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寮生は姫君がお好き43_姫君の衣装

（…か…わいい……）

翌日に体育祭を控えた夕方。
学校から戻ると透かしの入った綺麗な白い箱がリビングに…

「錆兎…これは？」
と、機嫌よさげに義勇の反応を窺っている錆兎に訊ねてみると、

「明日の銀狼寮の姫君の衣装。
開けてみろ」
と、義勇を箱の前に促した。


こうしておそるおそる蓋を開けると、中には真っ白なレースとフリル、リボンが詰まっている。

見た瞬間すでに可愛らしいそれを手にとって広げてみると、それはふわふわと愛らしいウェディングドレスだ。
ご丁寧にマリアベールまで付いている。


本人はひた隠しにしているが可愛いモノが大好きな義勇はあげそうになった歓声を慌てて飲み込むが、そんな義勇に気づいてか気づかないでか、錆兎はどこか満足そうに

「すごく綺麗だろう？
衣装は半月ほど前に、これも恒例の寮長による姫君の衣装争奪試合というものがあって、今年はテニス勝負だったんだけどな。
俺達の姫さんに一番似合う衣装をピックアップするのに、それに優勝して勝ち取って来たんだ」
と笑いながらそれを義勇の手から取って、義勇にあてて見せる。

「あ～、やはりすごく似合うなっ！可愛い！」

すごく嬉しそうにそう言う錆兎に、苦労してゲットしてきてくれただけに、謙遜でも『そんなことはない』と言うのは悪い気がして、すごくおこがましいし恥ずかしい気はしたものの、

「…ありがとう……」
と言うと、錆兎は手を胸元に添えて、

「どういたしまして。
お気に召していただけたならなにより」
と、恭しく礼をした。


そんな仕草も様になっていて、しかも武道だけでなくテニスまで強いなんて本当に錆兎は寮長に相応しい完璧さで、ますます自分の至らなさが申し訳なくなってしまう。

それでも錆兎は義勇が本当に素敵な姫君であるように、

「こんな可憐な姫君を頂けて銀狼寮の寮生は本当に幸せだなっ！
そのなかでもラストの一番盛り上がる競技でこんな可愛い格好した花嫁を抱えて走れる俺が一番の幸せものだ」

などと言ってくれるので、とにかくもう気恥かしくて、ドレスで顔を覆うと、それさえも、そんなはにかみ屋なところが可愛いと言われてしまって、義勇はもうどうしていいのかわからなくなって、ただただ赤くなった。


可愛い…と言うのはリップサービスだろうとは思うが、とにかく錆兎のような完璧な寮長を頂いた銀狼寮の副寮長としては、せめて錆兎を始めとする寮生たちの足をひっぱらないように、頑張らなければならない。

秘かに固めた義勇のそんな決意に気付いたのだろうか。

錆兎は義勇を抱き寄せて、

「姫さんはとにかく無理なく怪我さえしないでくれれば良いからな？
大切な大切な姫君をきちんと守る事…それが寮生の一番の目的なんだからな？
勝ち負けに関しては、お前は可愛さでは全校ぶっちぎりだから、あとの勝負事は俺達寮生に任せておいてくれ」
と、額に口づけて、そう言った。

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