弥の言葉はどこか保護者視点だ。
まあ、6人の弟妹の兄ちゃんとして生まれ育ったのだから仕方がない。
そんなすべての家族を失ってもなお消えない長男気質を微笑ましく…しかしやや切なく思いながら眺めていると、実弥は
「で?いきなり何故そんな話を?」
と、不思議そうに聞いてくる。
宇髄はシャララっとしてそうでいて、実は実弥達3人の中で一番の現実主義者だ。
突然こんなことを言い出すのにも意味はあるのだろう。
そう思って聞くと、宇髄は自分用にコーヒーをいれたなんだか高級そうなカップに視線を落として少し考え込むように口を閉ざした。
そうして伏し目がちにするとしゃらくさいほど長い綺麗なまつげが妙に目立つ。
本当に美しい顔をしている男だが、その顔に似合わず上背もあって筋肉隆々だ。
というか、腹立たしい。
諜報部のくせに何故198cmもありやがる。
錆兎も地味に185cm。
実働部隊の自分が179cmと3人の中で一番小さいというのは何か間違ってるだろう!
そんないつも思っていることをまた思って、チッと舌打ちをする実弥に小さく笑って、宇髄は
「いや、俺ならな、その辺は上手くやるというか…
離れて会えねえなら死んでんのと同じ気がする人間なんでなぁ…。
なんとか一緒に居られねえか画策して、ダメならみんなであの世行き選ぶ気がするんだが…」
と言う。
ああ、宇髄らしい、と実弥も思って
「だろうなぁ。
お前だったらそうすんだろうな」
と、同意して頷いた。
そんな実弥の反応に宇髄はどうやら本題らしき話題に入った。
「錆兎だったら…あれだよな。
相手には言わねえで全部自分が被って相手を生かして自分が死にそうだよな?」
どこか探るような宇髄の声音に、実弥は
「あ~、やっぱ本題はそれかよ。
錆兎がそういうタイプなのは否定はしねえけどなぁ?
で?何が言いてえんだ?」
と、まどろっこしさにため息をつく。
「ああ、こっからはとりあえず俺とお前だけの秘密な?」
「わかってっから、早く話せ」
「はいはい。つまりな、好きで死ぬんだったらそれはそれでいいと思うわけだ、俺自身は」
「ぜんっぜん話が見えねえ。わかるように話せぇ。
何に巻き込みてえんだ?」
相手を死なせるくれえだったら離れた方がいいだろうし、離れてても自分が生きてりゃあ相手が生活に困った時に金くらい送ってやれるしなァ」
と、実弥の言葉はどこか保護者視点だ。
まあ、6人の弟妹の兄ちゃんとして生まれ育ったのだから仕方がない。
そんなすべての家族を失ってもなお消えない長男気質を微笑ましく…しかしやや切なく思いながら眺めていると、実弥は
「で?いきなり何故そんな話を?」
と、不思議そうに聞いてくる。
宇髄はシャララっとしてそうでいて、実は実弥達3人の中で一番の現実主義者だ。
突然こんなことを言い出すのにも意味はあるのだろう。
そう思って聞くと、宇髄は自分用にコーヒーをいれたなんだか高級そうなカップに視線を落として少し考え込むように口を閉ざした。
そうして伏し目がちにするとしゃらくさいほど長い綺麗なまつげが妙に目立つ。
本当に美しい顔をしている男だが、その顔に似合わず上背もあって筋肉隆々だ。
というか、腹立たしい。
諜報部のくせに何故198cmもありやがる。
錆兎も地味に185cm。
実働部隊の自分が179cmと3人の中で一番小さいというのは何か間違ってるだろう!
そんないつも思っていることをまた思って、チッと舌打ちをする実弥に小さく笑って、宇髄は
「いや、俺ならな、その辺は上手くやるというか…
離れて会えねえなら死んでんのと同じ気がする人間なんでなぁ…。
なんとか一緒に居られねえか画策して、ダメならみんなであの世行き選ぶ気がするんだが…」
と言う。
ああ、宇髄らしい、と実弥も思って
「だろうなぁ。
お前だったらそうすんだろうな」
と、同意して頷いた。
そんな実弥の反応に宇髄はどうやら本題らしき話題に入った。
「錆兎だったら…あれだよな。
相手には言わねえで全部自分が被って相手を生かして自分が死にそうだよな?」
どこか探るような宇髄の声音に、実弥は
「あ~、やっぱ本題はそれかよ。
錆兎がそういうタイプなのは否定はしねえけどなぁ?
