1週間前には絶対に中央入りしようと思って休暇も取ってたんだけどな。
仕事でイレギュラーがあって、今速効で戻ってるから。
すぐ…そうだな、明日には中央入り出来る。
ぎりぎり前々日とかほんと心細いよな、ごめんな」
ただいま絶賛移動中。
しかも軍用戦闘機の中。
もちろん…移動用のソレではない。
最前線に出るとは言っても錆兎とて実働部隊の中枢にいるわけではないので、機動性を重視した最新鋭のその戦闘機には初めて乗る。
電話に向かってひたすら謝る錆兎の横でそれを操縦するのは実弥。
本来なら手術予定日の1週間前には戻れるはずが戦闘が長引き現場がどんどん遠いあたりに移動し、気づけば帰還予定を大幅に過ぎていた時点で錆兎に本気で泣きがはいっていたところに、『仕方ねえなぁ、ちょっくら送ってやろうかぁ?』と、軍の機密でもあるはずのそれをまるで自家用車でも出すように出してくれた実弥には感謝してもしきれないと思う。
そう、実動部隊ではエースなだけに、上司ですら文句が言えないところがみそだ。
そうして通常なら3日はかかる場所から数時間で送ってもらえることになり、なんとか手術前には顔をだせそうでホッとする。
「ほんとに助かった。あいつ、ずっと病院と自宅の往復しかしたことなくて、俺以外に身内どころか知りあいもいないんだ」
と、それは義勇に聞いた彼の境遇を語ってみると、実弥はニヨっと笑って
「ま、いいってこった。その代わり今度一回会わせてくれぇ。別にとったりしねえから。
錆兎がこんなに入れ込んでる相手がどんな子か見てみてえわ」
と、実に気楽な調子で言ってくれる。
とてもとても大切だったらしい家族を失ってからの実弥はおそらく再度失うのが怖くて
錆兎のように特別に大事な相手を持てないのだろう。
相手に怖がられるから…というのも理由の一つだが、援助している孤児院の子ども達と直接的な関りを持とうとしないというのは、それもあるのかもしれない。
優しい男なのにもったいない…と錆兎は思った。
だが、まあ錆兎もそう接点を持てない事情はある。
「あ~そうしたいのはやまやまなんだけどな、俺たち軍人と関わってるとわかると色々な方面から狙われるからな。
俺でもあまり目立たないようにたまにこっそり会いに行くだけにしているから。
「ほんとに助かった。あいつ、ずっと病院と自宅の往復しかしたことなくて、俺以外に身内どころか知りあいもいないんだ」
と、それは義勇に聞いた彼の境遇を語ってみると、実弥はニヨっと笑って
「ま、いいってこった。その代わり今度一回会わせてくれぇ。別にとったりしねえから。
錆兎がこんなに入れ込んでる相手がどんな子か見てみてえわ」
と、実に気楽な調子で言ってくれる。
とてもとても大切だったらしい家族を失ってからの実弥はおそらく再度失うのが怖くて
錆兎のように特別に大事な相手を持てないのだろう。
相手に怖がられるから…というのも理由の一つだが、援助している孤児院の子ども達と直接的な関りを持とうとしないというのは、それもあるのかもしれない。
優しい男なのにもったいない…と錆兎は思った。
だが、まあ錆兎もそう接点を持てない事情はある。
「あ~そうしたいのはやまやまなんだけどな、俺たち軍人と関わってるとわかると色々な方面から狙われるからな。
俺でもあまり目立たないようにたまにこっそり会いに行くだけにしているから。
本当はお前たちとかも連れてしょっちゅう会いに行けたら、あいつも賑やかで楽しいんだろうけど…」
と説明すると、きょとんと1度瞬きをして、それから至極真面目な顔で
「じゃ、俺が西ラインの奴ら皆殺しにしとくかぁ?」
と、まるで天気の話でもするように普通に口にするのが、実弥らしくも恐ろしい。
そうしようと言えば今からでも西ラインに武器を手に特攻しそうだ。
本当に…冗談じゃなく…今自分が大切だと思っている人間のためなら本気でやりかねない男である。
「いや…それ無理じゃないか?普通に……」
と引きつった笑いを浮かべる錆兎。
