錆兎が居間に出た時にはすでに宇髄がソファで雑誌を読んでいた。
そして、その後ずっとイライラと居間を往復する錆兎に呆れたように、宇髄はとうとう雑誌を置いて
「お茶でもいれてやるから」
と、キッチンへと消えて行く。
落ち着けと言われて落ち着けるわけではないが、確かに何かあった時に即動けるように無駄な体力を使うべきではない。
錆兎は少し落ち着こうと今まで宇髄が腰をかけていたソファに座って、宇髄が置いていった雑誌を手にとった。
情報を扱う仕事の宇髄は暇さえあれば各種雑誌を覗いている。
「お茶でもいれてやるから」
と、キッチンへと消えて行く。
落ち着けと言われて落ち着けるわけではないが、確かに何かあった時に即動けるように無駄な体力を使うべきではない。
錆兎は少し落ち着こうと今まで宇髄が腰をかけていたソファに座って、宇髄が置いていった雑誌を手にとった。
情報を扱う仕事の宇髄は暇さえあれば各種雑誌を覗いている。
今回はウェディング特集らしい。
綺麗な薔薇のアーチを背に微笑む花嫁が表紙で、ふと初めて義勇を見かけた日の事を思い出した。
あの日…薔薇の中で綺麗な笑みを浮かべていた…。
思えば、その繊細で儚くて美しい様子に一目で惹かれたのかもしれない。
こんな風に繊細なレースのヴェールをかぶせたら似合うだろうな…と思ったら悲しくなった。
あの日薔薇の中で微笑んでいた義勇は、今無粋な軍事基地の中で華奢な体中に薬品の管をつ
綺麗な薔薇のアーチを背に微笑む花嫁が表紙で、ふと初めて義勇を見かけた日の事を思い出した。
あの日…薔薇の中で綺麗な笑みを浮かべていた…。
思えば、その繊細で儚くて美しい様子に一目で惹かれたのかもしれない。
こんな風に繊細なレースのヴェールをかぶせたら似合うだろうな…と思ったら悲しくなった。
あの日薔薇の中で微笑んでいた義勇は、今無粋な軍事基地の中で華奢な体中に薬品の管をつ
けられて死にかけている。
天使のようなのは外見だけではない。
その心根もあんなに優しく美しいのに…基地内に後ろ盾がいない…それだけで理不尽に傷つけられ、命を失ってしまうんだろうか…。
「あ~、そのモデル、可愛いよな」
紅茶の乗ったトレイを手に戻ってきた宇髄がにこやかに言うのに頷きながらも
「あ~、そのモデル、可愛いよな」
紅茶の乗ったトレイを手に戻ってきた宇髄がにこやかに言うのに頷きながらも
「ああ、清楚でいいな。
だが義勇の方が清楚で可愛いとは思わないか?」
と真顔で言うと、宇髄は
「そこでなんで義勇の話になんだよ。お前の頭ン中それしかないのかぁ?」
と、呆れたため息と共にティーカップを差し出してくる。
「当たり前だろう?
で?なんだ、この液体?!」
と、それを受け取って一口飲んで嫌そうに顔をしかめる錆兎に宇髄はきょとんと
「え?え??紅茶だけど??」
と、一口自分のカップの中身を口に含む。
「ああ。紅茶だろ?」
改めてそう言う宇髄に、錆兎は
「…義勇がいれてくれる紅茶はもっと香りがいい」
と言った。
それに宇髄は再び溜息を付く。
だが義勇の方が清楚で可愛いとは思わないか?」
と真顔で言うと、宇髄は
「そこでなんで義勇の話になんだよ。お前の頭ン中それしかないのかぁ?」
と、呆れたため息と共にティーカップを差し出してくる。
「当たり前だろう?
で?なんだ、この液体?!」
と、それを受け取って一口飲んで嫌そうに顔をしかめる錆兎に宇髄はきょとんと
「え?え??紅茶だけど??」
と、一口自分のカップの中身を口に含む。
「ああ。紅茶だろ?」
改めてそう言う宇髄に、錆兎は
「…義勇がいれてくれる紅茶はもっと香りがいい」
と言った。
それに宇髄は再び溜息を付く。
料理が壊滅的な義勇も茶を淹れるのだけは天才的に上手だ。
確かにあれほど上手ではないが、これだって十分美味しく淹れられているはずだ。
しかしそう言ったところで落ち込んでいる相手を余計に落ち込ませるだけだと、その言葉は飲み込んでおく。
宇髄から反応が返って来ないことに気づくと、錆兎はまた雑誌に視線を落とした。
このモデルよりも自分の可愛い義勇の方が絶対に薔薇もヴェールも似合うと思う。
こんな風に薔薇に囲まれた庭で幸せそうに笑う義勇が見たい。
この花嫁のように……花嫁の…ように?!