で?何が言いてえんだ?」
と、まどろっこしさにため息をつく。
「ああ、こっからはとりあえず俺とお前だけの秘密な?」
「わかってっから、早く話せ」
「はいはい。つまりな、好きで死ぬんだったらそれはそれでいいと思うわけだ、俺自身は」
「ぜんっぜん話が見えねえ。わかるように話せぇ。
何に巻き込みてえんだ?」
どう聞いても単なる人物講評ではないようだ。
何か考え込むようにマグに顔をうずめる宇髄に一応そう言って諦めのため息をつく実弥。
伊達に長い付き合いではない彼の理解は正しかったらしい。
案の定宇髄は
「すごく好きあってて相手を生かすために自分が犠牲になるって生き方は俺はやりたくはねえけど、別にしたい言うならいいと思うんだわ」
と、やはり実弥の疑問などこれっぽっちも気にすることなく繰り返した。
しかしそこは幼馴染。
決して疑問に対する直接的な答えではないものの、次の
「だけどな、それが好きあってたわけじゃなくて、好きなふりされてただけの相手だったら嫌だろ?
錆兎自身はいいかもしれねえけど、付き合い長い仲間としてはなんとなく嫌なわけだ」
という言葉で実弥は宇髄の言葉の意味をを理解した。
「あー…義勇の事かァ?
お前ぜんぜん疑ってるように見えなかったけど、実は疑ってたのかァ?」
連れてきた当初からそんなそぶりを微塵も見せなかったが、宇髄は元々感情を隠すことに関しては非常に長けている。
錆兎にはもちろん、実弥にもわからぬよう巧妙に気持ちを隠していたと言われても納得できる気はした。
そんな事を思いながらも、実弥はこれは完全に雑談ではないらしいと判断して湯呑みを置くと、改めてきちんと宇髄に向き直った。
それに対して宇髄から
「んー、95%は疑ってねえよ?」
と微妙な返事が返ってくるのに、実弥は眉間に手を当てて考え込んだ。
そしてしばらく考えて
何か考え込むようにマグに顔をうずめる宇髄に一応そう言って諦めのため息をつく実弥。
伊達に長い付き合いではない彼の理解は正しかったらしい。
案の定宇髄は
「すごく好きあってて相手を生かすために自分が犠牲になるって生き方は俺はやりたくはねえけど、別にしたい言うならいいと思うんだわ」
と、やはり実弥の疑問などこれっぽっちも気にすることなく繰り返した。
しかしそこは幼馴染。
決して疑問に対する直接的な答えではないものの、次の
「だけどな、それが好きあってたわけじゃなくて、好きなふりされてただけの相手だったら嫌だろ?
錆兎自身はいいかもしれねえけど、付き合い長い仲間としてはなんとなく嫌なわけだ」
という言葉で実弥は宇髄の言葉の意味をを理解した。
「あー…義勇の事かァ?
お前ぜんぜん疑ってるように見えなかったけど、実は疑ってたのかァ?」
連れてきた当初からそんなそぶりを微塵も見せなかったが、宇髄は元々感情を隠すことに関しては非常に長けている。
錆兎にはもちろん、実弥にもわからぬよう巧妙に気持ちを隠していたと言われても納得できる気はした。
そんな事を思いながらも、実弥はこれは完全に雑談ではないらしいと判断して湯呑みを置くと、改めてきちんと宇髄に向き直った。
それに対して宇髄から
「んー、95%は疑ってねえよ?」
と微妙な返事が返ってくるのに、実弥は眉間に手を当てて考え込んだ。
そしてしばらく考えて
「えっと…それは……」
と結論を出そうとすると、
と結論を出そうとすると、
「そうそう。5%はな、疑ってんだよ」
と、あちらは実弥の考えなどお見通しとばかりに答えようとした言葉を先に言ってしまうのでため息だ。
しかも次からは話がどんどん進んでいく。
と、あちらは実弥の考えなどお見通しとばかりに答えようとした言葉を先に言ってしまうのでため息だ。
しかも次からは話がどんどん進んでいく。
「ほんでな~気になってんだが、義勇は何もないにしては自分がスパイじゃないかって事にこだわりすぎじゃね?
