自分達より3歳も年下だというのに…しかも笑顔すら向けてきているというのに圧がある。
それでもずっとこうしているわけにはいかない。
そう、飽くまでルールだ。
自分がそう望んだわけではなく、そういう競技でたまたま引いてしまったお題を口にするだけだ。
「…あ、あの……」
「……」
「ひ……」
「ひ?」
「姫君をっ!!」
「「はああぁ??!!!!」」
思い切り過ぎて思いがけず大声になったそれに、それまですでに茂部太郎に注意を向けていなかった皇帝まで反応して、兄弟弟子が刺々しさ+威圧感を前面に聞き返してくる。
1人でも泣きそうなのに、2人揃うと恐ろしすぎて失神しそうだ…。
しかしそこで天使の声…
「姫君って…俺で良いのか?」
と、当たり前に腰を浮かせかける自寮の至宝。
ああ…優しい…可愛い…天使……
尊すぎて涙がドバーっと溢れ出た。
それを勘違いしたらしい。
「えっと…俺じゃダメなら…無一郎や善逸までなら頼んであげられるけど……」
と、困った顔。
ダメじゃない、ダメなわけない!!!
茂部太郎はブンブンと首を横に振って、泣きながら言った。
「ダメじゃないですっ!!
お題が銀狼寮の姫君で……」
と、その言葉に
「じゃあ、大丈夫だな」
と、ほわっと浮かべる笑顔の可憐さ。
そんな姫君に癒されすぎて、茂部太郎はすっかり忘れていた。
目の前で殺気をみなぎらせているセコム達の存在を…
じゃ、そういうことで行って来る!と、立ち上がりかける姫君の肩を皇帝はしっかりと掴んで座り直させ、姫君所有の一枚の盾を自任する炭治郎は、そんな2人と外敵とみなした茂部太郎の間にズザっと身を割りこませて、姫君をガードする体勢に入った。
「…え?」
と、いきなり殺気立つ2人にきょとんと眼を丸くする姫君。
それに皇帝錆兎はやや引きつった笑みを浮かべた。
「…あ、あの……」
「……」
「ひ……」
「ひ?」
「姫君をっ!!」
「「はああぁ??!!!!」」
思い切り過ぎて思いがけず大声になったそれに、それまですでに茂部太郎に注意を向けていなかった皇帝まで反応して、兄弟弟子が刺々しさ+威圧感を前面に聞き返してくる。
1人でも泣きそうなのに、2人揃うと恐ろしすぎて失神しそうだ…。
しかしそこで天使の声…
「姫君って…俺で良いのか?」
と、当たり前に腰を浮かせかける自寮の至宝。
ああ…優しい…可愛い…天使……
尊すぎて涙がドバーっと溢れ出た。
それを勘違いしたらしい。
「えっと…俺じゃダメなら…無一郎や善逸までなら頼んであげられるけど……」
と、困った顔。
ダメじゃない、ダメなわけない!!!
茂部太郎はブンブンと首を横に振って、泣きながら言った。
「ダメじゃないですっ!!
お題が銀狼寮の姫君で……」
と、その言葉に
「じゃあ、大丈夫だな」
と、ほわっと浮かべる笑顔の可憐さ。
そんな姫君に癒されすぎて、茂部太郎はすっかり忘れていた。
目の前で殺気をみなぎらせているセコム達の存在を…
じゃ、そういうことで行って来る!と、立ち上がりかける姫君の肩を皇帝はしっかりと掴んで座り直させ、姫君所有の一枚の盾を自任する炭治郎は、そんな2人と外敵とみなした茂部太郎の間にズザっと身を割りこませて、姫君をガードする体勢に入った。
「…え?」
と、いきなり殺気立つ2人にきょとんと眼を丸くする姫君。
それに皇帝錆兎はやや引きつった笑みを浮かべた。
「姫君は簡単に貸し出せるものではないからな」
と、分かっている事ではあるが、口でそう断ってくれるあたりはまだ思ったよりは平和的な対応なのだろう。
問答無用で半殺しかと思っていた。
その事にホッとする茂部太郎だが、問題は全く解決していない。
このままでは都(校舎)落ちで、下手をすれば部員が集まっての活動という形を取る事自体が困難になる。
そんな複雑な心中を救い上げるように、優しい優しい姫君は
「でも…行かないと彼の部が困るんじゃないか?」
と進言してくれる。
ああ尊い…本当に尊い…
これからは朝起きてすぐと夜寝る前は姫君の部屋に向かって拝む事にしよう…
と、茂部太郎は感涙する。
茂部太郎の言葉は問答無用で却下でも、姫君の言葉は無碍には出来ないらしい。
皇帝は苦虫をかみつぶしたような顔で茂部太郎を見下ろした。
そして問う。
「確か借り物競走は借り物を手にグランド1周なわけだが…一般寮生の分際で姫君を独占して、あまつさえその手に触れてグランドを1周するなどと言う暴挙が許されると、貴様は思っているわけだ?」
心臓が凍りつきそうな気がしてくるレベルの冷やかな声と視線。
わかってます、許されません、許されませんって……
俺だって自分がモブだってことは重々承知しているので、姫君は遠くで愛でるモノ。
決して触れてはいけない存在だってことくらいはわかっているし、むしろそうしたいのは山々です。
自分は舞台に乗りたくない、乗りたくないんです~~~!!!!
