昼食時、いつものように中庭で錆兎と昼食を摂っていると、フラフラと煉獄が近づいてきた。
そう、いつもテンションが高い彼にしては本当に珍しく、フラフラと…
と、義勇がおにぎりを片手にチラリと錆兎を見あげると、錆兎はクスリと意味ありげな笑みを浮かべて、
「俺も別に構わんが、宇髄は知っているのか?
怒るんじゃないか?」
と言う。
宇髄?銀虎寮の寮長の?
きょとんと首をかしげる義勇だが、どうやらこの意味がわかってないのは自分だけらしい。
言われた煉獄は心当たりがあるらしく、だ~っと滝の涙を流して言った。
「彼はひどいぞっ!
俺に食事を食わせないで、ジョギングまでさせるんだっ!」
へ?
と言う。
宇髄?銀虎寮の寮長の?
きょとんと首をかしげる義勇だが、どうやらこの意味がわかってないのは自分だけらしい。
言われた煉獄は心当たりがあるらしく、だ~っと滝の涙を流して言った。
「彼はひどいぞっ!
俺に食事を食わせないで、ジョギングまでさせるんだっ!」
へ?
確かに銀狼寮は姫君勝負は半分諦めているとこっそり言ってはいるものの、一応はお守りすべき姫君にそれはない。
事情はわからないが、いつになく参っている様子の煉獄が可哀想になって義勇が弁当を差し出そうとすると、それはフラフラと手を伸ばす煉獄の目の前で錆兎の手に戻された。
事情はわからないが、いつになく参っている様子の煉獄が可哀想になって義勇が弁当を差し出そうとすると、それはフラフラと手を伸ばす煉獄の目の前で錆兎の手に戻された。
「錆兎~、わかってんなら止めろよな?」
はぁ~と後ろから降ってくるため息。
それに対して相手が銀側の親しい先輩だからだろうか…錆兎は年相応にいつもより砕けた感じで
はぁ~と後ろから降ってくるため息。
それに対して相手が銀側の親しい先輩だからだろうか…錆兎は年相応にいつもより砕けた感じで
「そこはあれだろう?寮長としてはピシっとすごいところを見せて決めておかないと」
と、宇髄にからかいの目を向けるように笑う。
「…いったい何の事?」
と、1人蚊帳の外な義勇がとうとう口を挟むと、宇髄が義勇に視線を向けて羨ましげに言った。
「銀狼はすっげえ楽そうでいいよなぁ。
うちだって中1の頃はもうちっと小さくて軽かったんだが…
それが今はもう俺が筋力つけるだけじゃどうしようもねえ」
それに対して錆兎は
と、宇髄にからかいの目を向けるように笑う。
「…いったい何の事?」
と、1人蚊帳の外な義勇がとうとう口を挟むと、宇髄が義勇に視線を向けて羨ましげに言った。
「銀狼はすっげえ楽そうでいいよなぁ。
うちだって中1の頃はもうちっと小さくて軽かったんだが…
それが今はもう俺が筋力つけるだけじゃどうしようもねえ」
それに対して錆兎は
「ああ。楽勝だなっ!
今年は初っ端に無一郎あたりに引き離されても、寮長で余裕でぶっちぎれる!
なにより…姫さんをお姫さん抱っことか、うちの寮生達のテンションあがりそうだ」
と、力こぶを作る。
そう宇髄に応える一方で、錆兎は優しく義勇の頭を撫でながら説明をしてくれた。
「もうすぐ体育祭があるだろう?
その時の競技の目玉が毎年恒例の【寮対抗藤襲風スウェーデンリレー】ってやつなんだ」
「寮…対抗…藤襲風?」
「ああ。普通のスウェーデンリレーってのは走者4人がそれぞれ100,200,300,400mを走るってやつなんだが、うちの学校のは100と300は中学生、200と400は高校生。
で、第1走者の100mは有無を言わさず姫君、第4走者の400mは絶対に皇帝。
しかも姫君はドレス着用で、皇帝はその姫君を姫抱きにして400mを走るってルールなんだ。
これが毎年ラストの競技で、点数も高い」
「…っ!大変だっ!!」
目の前で繰り広げられている宇髄と煉獄のやりとりを、義勇はそれで理解した。
そして口にしようとしていたおにぎりを持つ手をピタリと止める。
すると錆兎がその手からおにぎりを取り、有無を言わさず義勇の口元へと持って行った。
「あのな、お前はすっごく軽いからな?
それ以上痩せたら風にさらわれるぞ。しっかり食えよ?
煉獄がダイエットさせられてんのは、宇髄があいつを抱き上げての全力疾走が辛いくらいの体重だからで、俺はお前を抱えてても問題なく400m全力疾走できるから」
そう、こういうことが起きるから、ぎりぎりまで知らせないつもりでいたのだ。
それでも知ってしまったものはしかたない。
とりあえず何も心配する事はないのだと言う現状を伝えると、一応そこは空気を読んだのか、それとも単なる事実なのか、
「これさすがに、うちと銀狼寮の姫君と逆なら俺でも優勝できる自信あるけどな?