かといってじゃあスパイだったとしたら疑われてもないのに騒ぎ立てるのは藪蛇だろ?」
「ああ…そうだなァ?」
何が言いたいのか全くわからない。
が、そこで質問をしても絶対に答えが返っては来ないのはわかっているので、相槌を打つほかない。
なので
「それで?」
と、ただ促すにとどめると、宇髄はまた話を進める。
かといってじゃあスパイだったとしたら疑われてもないのに騒ぎ立てるのは藪蛇だろ?」
「ああ…そうだなァ?」
何が言いたいのか全くわからない。
が、そこで質問をしても絶対に答えが返っては来ないのはわかっているので、相槌を打つほかない。
なので
「それで?」
と、ただ促すにとどめると、宇髄はまた話を進める。
「あのな、俺は諜報部だから色々と情報がはいってくんだけどな…」
一見とてつもなく話が飛んでいる気がするが宇髄の中ではおそらくちゃんとつながっているのだろう。
そのあたりは誰にわからなくても誰よりも一緒に過ごしてきた実弥にはよくわかるし、あえてつっこみも相槌も入れずに黙って次の言葉を待つ。
すると宇髄は当たり前にさらに先を続けた。
「そのなかで聞いたことがあるんだが、西は一般人にスパイ登録させとくって言う制度があるらしいんだわ」
一見とてつもなく話が飛んでいる気がするが宇髄の中ではおそらくちゃんとつながっているのだろう。
そのあたりは誰にわからなくても誰よりも一緒に過ごしてきた実弥にはよくわかるし、あえてつっこみも相槌も入れずに黙って次の言葉を待つ。
すると宇髄は当たり前にさらに先を続けた。
「そのなかで聞いたことがあるんだが、西は一般人にスパイ登録させとくって言う制度があるらしいんだわ」
「ああ、草の事かぁ?」
「なんだ、知ってんのか」
「なんだ、知ってんのか」
「ま、聞いたことがある程度だァ。
で?義勇がそれじゃないかって事か」
で?義勇がそれじゃないかって事か」
「スパイだとしたら…だな。
草登録しておくと微々たるもんだけど給料でるらしいし、それ目当てにまだなんにもわからねえ生まれたての自分の子を登録する親とかもいるらしいぜ?」
「なるほど…じゃあ義勇が草かどうかを調べてみると……」
草だったらどうするんだろう?とか思いつつも口にした実弥のその言葉を、宇髄は
「ああ、草かどうかはどうでもいいんだよ」
と、あっさり否定する。
草登録しておくと微々たるもんだけど給料でるらしいし、それ目当てにまだなんにもわからねえ生まれたての自分の子を登録する親とかもいるらしいぜ?」
「なるほど…じゃあ義勇が草かどうかを調べてみると……」
草だったらどうするんだろう?とか思いつつも口にした実弥のその言葉を、宇髄は
「ああ、草かどうかはどうでもいいんだよ」
と、あっさり否定する。
「あぁ?…じゃあなんでその話出したんだぁ?!」
と、さすがにあまりのわけのわからなさに実弥が脱力してみせると、宇髄は当たり前のように言った。
「だから言っただろ。
錆兎の事を騙そうとしてるわけじゃなきゃ別にそんなんどうでもいいんだよ」
「…悪い…俺ァ話についていけてねえ。
お前けっきょく何が言いたいんだァ?」
「だからな、草みたいな形でスパイになるつもりもなくてならされちまってるケースもあるし、義勇がスパイっぽくないとしても、絶対にスパイっていう身分じゃないって言いきる事はできねえだろ。
てことでな、重要なのは二つだ。
一つは義勇が草でも草じゃなくても錆兎に対して騙して危害加える気があるかどうか。
あったら錆兎から引き離さないとダメだし、なければ義勇は何があっても錆兎のために守ってやらないとダメな人間だ。
で、本当にに草だったとしてもなるつもりはなくてなっちまってて、錆兎に危害を加えたくねえって思ってるなら、義勇が草だって事は隠しとおさなきゃなんねえ」
「…理屈としてはわかったけどなァ、どうやって?」
「そんなん簡単じゃね?
