何もない見渡しの良い道路で、双方隠れることの出来ないような場所だ。
車はすぐ見つかった。
善逸を除く3人が揃って“私と不死川君のお花さん号”から降りると、止まっていた黒いセダンから降りてきた男。
驚いたようにその人物を見て口を開いたのはカナエだった。
いつも笑みを描いている目がまん丸になる。
カナエが全く緊張した様子を見せないので、危険な人物ではないと判断したのだろう。
「何だぁ?胡蝶の知り合いなのかぁ?」
と、実弥は不愛想なその男と驚いた顔のカナエを見比べて、ややホッとした表情でそう聞いた。
しかし当のカナエは驚きから回復すると、少し困ったような笑みを浮かべる。
「知り合いと言えば知り合いなんだけどね。
ホワイトアースの医師の養成学校で同級だった人なのよ。
いつも主席を争ってた優秀な人で…」
「…その節は世話になった」
カナエの言葉を遮って、男はそう言って頭を下げた。
「お前、ポヨポヨ頭なのに、そんな優秀な奴の世話なんかしたんだ?」
と、失礼な実弥の発言に
「ひどいわ。私だって医学の成績は悪くなかったんだから」
と、カナエはきゅっと握り締めた両手のこぶしで実弥のしっかりと厚い胸板をぽこぽこ叩く。
それに対して痛くもなさそうではあるが、形ばかり、いてて、と苦笑する実弥。
普段ならそんな二人を生温かい目で見守る錆兎ではあるが、今はさすがにそんな気分でもなく、珍しくむすりと
と、カナエはきゅっと握り締めた両手のこぶしで実弥のしっかりと厚い胸板をぽこぽこ叩く。
それに対して痛くもなさそうではあるが、形ばかり、いてて、と苦笑する実弥。
普段ならそんな二人を生温かい目で見守る錆兎ではあるが、今はさすがにそんな気分でもなく、珍しくむすりと
「痴話げんかは帰ってからやってくれ。
とりあえず、カナエの友人ということなら助けてくれたということでいいんだな?
確かに基地に忍び込んで連れ出したわけではなし、誘拐とか能動的な行動と断定するのは早かったな」
と、幼馴染二人に言ったあとに、猗窩座を振り返って確認を取った。
「…結果的にはそういうことになるな。
別段、助けようと思って助けたわけでもないが…。
一応、冨岡義勇の心臓の手術をしたのも俺だしな」
「ええ~?!!」
猗窩座のその言葉には錆兎や実弥だけではなく、カナエも目を丸くした。
「あなた…あちらの軍についたんじゃなかったのっ?!
今、中立地帯で仕事しているのっ?!」
「へ?敵軍の人間なのかぁっ?!」
と言う実弥はスルーで、猗窩座はカナエに視線を向ける。
「受けた恩はどこかで返しておきたいし、以前そう言った時にお前が言ったんだろう?
自分には返す必要はないが、どうしても返したいと言うなら今目の前にいる必要としている人間に代わりに返せと。
だからお前と一緒だ。休暇を利用しての中立地帯の医療の手伝い。
まあ、一部実益も兼ねさせてもらってはいるが。
この少年の件とかはな…」
「…どういう意味だ…」
そこでそれまで無言だった錆兎が一歩前に出かけて、実弥に止められる。
「あいつに何かしたのか?」
きつくなる錆兎の視線にもこたえずに、猗窩座は初めて口元だけだが笑みをつくる。
「心臓の手術するついでに少々細工をな。
冨岡義勇の心臓には少々音が拾えて位置がわかる機械が埋めてある。
その上で手術が終わった時、シーライトからサンルイまでの旅行を薦めてみただけだ。
一応、本業は軍人だからな。
受け持った何人かの患者には同じ事してる。
一人くらいひっかかればいいと思ってな」
「つまり…本人にはそうとわからないように情報を流させていた言うことか?」
「まあそういうことだな。
だから冨岡が貴様に迷惑かけるからと基地出たのも早々にわかったし、拾ってみた」
「ようは…鱗滝君の情報を得るためいう理由だとしても、あの子を助けてくれたたのね」
殺気だったままの錆兎と対照的に、カナエの顔には柔らかい感謝のような表情が浮かんでいる。
それは猗窩座にしてみれば意外な解釈だったのかもしれない。
驚きにやや目を見開いた。
「そんな可愛いモンじゃねえだろぉよぉ?」
そこでそんな空気を破るように実弥の緊迫した低い声がそう言葉を紡ぐと、猗窩座はハっと我に返って
「そうだな」
と肯定する。
「なんでもいい。
俺のところから持っていきたいものがあるのなら、情報でも金でも何でも持っていけ。
まあ実働部隊で放り込まれる先の諸々は直前に知らされるから、今の段階で大した情報は持っていないがな。
金ならあるだけやる。義勇を返してくれ」
猗窩座と実弥のやりとりなどどうでもいいとばかりに言う錆兎に、猗窩座はやはり淡々と
とりあえず、カナエの友人ということなら助けてくれたということでいいんだな?