「そもそもが、敵軍という形態が崩壊したとしても、それはそれで残党の恨み買ってとかもあるだろうし、一般の無頼の輩が金目当てに…とか、もう潰そうとしたってキリないだろう?」
と、一呼吸おいてそう付け加えると
「あー…それもそうかもなぁ…」
と、納得したような言葉を返してきたので、ホッと息をついた。
こうして数時間後、基地に着く。
なんと総帥様自らのお出迎えで、もちろんその眉間にはしっかりと縦皺。
「…兄さん…何故止めないんだ?」
と、さすがに厳しい表情の弟。
何を?と言えば当然、軍事機密を単体で動かして敵に奪取される危険をおかしたことだろう。
それに対しては、心底悪い申し訳ないと本気で思いつつ、しかしここは実弥にかぶせるわけにはいかない。
と説明すると、きょとんと1度瞬きをして、それから至極真面目な顔で
「じゃ、俺が西ラインの奴ら皆殺しにしとくかぁ?」
と、まるで天気の話でもするように普通に口にするのが、実弥らしくも恐ろしい。
そうしようと言えば今からでも西ラインに武器を手に特攻しそうだ。
本当に…冗談じゃなく…今自分が大切だと思っている人間のためなら本気でやりかねない男である。
「いや…それ無理じゃないか?普通に……」
と引きつった笑いを浮かべる錆兎。
「そもそもが、敵軍という形態が崩壊したとしても、それはそれで残党の恨み買ってとかもあるだろうし、一般の無頼の輩が金目当てに…とか、もう潰そうとしたってキリないだろう?」
と、一呼吸おいてそう付け加えると
「あー…それもそうかもなぁ…」
と、納得したような言葉を返してきたので、ホッと息をついた。
こうして数時間後、基地に着く。
なんと総帥様自らのお出迎えで、もちろんその眉間にはしっかりと縦皺。
「…兄さん…何故止めないんだ?」
と、さすがに厳しい表情の弟。
何を?と言えば当然、軍事機密を単体で動かして敵に奪取される危険をおかしたことだろう。
それに対しては、心底悪い申し訳ないと本気で思いつつ、しかしここは実弥にかぶせるわけにはいかない。
「すまん。処罰とかあるなら1週間後に受ける。
今回は俺の都合だ。実弥のせいじゃない。
どうしても…早く戻って向かいたいところがあったんだ」
今回は俺の都合だ。実弥のせいじゃない。
どうしても…早く戻って向かいたいところがあったんだ」
と、頭を下げると事情を察したようだ。
弟、杏寿郎は思い出したようにポン!と手のひらを拳で打った。
弟、杏寿郎は思い出したようにポン!と手のひらを拳で打った。
「あー…そう言えば今回は本当はもう休暇中だったな。
すまん、兄さん。
でもあそこで叩いておかないと被害が甚大になるところだったし…あなたが指揮に入ってくれないと……」
「ああ、それはいいんだ。終わったことだし。
ただ、悪い。普通のリフレッシュ休暇なら良いんだが、今回は大事な用があるんだ」
「わかってる。車を出すか?」
「いや、目立つ事はしたくない。
いつも通り資材トラックに隠れて基地を出る」
「そうかっ」
今回は本当にすまなかった…と、杏寿郎はもう一度兄に謝罪をした後、側近たちに本来はすでに休暇中のところを無理に作戦のために兄を引きとめていた事を説明する。
規律は守らねばならない…と言うのはこの兄弟の共通の理念ではあるが、その規律の中には当然休暇中は休まねばならないと言う事も含まれている。
だから確かに機密的な観点から万が一にでも戦闘機が敵の手に渡ったら…と言う事を考えると単体で動くべきではないが、順序としては休暇が先だ。
それを速やかに遂行するために一刻も早く帰還するという事は責められないし、操縦者は実働部隊のエースだ。
何かふっかけられても彼なら大丈夫だろうし仕方がない。
先に破られた規律を正すための行動だとしたら、今回は不問に付すしかない。
そう結論が出て、とりあえず無罪放免。
さあ大急ぎで部屋に戻って支度をするか…と思ったところに、大変ですっ!!と、伝令が飛んできた。
Before <<< >>> Next (6月4日公開予定)
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