義勇がその気になったら錆兎を殺せるような場面作って、殺さなきゃ今後誰かがなんか言ってきても、殺す気だったらあの時に殺してただろって言えるだろ。
ついでにな、義勇の方にも他のみんなにも錆兎にとっても義勇は絶対に必要で亡くしたらとんでもない事になるって事を思い知らせてやったらいんじゃね?って思うんわけだ」
「……そんな都合の良い状況をどうやって作るんだよ」
「んーーお前が協力してくれたら出来るんだけど…」
そこでじ~っと見つめられて、実弥は後ずさった。
ああ、これ無茶言う前の宇髄だよなァ……
と、もう軍に入って数年もの間に培った経験がそう告げている気がする…。
しかし…こうなるともう蛇に睨まれたカエル状態だ。
逃げられる気がしない。
「ま、失敗したら一緒に中央にでも逃げて貯め込んだ金で畑でも買って美味い野菜でも作ろうぜ?」
と、にこにこと言う。
絶対に巻き込んで悪いなどとは思ってない。
「…逃げられたら…なぁ」
と、言いつつも、まあ、考えてみれば自分自身は失敗して失くして困るものなんて何もない。
失敗したら失敗した時のことか、と、巻き込まれる覚悟をして実弥は大きく肩を落として息を吐きだす。
それを了承と受け取って、宇髄は
「大丈夫だって。余裕で逃げ切ってみせるぜ。
なにしろ俺は世界最強の神だからなっ」
…などと、根拠のない自信満々で請け負った。
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と、さすがにあまりのわけのわからなさに実弥が脱力してみせると、宇髄は当たり前のように言った。
「だから言っただろ。
錆兎の事を騙そうとしてるわけじゃなきゃ別にそんなんどうでもいいんだよ」
「…悪い…俺ァ話についていけてねえ。
お前けっきょく何が言いたいんだァ?」
「だからな、草みたいな形でスパイになるつもりもなくてならされちまってるケースもあるし、義勇がスパイっぽくないとしても、絶対にスパイっていう身分じゃないって言いきる事はできねえだろ。
てことでな、重要なのは二つだ。
一つは義勇が草でも草じゃなくても錆兎に対して騙して危害加える気があるかどうか。
あったら錆兎から引き離さないとダメだし、なければ義勇は何があっても錆兎のために守ってやらないとダメな人間だ。
で、本当にに草だったとしてもなるつもりはなくてなっちまってて、錆兎に危害を加えたくねえって思ってるなら、義勇が草だって事は隠しとおさなきゃなんねえ」
「…理屈としてはわかったけどなァ、どうやって?」
「そんなん簡単じゃね?
義勇がその気になったら錆兎を殺せるような場面作って、殺さなきゃ今後誰かがなんか言ってきても、殺す気だったらあの時に殺してただろって言えるだろ。
ついでにな、義勇の方にも他のみんなにも錆兎にとっても義勇は絶対に必要で亡くしたらとんでもない事になるって事を思い知らせてやったらいんじゃね?って思うんわけだ」
「……そんな都合の良い状況をどうやって作るんだよ」
「んーーお前が協力してくれたら出来るんだけど…」
そこでじ~っと見つめられて、実弥は後ずさった。
ああ、これ無茶言う前の宇髄だよなァ……
と、もう軍に入って数年もの間に培った経験がそう告げている気がする…。
しかし…こうなるともう蛇に睨まれたカエル状態だ。
逃げられる気がしない。
「ま、失敗したら一緒に中央にでも逃げて貯め込んだ金で畑でも買って美味い野菜でも作ろうぜ?」
と、にこにこと言う。
絶対に巻き込んで悪いなどとは思ってない。
「…逃げられたら…なぁ」
と、言いつつも、まあ、考えてみれば自分自身は失敗して失くして困るものなんて何もない。
失敗したら失敗した時のことか、と、巻き込まれる覚悟をして実弥は大きく肩を落として息を吐きだす。
それを了承と受け取って、宇髄は
「大丈夫だって。余裕で逃げ切ってみせるぜ。
なにしろ俺は世界最強の神だからなっ」
…などと、根拠のない自信満々で請け負った。
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