確かに基地に忍び込んで連れ出したわけではなし、誘拐とか能動的な行動と断定するのは早かったな」
と、幼馴染二人に言ったあとに、猗窩座を振り返って確認を取った。
「…結果的にはそういうことになるな。
別段、助けようと思って助けたわけでもないが…。
一応、冨岡義勇の心臓の手術をしたのも俺だしな」
「ええ~?!!」
猗窩座のその言葉には錆兎や実弥だけではなく、カナエも目を丸くした。
「あなた…あちらの軍についたんじゃなかったのっ?!
今、中立地帯で仕事しているのっ?!」
「へ?敵軍の人間なのかぁっ?!」
と言う実弥はスルーで、猗窩座はカナエに視線を向ける。
「受けた恩はどこかで返しておきたいし、以前そう言った時にお前が言ったんだろう?
自分には返す必要はないが、どうしても返したいと言うなら今目の前にいる必要としている人間に代わりに返せと。
だからお前と一緒だ。休暇を利用しての中立地帯の医療の手伝い。
まあ、一部実益も兼ねさせてもらってはいるが。
この少年の件とかはな…」
「…どういう意味だ…」
そこでそれまで無言だった錆兎が一歩前に出かけて、実弥に止められる。
「あいつに何かしたのか?」
きつくなる錆兎の視線にもこたえずに、猗窩座は初めて口元だけだが笑みをつくる。
「心臓の手術するついでに少々細工をな。
冨岡義勇の心臓には少々音が拾えて位置がわかる機械が埋めてある。
その上で手術が終わった時、シーライトからサンルイまでの旅行を薦めてみただけだ。
一応、本業は軍人だからな。
受け持った何人かの患者には同じ事してる。
一人くらいひっかかればいいと思ってな」
「つまり…本人にはそうとわからないように情報を流させていた言うことか?」
「まあそういうことだな。
だから冨岡が貴様に迷惑かけるからと基地出たのも早々にわかったし、拾ってみた」
「ようは…鱗滝君の情報を得るためいう理由だとしても、あの子を助けてくれたたのね」
殺気だったままの錆兎と対照的に、カナエの顔には柔らかい感謝のような表情が浮かんでいる。
それは猗窩座にしてみれば意外な解釈だったのかもしれない。
驚きにやや目を見開いた。
「そんな可愛いモンじゃねえだろぉよぉ?」
そこでそんな空気を破るように実弥の緊迫した低い声がそう言葉を紡ぐと、猗窩座はハっと我に返って
「そうだな」
と肯定する。
「なんでもいい。
俺のところから持っていきたいものがあるのなら、情報でも金でも何でも持っていけ。
まあ実働部隊で放り込まれる先の諸々は直前に知らされるから、今の段階で大した情報は持っていないがな。
金ならあるだけやる。義勇を返してくれ」
猗窩座と実弥のやりとりなどどうでもいいとばかりに言う錆兎に、猗窩座はやはり淡々と
「もちろん返すぞ。
元々そのつもりだったしな。
とりあえずここに寝かせるから俺が車で離れるまでは動くなよ?
ちゃんと酸素マスクもつけさせてるが、俺を攻撃したら自動で酸素が止まるようになってるからな。念のため」
と、道路にコートを脱いで後部座席から義勇を抱えてくると、その上に寝かせる。
それから猗窩座が車の助手席に乗り込むと車はゆっくりバックをし、それからターンするとそこからは急速に走り去った。
元々そのつもりだったしな。
とりあえずここに寝かせるから俺が車で離れるまでは動くなよ?
ちゃんと酸素マスクもつけさせてるが、俺を攻撃したら自動で酸素が止まるようになってるからな。念のため」
と、道路にコートを脱いで後部座席から義勇を抱えてくると、その上に寝かせる。
それから猗窩座が車の助手席に乗り込むと車はゆっくりバックをし、それからターンするとそこからは急速に走り去った。
Before <<< >>> Next (4月29日公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