と、訴えたいのだが、そう訴えるのも怖い。
プルプルとその場で恐怖に震えていると、またふわりと声がした。
「じゃあ…錆兎が間に入れば良いんじゃないか?
俺と直接手を繋がずに…」
と、良い事を思いついたとばかりに笑顔で皇帝を見あげる姫君。
その愛らしさは並ぶものなし、プライスレス。
「俺が…?」
少し驚いたように自分で自分を指さす錆兎に、姫君はうんうんと頷いた。
「どうせなら勝ちたいな。
この格好じゃ早く走れないから…錆兎が俺を抱えて走る!
…だめか?」
そんな可愛い様子で言われて否と言えるはずもない。
というか、なんだか皇帝が嬉しそうな顔になった気がするのは気のせいだろうか…
「ダメじゃないっ!
言っただろう?姫さんが望む事なら叶えてやるって。
よしっ!急ぐぞっ!
炭治郎、俺は姫さんを抱えるから、お前はそいつを担いで俺のシャツの端でも握って走れっ!
そいつが走るより早いっ!!」
え?…ええええっ?!!!!
声をあげる間もなく、茂部太郎の視界が反転した。
気づけば、なんと炭治郎の肩に担がれている。
「よしっ!!他はまだ借り物見つけられてないっ!!
一気に走り抜けるぞっ!!」
「了解したっ!!!」
俄然やる気を出してしまった皇帝とその弟弟子が、それぞれ姫君を横抱きに、そして茂部太郎を肩に担いだ状態で、トラックを1周疾走する。
眼がグルグル回る。
すごい速さで景色が通りすぎていく。
2人とも人を抱えている速さではない。
ありえないっ!!!
周りはその様子にある者達は歓声を、ある者達は驚きの声を、なかには悲鳴をあげる者もいる。
とにかく何がどうなっているのか、何故こうなったのか、茂部太郎には全く持ってわからないわけだが、会場は一気に大騒ぎに…
そして当たり前に一着でゴールした。
元々見つけにくいものばかりを借り物として指定しているため、他の部はまだ戻っていない。
そんななかでゴールした茂部太郎達を前に、
「…これは……いい…のか?」
と、教師が微妙な表情で顔を見合わせる。
が、
「借り物と一緒にトラック一周しろというだけで、選手自らが走れとは言ってないだろう?
それとも…よもや、互いに巻き込まない前提の寮の姫君を巻き込ませておいて、姫君自らに走れ、と?
返答次第では教師と言えども、銀狼寮を代表する寮長として断固として責任を追及させてもらうが?」
と、人類滅亡でもさせそうな迫力で言う錆兎に、
「う、うんうん、そうだよなっ!
渡辺が正しいっ!!
不可侵なはずの寮の象徴をNGにしなかった我々が全面的に悪い!
すまんな。来年からはお題に姫君もNGにしておくから」
と、彼らは急にひきつった顔に無理に笑みをはりつけて、ぶんぶんと首を縦にふった。
こうして次年度からは借り物のお題のNG項目に、寮長と副寮長も加えられる事になるのだが、ともあれ、姫君の優しさと皇帝とその弟の人並み外れた体力筋力のおかげで、同人活動同好会は無事、今後3年間は現在使っている校舎の片隅の部屋でひっそりと活動を続けられるようになったのである。
Before <<< >>> Next (3月21日公開予定)
0 件のコメント :
コメントを投稿