錆兎の寝室の隣に用意された義勇の私室はそれまでの自軍での部屋とは違い、随分ファンシーな感じの部屋だ。
毛足の長い絨毯に動物スリッパ。
ベッドはふかふか、ベッドカバーのキルトも可愛らしく、なんとティディベアまでいる。
ベッドで過ごすことも多いだろうとの気遣いなのか、ベッドから手を伸ばせば取れる位置にある棚には様々な本。
若干年齢を間違われているような…子どもっぽさの残る部屋だが、敵軍の人間としては申し訳ないくらい快適だ。
食事は宿舎の外に出れば基地内にもショッピングセンターやレストランなどがあるらしいが、今はまだ安静にと言われて、錆兎が暇な時は錆兎が室内のキッチンで作るし、忙しい時は宇髄や善逸、それに実弥が作って持ってきてくれる。
それを見て外の人間というのは普通に料理ができるものらしい…というか、料理というのは普通にできて当たり前なのか…と思った。
そこで自分も…と思いついた時に、教えてもらう相手としてまず浮かんだのがカナエだった。
女性だというのもあるが、とても優し気で家庭的な女性に見える。
エプロンがとても似合いそうだし、男性陣よりは良いだろう。
そう思って、錆兎が居ない時にこっそりお願いしてみたら、
「まあっ!私に料理を?!ええ、ええ、ぜひっ!嬉しいわぁ」
と、随分と喜ばれた。
にこにこと優しい雰囲気がどこか幼い頃に亡くなった姉に似ていて、元々は世話になっているから少しでも恩返しをと学ぼうと思った料理だが、こんな風にニコニコとお姉さんオーラ満載の女性に何かを教えてもらうこと自体が随分と楽しい気がしてくる。
たとえ…
「あのね、あのね、これ、義勇ちゃんに似合うと思って…。
色違いのお揃いよ♪」
と、可愛らしいレースのエプロンを渡されても…だ。
いや、それさえも恥ずかしいが嫌ではない。
だって義勇がそれを身に着けると、
「…妹とね、小さい頃からお揃いの色違いをよく身につけてたの。
同じモノでも一緒につけるとなんだか楽しくてね」
と、カナエが少し悲しそうに…でもどこか嬉しそうに笑ってくれるから…。
エプロンがとても似合いそうだし、男性陣よりは良いだろう。
そう思って、錆兎が居ない時にこっそりお願いしてみたら、
「まあっ!私に料理を?!ええ、ええ、ぜひっ!嬉しいわぁ」
と、随分と喜ばれた。
にこにこと優しい雰囲気がどこか幼い頃に亡くなった姉に似ていて、元々は世話になっているから少しでも恩返しをと学ぼうと思った料理だが、こんな風にニコニコとお姉さんオーラ満載の女性に何かを教えてもらうこと自体が随分と楽しい気がしてくる。
たとえ…
「あのね、あのね、これ、義勇ちゃんに似合うと思って…。
色違いのお揃いよ♪」
と、可愛らしいレースのエプロンを渡されても…だ。
いや、それさえも恥ずかしいが嫌ではない。
だって義勇がそれを身に着けると、
「…妹とね、小さい頃からお揃いの色違いをよく身につけてたの。
同じモノでも一緒につけるとなんだか楽しくてね」
と、カナエが少し悲しそうに…でもどこか嬉しそうに笑ってくれるから…。
しかし、そのあとに続く
──一緒にいる時間の長い不死川君にも同じエプロンをプレゼントしたことあるんだけど、つけてくれなくて…
と言うのは聞かなかったことにする。
義勇の姉の蔦子も義勇に色々お揃いでつけさせるのが好きだったから、なんだか姉が戻ってきたようで義勇もなんだか浮かれてしまう。
こうして二人で約束をして、錆兎がいない時にカナエと一緒にこっそり料理をしてみたのだが、何故か黒い物体が出来上がった。
ついでにキッチンが真っ黒になった。
すごい爆発音もしたので驚いて駆けつけた善逸がその無残に変貌を遂げた元素材とキッチンの惨状を見て泣いて、錆兎は色々がそんなまるで危険な実験に失敗したかのような状態になってなお義勇自身が無事だった事に安堵して泣いた。
そしてせっせとキッチンを掃除する実弥の手際が見かけによらずあまりに良すぎて、それに少し驚く。
そして…これは錆兎にくれぐれもとお願いされた。
二度と料理をしようとしないでくれ…と。
隣では実弥がカナエに同じことを言っている。
──エプロンまではいい。それは許す。似合うからなぁ。でも火はやめてくれぇ
とガシっとカナエの両肩に両手を置いて言う実弥。
錆兎も
「エプロン、可愛いな。胡蝶とお揃いか。
今度はお前が手を出しても危なくないように料理を作っておいておくから、器によそって運んだり、熱くない飲み物を注いだりとか、そういうことをしような?
