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一般人初心者ですが暗殺業務始めます21_愛想のない男

異常に気づいたのは外に出てすぐの事だった。
幌をかけただけの荷台に乗っていた義勇は急に息苦しさに襲われた。


何かおかしい…。
そんな事を思うが、すぐ色々考える余裕もなくなる。

苦しさに脂汗が全身を伝い震えが止まらない。

荷台で身を丸くしていると、急にトラックが止まって、隠れる間もなく幌が開く。


「お前は馬鹿か。なんのために無駄な開胸手術までしたんだ」
遠くで聞いたことのあるような声がして、何かが口元にあてられる。

「とりあえず…移動するぞ。
その酸素マスクは自分で持っていろ。今の貴様には必要なものだからな」

と言われて震える手でマスクを押さえると、見覚えのある…しかしここにいるはずのない男が憮然とした表情で義勇を見下ろして義勇を横抱きにしてトラックの荷台から下ろすと、隣に止めてある車へと運んだ。

ちらりと横目で見ると、トラックの運転席は運転手の血に染まっている。
どうやら彼が殺ったらしい。
医者のくせに、顔色一つ変えずに人を殺す事もできるのだ。

いや、あるいは本業は医者じゃないのかもしれない。

猗窩座狛治という名は本名にしては珍しく、あるいは偽名なのかも…と思うが、まあそれはどうでもいいことだ。

彼は1度会ったきり、後にも先にも二度と会うことはないはずの人間だった。


「猗窩座先生……何故…ここ…に？」

後部座席に寝かされてまだ苦しい息の下でそう聞くと、今回の作戦で外に出る前の義勇に開胸手術を施した自軍一の腕前を持つと言われる…しかし自軍の誰しもから恐れられている愛想のない男は、やはりニコリともせずに言った。

「そんなことはどうでもいい。
だが俺の計画のためには貴様には生きてあちらの軍に戻ってもらわないと困る」

猗窩座はそれだけ言うと、義勇の手からマスクを取り上げる。
どうやら車内では普通に呼吸ができるようだ。

だが猗窩座はマスクなどしていなかったし、トラックの運転手も平気だったようなので、義勇の方に何かあったのだろうか…。

そんなことを考えていると、腕にチクリと小さな痛みが走る。


「少し…眠っていろ」
猗窩座の淡々とした声音。

もしかして…あの開胸手術の時に何か？とふとそんな考えが頭に浮かんだが、次の瞬間、義勇の意識は闇に落ちていった。

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