下手すれば銀竜の無一郎より軽いんじゃね?」
と、宇髄が自寮の姫君と義勇を見比べて言う。
そこで自分が揶揄されているということはスル~っとなかった事にできるらしい煉獄は、
「冨岡なら俺だって抱えて全力疾走できるぞ」
と主張して、
「お前が抱えて走れても仕方ねえだろっ!
お前はむしろ一般ピープルが抱えて走れるレベルまで体重落とさねえとNGな立場だろうがっ!いい加減自覚してくれ」
と、宇髄に釘を刺された。
こうして銀寮組の弁当箱に向かって泣きながら手を伸ばしながらも、自寮の寮長宇髄に引きずられて退散させられる煉獄を見送ると、また2人の時間が戻ってきた。
しかし2人でランチをするようになって随分たつわけなのだが、義勇としては未だこの状況に慣れない。
だって錆兎は本当に完璧だ。
本来なら後輩の自分が作るべきであろう食事も毎日美味しい弁当を作ってくれるし、寮長として様々な行事に必要な事を全部あますことなく把握して準備を進めてくれている。
それでいて、まだ未熟な義勇に負担をかけないようにと、伝える情報と伝えずに自分だけで気をつける情報を分けてくれているようだ。
さきほどの体育祭の話もそうなのだろう。
煉獄がああ言った事で義勇が知る事がなければ、錆兎自身は義勇の分まで事前に色々準備もしてそれようの鍛錬もこなしながら、義勇にはぎりぎりまで伝えずにいたに違いない。
寮全体を見ながら、義勇個人についても細やかにフォローしてくれる優しさと度量。
そんな風に能力も完璧で性格も素晴らしいのに、容姿まで非の打ちどころがないレベルで整っているのだ。
そんな錆兎を自分が毎昼独占しているのは、本当に申し訳ない。
寮生に…全校生徒に…世間に対して申し訳ない!!
…と、義勇は居たたまれない気分で思う。
あまりの居たたまれなさに俯いていると、錆兎はさきほどの諸々がまだ続いていると誤解したらしい。
いつも義勇が落ち込んだり不安に思ったりしているとそうするように、ぎゅうっと一度義勇を抱きしめて優しく背中をぽんぽんと叩き、それから少し身体を離して顔を覗き込んで綺麗な笑みを浮かべた。
そして、
「義勇はなんにも心配する事はないからな。
たぶん…第一走者の中では無一郎や我妻あたりがかなり速いと思うが、走る距離が100mだから、差がついてもたいしたことはない。
第一走者とアンカーはお前と俺と決まってるわけなんだけどな、第二走者はとにかく、第三走者は炭治郎だから。
100mまるまる差がついてたとしたって、炭治郎が300の間に半分はリカバリすると思うし、アンカーは圧倒的に軽いのはお前と我妻と無一郎だが、1年組と銀竜の寮長の中では俺が一番筋力があって速い。
筋力と速さ両方の面から競り合いそうなのは唯一宇髄だが、抱えるのが煉獄だしな。
俺達の敵ではない」
そう言いながらも錆兎は手が止まってしまった義勇の口に食べ物を放り込んでいく。
まあ嘘ではないのだろう。
義勇の口に食べ物を運ぶ腕には見ただけでそれと分かるレベルで筋肉がついているし、そもそも錆兎は何かあるとしょっちゅう義勇を抱き上げて運んだりする。
その時も全然危なげなく、軽々と言った感じだ。
それでも不安げな様子の義勇に、錆兎は良い事を思いついたとばかり提案する。
「そうだ!もし何かしたいと言うなら、姫さん、明日から当日まで少しばかり早起きして、俺の走り込みにつきあってくれるか?」
今年は初っ端に無一郎あたりに引き離されても、寮長で余裕でぶっちぎれる!
なにより…姫さんをお姫さん抱っことか、うちの寮生達のテンションあがりそうだ」
と、力こぶを作る。
そう宇髄に応える一方で、錆兎は優しく義勇の頭を撫でながら説明をしてくれた。
「もうすぐ体育祭があるだろう?
その時の競技の目玉が毎年恒例の【寮対抗藤襲風スウェーデンリレー】ってやつなんだ」
「寮…対抗…藤襲風?」
「ああ。普通のスウェーデンリレーってのは走者4人がそれぞれ100,200,300,400mを走るってやつなんだが、うちの学校のは100と300は中学生、200と400は高校生。
で、第1走者の100mは有無を言わさず姫君、第4走者の400mは絶対に皇帝。
しかも姫君はドレス着用で、皇帝はその姫君を姫抱きにして400mを走るってルールなんだ。
これが毎年ラストの競技で、点数も高い」
「…っ!大変だっ!!」
目の前で繰り広げられている宇髄と煉獄のやりとりを、義勇はそれで理解した。
そして口にしようとしていたおにぎりを持つ手をピタリと止める。
すると錆兎がその手からおにぎりを取り、有無を言わさず義勇の口元へと持って行った。
「あのな、お前はすっごく軽いからな?
それ以上痩せたら風にさらわれるぞ。しっかり食えよ?
煉獄がダイエットさせられてんのは、宇髄があいつを抱き上げての全力疾走が辛いくらいの体重だからで、俺はお前を抱えてても問題なく400m全力疾走できるから」
そう、こういうことが起きるから、ぎりