全てから開放されてふわふわと温かな中で漂っていた。
柔らかく暖かい空気にそのまま溶けてしまいそうな感覚。
ああ…そういうのもいいかもしれない…と思う。
手も足もすでに空気と同化して、そのまま柔らかな空気に溶け込もうと義勇が目を軽く閉じたとき、子どものように泣く声がして、その声に意識がひきつけられた。
あいまいなこの場の空気にそぐわない、はっきりとした悲哀の色。
強い悲しみの意志に引きずられるように溶け込みかけた意識がまた形を作り、ゆるやかに空気を漂っていた視線がそちらに引き寄せられる。
泣くなよ…泣くな…。
いつも優しく自分を甘やかしていた相手が、いま己の心のうちを微塵も隠そうともせず悲しみに打ちひしがれて慟哭している図に、心がひどく痛んだ。
涙に濡れるその頬に手を伸ばそうとした瞬間、空気に同化しかけていた意識がはっきりと形を持つ。
強く望まれている…そんな強い意志にひっぱられるように、ふわふわと浮かんでいた意識が地上に引っぱり降ろされる…そんな感覚を義勇は覚えた。
……ピッ……
直線を描いていた心電図がかすかに動いた。
「あっ!」
手を止めて顔をあげ、それを確認すると大きく安堵の息を吐き出すカナエ。
その顔に浮かぶ笑みを見て、表情を和らげる猗窩座とニコニコ嬉しそうに微笑む村田。
やがて定期的な鼓動を刻み始める機械に、村田はホッとしたように片づけに従事し、カナエは猗窩座の両手を両手で握った。
「今回はありがとう。私、やる前から諦めてしまってたわ。
やっぱりやってみないとダメよね。
やる前から諦めてはダメだったわ。
私達、お医者さんなんだから」
珍しく少し目をうるませるカナエに猗窩座はわずかに微笑む。
自分より一回り大きい友人の肩に手を置いたまま少しうつむき加減に言うカナエには、その表情が見えてないのが残念だ。
見えていれば猗窩座の方こそがこの状況をどれだけ望んで動いたかがわかるのにと、村田は少し離れた所で片付けをしながら、そう思った。
「おそらくじきに意識が戻ると思うが、主治医として言っておかねばならん事があるから、先に冨岡と話させてくれ」
信用してくれないか?とそこでと言われれば、カナエにはイエス以外の選択はない。
錆兎は不満そうな顔をしたが、
「私がGPSも取り出したし、何か変な影響与える事もしてない。
危害加える気があるのなら、あのまま放っておくでしょう?
前も言ったけど術後しばらくは大事だしね。
きっと色々細かい注意があるんだと思うわ。
義勇ちゃんの病状をずっと見てきた猗窩座君の方が私よりはそのあたりわかっていると思うし」
と、カナエが言うと、錆兎は
「…義勇にもうおかしな真似するなよ?」
と不満気な顔をしたが、最終的に了承した。
信用してくれないか?とそこでと言われれば、カナエにはイエス以外の選択はない。
錆兎は不満そうな顔をしたが、
「私がGPSも取り出したし、何か変な影響与える事もしてない。
危害加える気があるのなら、あのまま放っておくでしょう?
前も言ったけど術後しばらくは大事だしね。
きっと色々細かい注意があるんだと思うわ。
義勇ちゃんの病状をずっと見てきた猗窩座君の方が私よりはそのあたりわかっていると思うし」
と、カナエが言うと、錆兎は
「…義勇にもうおかしな真似するなよ?」
と不満気な顔をしたが、最終的に了承した。
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