義勇の心臓には異物が埋め込まれているため身体が拒絶反応を起こして死んでしまう確率が非常に高い。
なのに義勇の衰弱しきった身体ではそれを嫡出する手術には耐えられない……そんなジレンマを抱えている。
いっそ気が狂ってしまえれば楽だが、どんなに辛かろうと義勇を守るためには正気を失うわけにはいかない。
身を消した義勇をなんとか連れ戻し、衰弱しきった身体をとりあえず回復させるために治療を続ける。
白く…悲しいほど細い腕には点滴の管、その他体中に薬品やらなんやらの管が取り付けられ、酸素マスクの下で弱い呼吸を繰り返している義勇を目の前にして、錆兎は泣き喚きたい気分にかられた。
自分が大事にしているものは皆自分を置いて行ってしまう…。
取り残される……つらい……いやだ。
(もし…もし義勇を助けてくれるなら、俺はもう何があっても薬とか飲まないからっ。
どんな身体が辛くても飲まないから、願いを聞き届けてくれ…)
戦災孤児の錆兎を拾って育ててくれた寺のお坊さんからもらった数珠。
産屋敷に拾われて軍人になって稼ぐまで、唯一の財産だったそれをしっかり握りしめて、錆兎は一心に仏に祈った。
仏が本当にいるなら自分はこんな薄汚れた町の片隅でほとんど中身など入っていない薄い粥をすすっていたりしない…そう思って、願掛けなどしたことはなかった。
が、可能性が少しでもあるのなら、義勇が少しでも命を永らえる事ができるなら、どんな小さな可能性にもすがりたかった。
そんな状態で丸一日目を覚ます事なく眠り続けた義勇がようやく目を覚ました時は、安堵のあまり錆兎の方が気を失いそうになった。
それをなんとか堪えて
「義勇…痛くはないか?辛くはないか?俺の事がわかるか?」
と聞いてみるが、まだぼ~っとしているようで、反応が薄い。
ひどく頼りない目で自分を見上げる天使の愛らしさと痛々しさ。
何故この子は自分がこの子を失って大丈夫だなどと思えるのだろう。
「義勇、ダメだ…。これはダメだぞ?
お前は病身なんだから、こんな無理をしていたら本当に死んでしまうぞ。
頼むから…。もうこんな真似は二度としないでくれ」
今こうやって命を繋いでいるのは奇跡だ。
もし例の医者が義勇にGPSをつけたりするような輩じゃなかったとしたら…極々普通の善良な医師が義勇の手術を担当していたら、確実に今回の事で義勇は命を落としていた。
それを想像しただけで体中の血が凍りついて、カチカチになった心臓が割れて粉々に壊れそうになるのに…。
乱暴に触れたら折れてしまいそうな細い手をおそるおそる取ると、自らの額に押し当てて、まだ血の通っている温かさがある事を実感する。
しかし次の瞬間…
握った手に不自然に力が入って、慌てて顔をあげると苦しそうに眉を寄せる義勇。
周りの機械がピーピー緊急事態を告げる。
「義勇っ!!義勇っ、どうしたんだっ?!!!」
反射的にナースコールを押すとカナエが駆け込んでくる。
「義勇っ!!!嫌だっ!!いかないでくれっ!!!!」
「鱗滝君っ、落ち着いてっ!!」
カナエに引き離されそうになって、錆兎はそれを突き飛ばした。
「義勇っ!!義勇っっ!!!!」
離されたら連れて行かれてしまう…そんな錯覚に陥ってパニックを起こしかけたが、
「黙れっ!!死なせたくなければ、向こうの部屋で大人しくしてろぉっ!!!」
と、実弥の厳しい声にハッと我に返った。
そうだ…自分は医者じゃない……殺すことはできても救う事などできやしないのだ…。
が、可能性が少しでもあるのなら、義勇が少しでも命を永らえる事ができるなら、どんな小さな可能性にもすがりたかった。
そんな状態で丸一日目を覚ます事なく眠り続けた義勇がようやく目を覚ました時は、安堵のあまり錆兎の方が気を失いそうになった。
それをなんとか堪えて
「義勇…痛くはないか?辛くはないか?俺の事がわかるか?」
と聞いてみるが、まだぼ~っとしているようで、反応が薄い。
ひどく頼りない目で自分を見上げる天使の愛らしさと痛々しさ。
何故この子は自分がこの子を失って大丈夫だなどと思えるのだろう。
「義勇、ダメだ…。これはダメだぞ?
お前は病身なんだから、こんな無理をしていたら本当に死んでしまうぞ。
頼むから…。もうこんな真似は二度としないでくれ」
今こうやって命を繋いでいるのは奇跡だ。
もし例の医者が義勇にGPSをつけたりするような輩じゃなかったとしたら…極々普通の善良な医師が義勇の手術を担当していたら、確実に今回の事で義勇は命を落としていた。
それを想像しただけで体中の血が凍りついて、カチカチになった心臓が割れて粉々に壊れそうになるのに…。
乱暴に触れたら折れてしまいそうな細い手をおそるおそる取ると、自らの額に押し当てて、まだ血の通っている温かさがある事を実感する。
しかし次の瞬間…
握った手に不自然に力が入って、慌てて顔をあげると苦しそうに眉を寄せる義勇。
周りの機械がピーピー緊急事態を告げる。
「義勇っ!!義勇っ、どうしたんだっ?!!!」
反射的にナースコールを押すとカナエが駆け込んでくる。
「義勇っ!!!嫌だっ!!いかないでくれっ!!!!」
「鱗滝君っ、落ち着いてっ!!」
カナエに引き離されそうになって、錆兎はそれを突き飛ばした。
「義勇っ!!義勇っっ!!!!」
離されたら連れて行かれてしまう…そんな錯覚に陥ってパニックを起こしかけたが、
「黙れっ!!死なせたくなければ、向こうの部屋で大人しくしてろぉっ!!!」
と、実弥の厳しい声にハッと我に返った。
そうだ…自分は医者じゃない……殺すことはできても救う事などできやしないのだ…。
「すまん……ごめんな、胡蝶……。」
謝罪をして突き飛ばしたカナエを助け起こすと、カナエは
「ううん。大丈夫よ、鱗滝君。
私も…きっと義勇君も大丈夫だから、居間で待っててくれる?
宇髄君も呼んでおくから」
と慰めるような笑みを浮かべて、錆兎を居間へとうながした。
謝罪をして突き飛ばしたカナエを助け起こすと、カナエは
「ううん。大丈夫よ、鱗滝君。
私も…きっと義勇君も大丈夫だから、居間で待っててくれる?
宇髄君も呼んでおくから」
と慰めるような笑みを浮かべて、錆兎を居間へとうながした。
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