火はやめよう」
と、同じようなことを義勇に言う。
いや…エプロンをつけてみたかったわけではない。
単に料理くらい出来た方がいいと思っただけなのだ。
と、甚だ不本意ではあったのだが、家主の希望では仕方ない。
義勇は仕方なく了承した。
(ま…まあ、別にここの家政婦をするためにいるわけじゃないからいい)
と、秘かに傷ついたプライドを慰めながらも、じゃあここで何をすればいいんだ?と自問自答してみる。
なし崩し的に連れてこられてなし崩し的に生活しているわけだが、自分は本来敵方の人間だ。
1年以内に錆兎を排除しなければリストラで路頭に迷うのだ。
そう、すっかり初心を忘れていた。
とは言うものの…相手は自分は武装していない状態で多数の武装した敵を倒せてしまうようなつわものだ。
正攻法で行って勝てるわけがない……。
とりあえず…弱点を探るところから始めるか…。
義勇はそう決意した。
そして…快適スパイ生活にすっかり慣れつつあるのだった。
──一緒にいる時間の長い不死川君にも同じエプロンをプレゼントしたことあるんだけど、つけてくれなくて…
と言うのは聞かなかったことにする。
義勇の姉の蔦子も義勇に色々お揃いでつけさせるのが好きだったから、なんだか姉が戻ってきたようで義勇もなんだか浮かれてしまう。
こうして二人で約束をして、錆兎がいない時にカナエと一緒にこっそり料理をしてみたのだが、何故か黒い物体が出来上がった。
ついでにキッチンが真っ黒になった。
すごい爆発音もしたので驚いて駆けつけた善逸がその無残に変貌を遂げた元素材とキッチンの惨状を見て泣いて、錆兎は色々がそんなまるで危険な実験に失敗したかのような状態になってなお義勇自身が無事だった事に安堵して泣いた。
そしてせっせとキッチンを掃除する実弥の手際が見かけによらずあまりに良すぎて、それに少し驚く。
そして…これは錆兎にくれぐれもとお願いされた。
二度と料理をしようとしないでくれ…と。
隣では実弥がカナエに同じことを言っている。
──エプロンまではいい。それは許す。似合うからなぁ。でも火はやめてくれぇ
とガシっとカナエの両肩に両手を置いて言う実弥。
錆兎も
「エプロン、可愛いな。胡蝶とお揃いか。
今度はお前が手を出しても危なくないように料理を作っておいておくから、器によそって運んだり、熱くない飲み物を注いだりとか、そういうことをしような?
火はやめよう」
と、同じようなことを義勇に言う。
いや…エプロンをつけてみたかったわけではない。
単に料理くらい出来た方がいいと思っただけなのだ。
と、甚だ不本意ではあったのだが、家主の希望では仕方ない。
義勇は仕方なく了承した。
(ま…まあ、別にここの家政婦をするためにいるわけじゃないからいい)
と、秘かに傷ついたプライドを慰めながらも、じゃあここで何をすればいいんだ?と自問自答してみる。
なし崩し的に連れてこられてなし崩し的に生活しているわけだが、自分は本来敵方の人間だ。
1年以内に錆兎を排除しなければリストラで路頭に迷うのだ。
そう、すっかり初心を忘れていた。
とは言うものの…相手は自分は武装していない状態で多数の武装した敵を倒せてしまうようなつわものだ。
正攻法で行って勝てるわけがない……。
とりあえず…弱点を探るところから始めるか…。
義勇はそう決意した。
そして…快適スパイ生活にすっかり慣れつつあるのだった。
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