寮生は姫君がお好き66_驚きの姫君障害物競争

さて、こちらはそれから少し遅れた、うんていを終えて壁に向かう煉獄。
ここで姫君としての格好があだになる。

一応大きくスリットの入ったチャイナドレスということもあり、無理をすれば足を開く事も可能だが、壁を登ろうとすると長い裾がまとわりついて上手く登れない。

それでなくとも足場が悪いので、ちらちらと足元で揺れる布地に集中できず、そうこうしているうちに、後続も追い付いてきそうで、やや焦る。

ドレスが本当に邪魔だ…。
面倒くさいっ!!

そう思えば彼的にはやる事は一つ。


いっそのこと邪魔な布地を引きちぎってしまおうとスリットのあたりに手をかけると、すでにゴールした宇髄が悲鳴。

「スト~~ップッ!!!!
お前は姫君だからなっ?!!
ゴリプリでも、姫君だからっ!!
一応姫君がビリビリの服はマジまずいぞっ!!!
競技をリタイアすることより姫君をリタイアの方がルールとしてNGだからっ!!
それするくらいなら競技の方を今すぐリタイアしてくれっ!!」

「ふむ…ダメか。では仕方ない。力技か…」
と、一応寮長の意向は尊重することにしたのだろう。
煉獄は壁の上方を見あげて指をばきぼき鳴らした。


その彼の反応に一体何が起こるのだろうと会場中の視線が煉獄に集まる。
そんな視線も気にすることなく、煉獄はグッと手に力を込めた。
そして…足を使わずに握力と腕力だけで壁を登っていく。


「ええええ~~っ?!!!!」
そのむちゃくちゃな方法に、全校生徒が度肝を抜かれた。

そして響く感嘆のため息。
なにはともあれすごい!というのは皆が認めた瞬間である。


額に汗しながら手と腕の力だけを頼りに着実に一歩一歩壁を登っていく姫君。
壁の頂上にたどり着いた時には、会場中から拍手喝さいが沸き起こった。


「…あのウェイトを手の力だけで支えるってのは、ありえんくらいすごいな」
と、錆兎ですら驚きの声をあげている。

「勝利がなくなっても勝負を捨てない。
その姿勢が次に結びつく感じだな。
さすが俺ら銀虎の姫君だけあるわっ」
と、すでにゴールしている宇髄もそう言ってぴゅぅ~っと口笛を吹いた。

さすがに腕だけで登るにはそれなりの時間がかかり、その間に高校生組2人に抜かされはしたものの、その後のハードルはスカートをたくしあげながらもなんとか超えて、5位でゴール。

その後1名ゴールして、他は一部途中でリタイア、一部は時間切れで競技が終了した。


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