バタン!と珍しく慌しい様子で善逸が駆け込んできた。
「へ?昨日なら倒れたけど一応落ち着いて今自室なはずだぜぇ。
っつ~か、もし義勇の容態変わったんなら、まず俺達んとこ抱えてくるだろ?」
と言いつつも、診療所で薬品の整理をしていた実弥は一応、と、錆兎の携帯に電話するが出ない。
仕方が無いので今度は家の電話にもかけてみるが、こちらも留守電になった。
「…錆兎がいねえにしても…義勇は出るはずだよなぁ…」
一瞬考え込んで、実弥は上着を羽織ると念のためカナエを呼んでおくように善逸に言い残して、廊下を駆け出す。
そして、何もなかったらそれでいいのだから…と、預かっている合鍵で錆兎の居住エリアに入った。
電気が付けっぱなしの居間。
念のため錆兎と義勇の部屋をのぞくが、シン…と静まりかえった部屋には誰もいない。
あまり良い兆候ではなさそうだ。
錆兎が血相を変えていた理由はおそらく義勇が部屋にいなかったこと。
自分達にも探してくれという連絡がなかったことを考えると、行き先はわかっていたということだろう。
一瞬考え込んで、実弥は上着を羽織ると念のためカナエを呼んでおくように善逸に言い残して、廊下を駆け出す。
そして、何もなかったらそれでいいのだから…と、預かっている合鍵で錆兎の居住エリアに入った。
電気が付けっぱなしの居間。
念のため錆兎と義勇の部屋をのぞくが、シン…と静まりかえった部屋には誰もいない。
あまり良い兆候ではなさそうだ。
錆兎が血相を変えていた理由はおそらく義勇が部屋にいなかったこと。
自分達にも探してくれという連絡がなかったことを考えると、行き先はわかっていたということだろう。
急いで連れ戻さないといけない…その理由は明らかで、4,5日中に行う手術のため絶対に発作を起こして体力を消耗させたりさせられないから…。
なのに医者である自分達を同行させないという事は……
「考えたくねえが…最悪の事態って事かぁ…?」
実弥は舌打ちをして、宇髄に電話をかけた。
「宇髄、大至急だ。錆兎の家の電話の通話記録調べろぉ」
携帯は任務の都合上、情報漏れを防ぐ意味で暗号化されているため、情報部といえど早々通話記録を知ることはできない。
まあ錆兎関係の人間が義勇に連絡を取ろうとすれば家の電話か直接尋ねるかしかないわけだから、それで問題はないと思うが…。
なのに医者である自分達を同行させないという事は……
「考えたくねえが…最悪の事態って事かぁ…?」
実弥は舌打ちをして、宇髄に電話をかけた。
「宇髄、大至急だ。錆兎の家の電話の通話記録調べろぉ」
携帯は任務の都合上、情報漏れを防ぐ意味で暗号化されているため、情報部といえど早々通話記録を知ることはできない。
まあ錆兎関係の人間が義勇に連絡を取ろうとすれば家の電話か直接尋ねるかしかないわけだから、それで問題はないと思うが…。
普段なら『何があったんだ?』くらい聞きそうなものだが、そこは宇髄も空気を読んで即作業に入っているらしい。
そして
そして
『実弥…こいつぁ…』
と、ひどく深刻な声が返ってきたのに、実弥は自分の予想が当たってしまったことを確信した。
通信班の中堅の浦松という男が、錆兎が出先で重傷をおったので…と、義勇を誘い出していた。
最近スパイが増えているとは聞いていたが、ごく最近入った人間でもない、そこそこ長くいた男がとは思わなかった。
もう一度基地内の人間をきちんと調べ上げるように産屋敷に提案しなければ…とは思うが、まずは義勇の行方だ。
おそらく義勇を人質に錆兎を呼び出したのだろうが、その後宇髄に調べさせたが痕跡が追えない。
「不死川君……どうするの?」
とりあえず考えながらも手だけは動かそうと即義勇の治療が行えるようにと医療品を車に積み込む実弥の横で、善逸に呼ばれて駆けつけたカナエが不安げに聞いてくる。
それはこちらが聞きたいわけだが……。
錆兎にも連絡が取れないしお手上げだ。
これで手術できなくなったら…
「いや…手はあったか」
そこでハッと思いついた。
そしてカナエを振り返ってとある人物に連絡をとることを依頼する。
と、ひどく深刻な声が返ってきたのに、実弥は自分の予想が当たってしまったことを確信した。
通信班の中堅の浦松という男が、錆兎が出先で重傷をおったので…と、義勇を誘い出していた。
最近スパイが増えているとは聞いていたが、ごく最近入った人間でもない、そこそこ長くいた男がとは思わなかった。
もう一度基地内の人間をきちんと調べ上げるように産屋敷に提案しなければ…とは思うが、まずは義勇の行方だ。
おそらく義勇を人質に錆兎を呼び出したのだろうが、その後宇髄に調べさせたが痕跡が追えない。
「不死川君……どうするの?」
とりあえず考えながらも手だけは動かそうと即義勇の治療が行えるようにと医療品を車に積み込む実弥の横で、善逸に呼ばれて駆けつけたカナエが不安げに聞いてくる。
それはこちらが聞きたいわけだが……。
