──お~、今度は人間かよ。珍しい。
と、義勇を紹介されるなりそう言って、警戒する様子もなくくしゃくしゃと義勇の頭を撫でまわす。
そして……
俺はこんな奴ら相手に苦戦してたのか…それが正直な感想だった。
一応身分は偽造しているものの、数日前に会ったばかりの軍とは無関係な人間を基地内の宿舎という極々プライベートな空間に立ち入らせるどころか暮らさせる事にこれまで会った5人は全く疑問を抱いていないようだった。
軍がホワイトアースの入院患者だったという義勇の設定を裏付けるために選んだ病気はどうやら彼らのうちの一人、カナエの実妹の死亡原因と一緒らしく、バレるのではないかとひどく焦ったが、全くバレる気配がないどころか、かえって気を使われる。
これで軍では屈指の名医らしいから、本当に大丈夫なのか?と少し心配になった。
先日料理に少しだけ失敗してからというものの料理は危ないからとさせてもらえないが、それ以外の生活は比較的自由だ。
自室のPCで何でも好きな物を買っていいと言われてカードを渡されているし、これといって仕事をさせられるわけでもない。
ゆえに日々刺繍や編み物などをして過ごしている。
というか…錆兎には、日中自分が仕事でいない間も義勇は家にいるのだからせめて自室には鍵をかけておけ…と切実に思う。
下手するとPCもつけっぱなしのまま出かけるなっ。
軍の方がパスつけてても意味が無い。
機密を引き出されたらどうするんだ!
本当に試されているんじゃないかと思う。
そのくらい危機感がない。
むしろそのへんの兵の方がよほど考えているんじゃないだろうか…。
たまには日に当たった方がいいと善逸に連れだされて一緒に基地内の庭を散歩していた時だった。
たまたま休んだカフェで耳に入ってきた雑談。
「鱗滝中佐…今度は人間拾ってきたんだって?」
軍がホワイトアースの入院患者だったという義勇の設定を裏付けるために選んだ病気はどうやら彼らのうちの一人、カナエの実妹の死亡原因と一緒らしく、バレるのではないかとひどく焦ったが、全くバレる気配がないどころか、かえって気を使われる。
これで軍では屈指の名医らしいから、本当に大丈夫なのか?と少し心配になった。
先日料理に少しだけ失敗してからというものの料理は危ないからとさせてもらえないが、それ以外の生活は比較的自由だ。
自室のPCで何でも好きな物を買っていいと言われてカードを渡されているし、これといって仕事をさせられるわけでもない。
ゆえに日々刺繍や編み物などをして過ごしている。
というか…錆兎には、日中自分が仕事でいない間も義勇は家にいるのだからせめて自室には鍵をかけておけ…と切実に思う。
下手するとPCもつけっぱなしのまま出かけるなっ。
軍の方がパスつけてても意味が無い。
機密を引き出されたらどうするんだ!
本当に試されているんじゃないかと思う。
そのくらい危機感がない。
むしろそのへんの兵の方がよほど考えているんじゃないだろうか…。
たまには日に当たった方がいいと善逸に連れだされて一緒に基地内の庭を散歩していた時だった。
たまたま休んだカフェで耳に入ってきた雑談。
「鱗滝中佐…今度は人間拾ってきたんだって?」
笑って話している相手はおそらく軍の兵士で…
「あ~、今回は人間なのか~。じゃあいつもみたいに死なれて1ヶ月再起不能もないか~」
と話しかけられた方も苦笑している。
錆兎が色々拾ってきては溺愛するのはどうやら有名らしい。
「あ~、今回は人間なのか~。じゃあいつもみたいに死なれて1ヶ月再起不能もないか~」
と話しかけられた方も苦笑している。
錆兎が色々拾ってきては溺愛するのはどうやら有名らしい。
エリート軍人らしからぬそんな馬鹿馬鹿しいくらい情の深いところが軍の中で好かれている要因の一つであるようだ。
「あ~でもさ…」
思わずこっそり吹き出しかけた義勇の耳に再び入ってきたのは、少し笑みを消した一人の兵の声。
「人間てことは…無条件に愛玩されてくれるわけじゃないんだろ?
身分や金目当てって事だってあるし、最悪敵のスパイとかさ、そんな可能性だってあるわけだから…」
まさに今の自分の状況と合致するその意見に義勇はさすがに青くなった。
「まああの人のことだから暗殺とかなら簡単に殺られたりしないだろうけど、軍にスパイ引き込んじゃったりしてたら、いくら産屋敷総帥のお気に入りでも責任問題だよなぁ…」
ミルクティを持つ手が震えた。
錆兎達が当たり前に気にしていなかったので、誰も自分に疑いを持っていないと当たり前に思っていたが、普通に考えれば疑って当たり前である。
初めて外に出てわけも分からずなし崩し的に順調に相手に接触できていたので、敵の懐に潜入している危険についてあまりに想像をしていなかった。
もし自分の身分がバレたら……ズキンと胸が痛んだ。
錆兎やカナエ…実弥に、今隣で微笑んでいる善逸もどんな視線を自分に向けるのだろう?
周りの音が遠くに聞こえる。
まるで空気が押し寄せてくるような圧迫感と息苦しさに思わずぎゅっと目をつむると、視界が白くなって吐き気がした。
「あ~でもさ…」
思わずこっそり吹き出しかけた義勇の耳に再び入ってきたのは、少し笑みを消した一人の兵の声。
「人間てことは…無条件に愛玩されてくれるわけじゃないんだろ?
身分や金目当てって事だってあるし、最悪敵のスパイとかさ、そんな可能性だってあるわけだから…」
まさに今の自分の状況と合致するその意見に義勇はさすがに青くなった。
「まああの人のことだから暗殺とかなら簡単に殺られたりしないだろうけど、軍にスパイ引き込んじゃったりしてたら、いくら産屋敷総帥のお気に入りでも責任問題だよなぁ…」
ミルクティを持つ手が震えた。
錆兎達が当たり前に気にしていなかったので、誰も自分に疑いを持っていないと当たり前に思っていたが、普通に考えれば疑って当たり前である。
初めて外に出てわけも分からずなし崩し的に順調に相手に接触できていたので、敵の懐に潜入している危険についてあまりに想像をしていなかった。
もし自分の身分がバレたら……ズキンと胸が痛んだ。
錆兎やカナエ…実弥に、今隣で微笑んでいる善逸もどんな視線を自分に向けるのだろう?
周りの音が遠くに聞こえる。
まるで空気が押し寄せてくるような圧迫感と息苦しさに思わずぎゅっと目をつむると、視界が白くなって吐き気がした。
Before <<< >>> Next (4月21日公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