寮生は姫君がお好き51_錆兎の策略、トップでゴール

このごたごたで金組はトップ争いから脱落。
残るは銀虎寮と銀竜寮だ。

全部が銀側になった時点であとはもう忖度なし。
他をひたすら蹴落として順位をあげることとなる。

こうして2寮から攻撃を受けたのもあって時間を食ってそれでも炭治郎は銀虎を抜いて2番手で次の走者にバトンタッチ。

全身から汗を吹きだしながら、交代エリアで待機中の錆兎に

「トップじゃなくてすまん」
と、頭を下げるが、錆兎は

「いや、2寮に集中攻撃でつぶれずに切り抜けられただけで十分だ。
さすが炭治郎!さすが俺の弟弟子だっ!
筋トレ頑張った甲斐あったなっ!!」
と、くしゃくしゃと汗でびっしょりの炭治郎の頭を撫でまわした。


その後、第二走者で何故か遅れる銀狼寮。
順位は入れ代わり、1位が銀竜、2位が銀虎、3位が銀狼となる。

いったいどうしたんだ?!と、炭治郎は驚いた顔で錆兎の様子を見るも、隣で出番を待つ錆兎が抜かされた瞬間すら眉ひとつ動かさないところをみると、これも作戦の一つなのだろう。


そして第三走者。
ここで銀虎は寮長の宇髄の登場だ。

1位2位の2人が揃ってバトンタッチしたところで、それに視線を向けたまま、錆兎は独り言のように隣に立つ炭治郎に説明を始めた。


「たぶんな、ここで宇髄が仕掛ける。
銀虎はうちに金側の妨害が集中して遅れる事を前提に、作戦たててたんだろう。
トップは銀竜ってことで、ここで寮長の宇髄の投入で一気に銀竜に追いついて、ラストに寮長もってくる銀竜に逆転されないように、銀竜を徹底して潰す気だと思う。

だから、2番手にいて巻き込まれないように、第二走者には3位キープ出来る程度にスピード落として順位下げろと指示しておいた。
で、たぶんここで銀竜が脱落するから、俺にバトン渡すまでは銀虎との差をつけたまま2位をキープ。

宇髄以外の銀虎の走者なら俺の敵じゃないからな。
アンカーで一気にトップってわけだ」

「あなたって人は……」
炭治郎はそれを聞いて、はぁ~っと大きく息を吐きだした。


皆が皆、いかに他の妨害を極力さけつつ重い馬車をけん引して少しでも先に進むかで頭がいっぱいなところに、そんな戦略までたてているあたりが、普通じゃないと思う。

おそらく他の寮長はそこまで気が回っていない。

高3で寮長達のまとめ役でもある宇髄ですら、錆兎が予測した通り、目の前の銀竜寮の馬車を潰すのに頭がいっぱいのようだ。


そもそもが皆、銀狼がスタート時に一気に受ける金側の妨害を乗り越えることができるとは思っていなかったのだろう。
実際、金狼のフォローがなければさすがに炭治郎もつぶれていた。

だから、その後の銀狼の動向など気にもしていなかったこともあり、さすがの宇髄もよもや銀狼寮の馬車と、潰している間に抜かせない距離があいているのが、銀狼寮側の策略だなどとは思ってもみないのだろう。
普通に銀竜寮の馬役がバランスを崩して膝をついたのを横目に悠々とトップを独走していく。

それを追う銀狼寮の馬車はそこで宇髄の間合いに入らないよう、絶妙なバランスで距離を詰めていった。


そうしてラスト、アンカーでは、スタートの時点では10mほど後方にいた銀狼寮の馬車が銀虎寮から3mほどにその距離を詰めていた事で、ようやく全てに気づいたらしい。

「…錆兎…謀ったな…」
と、苦笑交じりに睨んで見せるも、すでにアンカーにバトンを渡した後なので、宇髄自身はどうする事も出来ない。

にやりと無言でバトンを受け取り、自寮の馬車を悠々追いかける錆兎に向かって舌打ちをした。


こうして一般の寮生と最強の寮長と称される男のアンカー勝負となれば、3mの差など差のうちに入らない。
あっという間に追いぬいていく。

もちろん妨害を仕掛けてみるという事も出来なくはないが、格闘技その他、力の勝負で一般の生徒が寮長に敵うわけはない。

下手をすればそれで返り討ちに遭うだけではなく、ダメージを負いすぎると他の寮に追いつかれて順位を落とす危険性すらある。

なので、銀虎寮はここでトップは諦め、2位をキープすることで妥協する事にしたらしい。


そして無理をせず錆兎を見送って、銀狼寮1位、銀虎寮2位でゴール。
その後、銀竜、金虎、金竜、ラストに金狼がヨタヨタとゴールした。


Before <<<  >>> Next (3月12日公開予定)



0 件のコメント :

コメントを投稿