錆兎にも連絡が取れないしお手上げだ。
これで手術できなくなったら…
「いや…手はあったか」
そこでハッと思いついた。
そしてカナエを振り返ってとある人物に連絡をとることを依頼する。
その依頼にカナエは
──学校を卒業して以来連絡を取ってないから…番号がまだ変わってなければ良いんだけど…
──学校を卒業して以来連絡を取ってないから…番号がまだ変わってなければ良いんだけど…
と言いながら、学生時代から愛用している年代物のプライベート用の携帯を取り出し、アドレス帳を開いて緊張する指先で登録してある名前を押した。
電話をかける音…に続いて、呼び出し音がしたのも一瞬、即
『胡蝶か…。どうしたんだ?』
そう数年のブランクなどないように、まるで交流のあった学生時代のように当たり前に尋ねてくる声に、カナエの方が戸惑う。
『何か困った事態でも起きたのか?』
一瞬言葉の出ないカナエに、猗窩座はやはり彼にしてはやや柔らかい口調で更にそう問いかけてきた。
電話をかける音…に続いて、呼び出し音がしたのも一瞬、即
『胡蝶か…。どうしたんだ?』
そう数年のブランクなどないように、まるで交流のあった学生時代のように当たり前に尋ねてくる声に、カナエの方が戸惑う。
『何か困った事態でも起きたのか?』
一瞬言葉の出ないカナエに、猗窩座はやはり彼にしてはやや柔らかい口調で更にそう問いかけてきた。
ああ、そうだ。
聞かなければ…。
「ええ、突然ごめんなさい。あなたに聞いていいことじゃないかもしれないんだけど…」
と、カナエが切り出すと、電話の向こうの猗窩座は何故か嬉しそうな声で
聞かなければ…。
「ええ、突然ごめんなさい。あなたに聞いていいことじゃないかもしれないんだけど…」
と、カナエが切り出すと、電話の向こうの猗窩座は何故か嬉しそうな声で
『お前は俺が恋雪の最期に間に合うよう手を尽くしてくれた恩人だ。
だからお前が俺に聞いてはならんことなど何もない。
そして、お前に聞かれた事で俺が答えない事もなにもないから、なんでも聞け』
と、返してきた。
もう友人として交流を持っていた学生時代とは違う。
確かに病弱な婚約者の容態が悪化して彼が地元へ帰りたがった時、大切な実験があるからと止める教授の前で、思いきり実験に失敗したふりで実験室を破壊して、実験室を修理し、再度器具を取り寄せなければならないからと、実験を1ヶ月ほど先送りにしたのはカナエだ。
他の人間なら何故そんなすごいことになる?と疑われるところだが、彼女はキッチンなら日頃から破壊していたので、ああ、胡蝶だからか…ですまされる。
だが、さすがに他では非常に優秀な彼女でもこんな状態で進級はまずかろうと、1年留年。
もちろん破壊した諸々の費用はしっかりと産屋敷に請求がいったのだが…
だからお前が俺に聞いてはならんことなど何もない。
そして、お前に聞かれた事で俺が答えない事もなにもないから、なんでも聞け』
と、返してきた。
もう友人として交流を持っていた学生時代とは違う。
確かに病弱な婚約者の容態が悪化して彼が地元へ帰りたがった時、大切な実験があるからと止める教授の前で、思いきり実験に失敗したふりで実験室を破壊して、実験室を修理し、再度器具を取り寄せなければならないからと、実験を1ヶ月ほど先送りにしたのはカナエだ。
他の人間なら何故そんなすごいことになる?と疑われるところだが、彼女はキッチンなら日頃から破壊していたので、ああ、胡蝶だからか…ですまされる。
だが、さすがに他では非常に優秀な彼女でもこんな状態で進級はまずかろうと、1年留年。
もちろん破壊した諸々の費用はしっかりと産屋敷に請求がいったのだが…
それでも猗窩座は婚約者の死に際に間に合って、しっかりと生きて、優秀な医師になれるであろう彼が自分に向けてくれるはずだった諸々をもって多くの人を救って欲しいという最期の言葉を直にきけたから、その言葉が今後自分が生きていく支えになると思うと、当時ずいぶんと感謝の言葉はうけとった。
だが、だからといって敵対している軍に所属している間柄で、何故いまだにそういう答えが返ってくるのかはよくわからない。
が、本当だとしたらありがたいことは確かだ。
「あのね、猗窩座君はこの前義勇ちゃんを拾った時に心臓にGPS埋め込んだって言ってたでしょ?」
『ああ、言ったな』
「それでね、今の義勇ちゃんの位置とかわからないかしら?」
『もちろんわかるぞ。教えて欲しいのか?』
飽くまで穏やかな猗窩座の声にカナエは小さくため息をつく。
「……ごめんね…。私、お給料のほとんどを医療関係につぎ込んでしまっていて、あまりお金はないんだけど…」
交渉に使えそうな情報もないし…と、何かないかとそのまま考え込んでいると、猗窩座の思考はカナエの予想の斜め上を行っていたらしく、明後日の方向の返答が返ってきた。
『胡蝶…ガソリン代もないくらい金がないのか?