しかしそう言ったところで落ち込んでいる相手を余計に落ち込ませるだけだと、その言葉は飲み込んでおく。
宇髄から反応が返って来ないことに気づくと、錆兎はまた雑誌に視線を落とした。
このモデルよりも自分の可愛い義勇の方が絶対に薔薇もヴェールも似合うと思う。
こんな風に薔薇に囲まれた庭で幸せそうに笑う義勇が見たい。
この花嫁のように……花嫁の…ように?!
「そうだっ!そうすればいいんじゃないかっ!!」
いきなりガタっと立ち上がった錆兎に、うあ!!と宇髄は飛び退いた。
「なんなんだよ、今度は急に」
「身元が必要なんだったら結婚して作ってやればいいんじゃないかっ!!」
さも良いことを思いついたっ!とばかりに目をキラキラさせる錆兎に、宇髄は頭がクラクラした。
「え~っと?」
意味がわからず聞き返してみると、錆兎によりによって可哀想なオツムの人間を見るような目で見られた。
いや、俺の反応は普通だからなっ!と心の中で言い訳しながらも、黙って言葉を待っていると、錆兎が
「わからないか?」
と、本当にわからないのがおかしいと言わんばかりの表情で言うので、
「それで分かる奴はいねえよ」
と返すと複雑な表情をして、それでも先を続けた。
いきなりガタっと立ち上がった錆兎に、うあ!!と宇髄は飛び退いた。
「なんなんだよ、今度は急に」
「身元が必要なんだったら結婚して作ってやればいいんじゃないかっ!!」
さも良いことを思いついたっ!とばかりに目をキラキラさせる錆兎に、宇髄は頭がクラクラした。
「え~っと?」
意味がわからず聞き返してみると、錆兎によりによって可哀想なオツムの人間を見るような目で見られた。
いや、俺の反応は普通だからなっ!と心の中で言い訳しながらも、黙って言葉を待っていると、錆兎が
「わからないか?」
と、本当にわからないのがおかしいと言わんばかりの表情で言うので、
「それで分かる奴はいねえよ」
と返すと複雑な表情をして、それでも先を続けた。
「だから、義勇が俺の伴侶になれば身元を聞かれても俺の伴侶だと答えられるだろう?それで全て解決だっ!」
もう義勇のこととなると錆兎の脳内は宇宙になっていく…と宇髄は呆れかえる。
こんな可哀想な発想になってて、大丈夫なのか?!
そうは思うものの、自分の身の安全のために、やはりため息と共にその言葉は空気を読んで飲み込んでおいた。
そもそも…身元=敵軍の関係者ではないのか?という事だから、いくら結婚したからといってその前の身分が消えるわけではないというか…むしろもし相手が敵軍関係者だったとしたら、下手をすればスパイのハニートラップにモロかかったという形になるのでは?
まあ…今回は本当にスパイではなかったようだが…問題になっているのは事実ではなく、噂の問題なわけだから、そういう理屈だよな、やっぱり…と、思ったが、これも命が惜しいので黙っておく。
どちらにしても命がけで進言したところで、もう頭の中に“結婚”という二文字しかなくなっている錆兎に何を言っても無駄な気がする。
せめて…いきなりの展開に義勇が驚かないように先に教えておいてやろう…と、宇髄は遠い目をして思う。
その後…義勇になるべくショックを与えないように状況を柔らかく説明するという大役を任され、宇髄は錆兎の険しい視線に送られながら、義勇の部屋へと入っていった。
もう義勇のこととなると錆兎の脳内は宇宙になっていく…と宇髄は呆れかえる。
こんな可哀想な発想になってて、大丈夫なのか?!
そうは思うものの、自分の身の安全のために、やはりため息と共にその言葉は空気を読んで飲み込んでおいた。
そもそも…身元=敵軍の関係者ではないのか?という事だから、いくら結婚したからといってその前の身分が消えるわけではないというか…むしろもし相手が敵軍関係者だったとしたら、下手をすればスパイのハニートラップにモロかかったという形になるのでは?
まあ…今回は本当にスパイではなかったようだが…問題になっているのは事実ではなく、噂の問題なわけだから、そういう理屈だよな、やっぱり…と、思ったが、これも命が惜しいので黙っておく。
どちらにしても命がけで進言したところで、もう頭の中に“結婚”という二文字しかなくなっている錆兎に何を言っても無駄な気がする。
せめて…いきなりの展開に義勇が驚かないように先に教えておいてやろう…と、宇髄は遠い目をして思う。
その後…義勇になるべくショックを与えないように状況を柔らかく説明するという大役を任され、宇髄は錆兎の険しい視線に送られながら、義勇の部屋へと入っていった。
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