義勇が倒れた日の午後、出撃命令が下った。
カナエいわく4,5日中にオペをするとのことで…手術で万が一があればそれまでの僅かな時間が義勇と過ごせる最後の時間になる。
1分1秒ですら無駄に出来ない値千金の時間なのだ。
なのに出撃。
それどころじゃないと当然のように拒否して休暇を取ろうとしたら、却下された。
いっそのこと仕事を辞めてやろうかとも思ったが、この先義勇を守っていくにも金がいる。
食べていくだけなら多額の貯金もあるしどうとでもできるが、手術は治療の始まりでしかないのだ。
食べていくだけなら多額の貯金もあるしどうとでもできるが、手術は治療の始まりでしかないのだ。
せめてあと1年半は大事をとらせなければならない。
治療にはそれなりの設備も必要だろうし、養生するのに良い環境を用意してやりたい。
そのためには今の仕事はやめられない。
こうしてイライラしながら早々に仕事をこなし、帰路に義勇と初めて会ったシーラインを通りかかってふと思いついた。
ああ、そう言えば色々ゴタゴタとしていたし、そもそもが通常の結婚とはかけ離れていたため、指輪も買ってやってなかった。
手術前に贈ってやりたい。
「ちょっと…30分だけ止めてくれ」
と、部下に言って、リゾート地の宝石店に駆け込んだ。
薔薇が地域の花であるシーラインだけあって、それをモチーフにしたモノが多いのが嬉しい。
錆兎はその中で薔薇がほり込んである金のおそろいの指輪を購入した。
自分用のはそのままはめて、もう一つは包装してもらう。
(俺の柄でもないが…義勇は喜んでくれるだろうか……)
それを懐に車に戻りながら錆兎は最愛の天使の顔を思い浮かべる。
照れ屋な錆兎の可愛い幼妻はきっと真っ赤になって、それでも嬉しさを隠せずに指を差し出すのだろう。
そんなことを考えながら基地に帰還して、急いで戻ろうと廊下を疾走していたら、
「あれ?鱗滝中佐、大丈夫だったんですか?」
と、見知った兵に声をかけられた。
「へ?」
「いや…今回出先で重傷負ったって聞いたので…」
と、目を丸くされ、逆に錆兎の方が目を丸くした。
「誰がそんなん言っていたんだ?」
どこからそんな誤報が?と思いつつさらに尋ねると、兵が
「通信班の浦松が…で、義勇ちゃんと青くなってどこか向かってましたけど…」
と答える。
その答えに今度は錆兎の方が青くなった。
そんな誤報がよりによって義勇の耳に入ってしまったのかっ。
「で、二人はどこに?!」
「いえ、そこまでは…」
「報告感謝するっ!」
変にストレスを与えてなければいいが、と、錆兎は兵に礼を言うと、自宅へとさらに疾走する。
鍵を開けるのももどかしくバタン!とドアを開けると、シン…と静まり返った室内に舌打ちをして、踵を返しかけた時に電話が鳴った。
「もしもしっ?!!」
と、それに飛びつくと、見知らぬ男の声。
なんとなくだが少し…いや、かなり嫌な予感がする。
『やあ、鱗滝中佐、初めまして。君の大事な姫君を今お預かりしてますよぉ』
治療にはそれなりの設備も必要だろうし、養生するのに良い環境を用意してやりたい。
そのためには今の仕事はやめられない。
こうしてイライラしながら早々に仕事をこなし、帰路に義勇と初めて会ったシーラインを通りかかってふと思いついた。
ああ、そう言えば色々ゴタゴタとしていたし、そもそもが通常の結婚とはかけ離れていたため、指輪も買ってやってなかった。
手術前に贈ってやりたい。
「ちょっと…30分だけ止めてくれ」
と、部下に言って、リゾート地の宝石店に駆け込んだ。
薔薇が地域の花であるシーラインだけあって、それをモチーフにしたモノが多いのが嬉しい。
錆兎はその中で薔薇がほり込んである金のおそろいの指輪を購入した。
自分用のはそのままはめて、もう一つは包装してもらう。
(俺の柄でもないが…義勇は喜んでくれるだろうか……)
それを懐に車に戻りながら錆兎は最愛の天使の顔を思い浮かべる。
照れ屋な錆兎の可愛い幼妻はきっと真っ赤になって、それでも嬉しさを隠せずに指を差し出すのだろう。
そんなことを考えながら基地に帰還して、急いで戻ろうと廊下を疾走していたら、
「あれ?鱗滝中佐、大丈夫だったんですか?」
と、見知った兵に声をかけられた。
「へ?」
「いや…今回出先で重傷負ったって聞いたので…」
と、目を丸くされ、逆に錆兎の方が目を丸くした。
「誰がそんなん言っていたんだ?」
どこからそんな誤報が?と思いつつさらに尋ねると、兵が
「通信班の浦松が…で、義勇ちゃんと青くなってどこか向かってましたけど…」
と答える。
その答えに今度は錆兎の方が青くなった。
そんな誤報がよりによって義勇の耳に入ってしまったのかっ。
「で、二人はどこに?!」
「いえ、そこまでは…」
「報告感謝するっ!」
変にストレスを与えてなければいいが、と、錆兎は兵に礼を言うと、自宅へとさらに疾走する。
鍵を開けるのももどかしくバタン!とドアを開けると、シン…と静まり返った室内に舌打ちをして、踵を返しかけた時に電話が鳴った。
「もしもしっ?!!」
と、それに飛びつくと、見知らぬ男の声。
なんとなくだが少し…いや、かなり嫌な予感がする。
『やあ、鱗滝中佐、初めまして。君の大事な姫君を今お預かりしてますよぉ』
ああ…やっぱりか……
できれば気のせいであってくれと思ったが…。
それはまるで地獄の使者の声に聞こえた。
そして目の前が暗くなる。
できれば気のせいであってくれと思ったが…。
それはまるで地獄の使者の声に聞こえた。
そして目の前が暗くなる。
「…無事なんだろうな?」
祈るような気持ちで聞いた。
『あなた次第ですねぇ。今は丁重にお招きして眠って頂いています。
出来ればあなた一人で迎えに来て欲しいのですが?』
「今どこだ?」
『とりあえず基地を出て北東方向に…。詳細はおって携帯に知らせます』
「わかった。
義勇はそのまま寝かせておいてやってくれ。
絶対に怖い思いをさせたりストレスを与えたりするなよ。
病気なんだ。万が一悪化させるような事したら俺は絶対にお前を許さない」
『では麻酔が切れる前に行動してくれればありがたいですねぇ』
と、最後に残してプツッと電話が切れた。
「クソッ!」
ガン!と腹立ちまぎれに椅子を蹴倒すと、錆兎は受話器を電話にたたきつけて、部屋の外へとかけ出していった。
祈るような気持ちで聞いた。
『あなた次第ですねぇ。今は丁重にお招きして眠って頂いています。
出来ればあなた一人で迎えに来て欲しいのですが?』
「今どこだ?」
『とりあえず基地を出て北東方向に…。詳細はおって携帯に知らせます』
「わかった。
義勇はそのまま寝かせておいてやってくれ。
絶対に怖い思いをさせたりストレスを与えたりするなよ。
病気なんだ。万が一悪化させるような事したら俺は絶対にお前を許さない」
『では麻酔が切れる前に行動してくれればありがたいですねぇ』
と、最後に残してプツッと電話が切れた。
「クソッ!」
ガン!と腹立ちまぎれに椅子を蹴倒すと、錆兎は受話器を電話にたたきつけて、部屋の外へとかけ出していった。
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