俺が基地を訪ねていったらさすがに問題だし、見つからない程度の場所まで歩いて来れるならガソリン代くらい寄付してやるが?』
だが、だからといって敵対している軍に所属している間柄で、何故いまだにそういう答えが返ってくるのかはよくわからない。
が、本当だとしたらありがたいことは確かだ。
「あのね、猗窩座君はこの前義勇ちゃんを拾った時に心臓にGPS埋め込んだって言ってたでしょ?」
『ああ、言ったな』
「それでね、今の義勇ちゃんの位置とかわからないかしら?」
『もちろんわかるぞ。教えて欲しいのか?』
飽くまで穏やかな猗窩座の声にカナエは小さくため息をつく。
「……ごめんね…。私、お給料のほとんどを医療関係につぎ込んでしまっていて、あまりお金はないんだけど…」
交渉に使えそうな情報もないし…と、何かないかとそのまま考え込んでいると、猗窩座の思考はカナエの予想の斜め上を行っていたらしく、明後日の方向の返答が返ってきた。
『胡蝶…ガソリン代もないくらい金がないのか?
俺が基地を訪ねていったらさすがに問題だし、見つからない程度の場所まで歩いて来れるならガソリン代くらい寄付してやるが?』
「え??」
『さすがに徒歩でやつの所まで行くのはきついぞ?車でなければな…』
「うそうそうそうそ、そういう意味じゃなくってっ!
私、義勇ちゃんの位置情報を教えてもらうお礼になるものがないって言ってるだけで、ガソリン代くらいはあるから大丈夫!一応働いてるし…」
『なんだ。じゃあ現地待ち合わせで大丈夫だな』
と、柔らかな声音で言う猗窩座は、義勇とは別の意味で世間ずれしてないというか、つかみどころがない。
いきなり電話してきた敵対した元同級生に、自軍の作戦に関わっているであろう情報を普通に教える事にまったく思うところはないのだろうか…と思わないでもないが、このさい猗窩座のそんな性格にすがるしかない。
カナエは礼を言うと、連絡要員に宇髄は基地に残して、実弥と共に【私と不死川君のお花さん号】に乗り込んで、教えられた地点へと急いだ。
私、義勇ちゃんの位置情報を教えてもらうお礼になるものがないって言ってるだけで、ガソリン代くらいはあるから大丈夫!一応働いてるし…」
『なんだ。じゃあ現地待ち合わせで大丈夫だな』
と、柔らかな声音で言う猗窩座は、義勇とは別の意味で世間ずれしてないというか、つかみどころがない。
いきなり電話してきた敵対した元同級生に、自軍の作戦に関わっているであろう情報を普通に教える事にまったく思うところはないのだろうか…と思わないでもないが、このさい猗窩座のそんな性格にすがるしかない。
カナエは礼を言うと、連絡要員に宇髄は基地に残して、実弥と共に【私と不死川君のお花さん号】に乗り込んで、教えられた地点へと急いだ。
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華麗な俺…だと宇髄さんかなと思うんですが小鳥さんが嫁×3なのか、善逸なのか、そもそも別の人の車なのかが分からない…気になる(;^ω^)
返信削除うぉっ!ミスってました。【私と不死川君のお花さん号】ですね💦
削除修正しました。
報告いつもありがとうございます😊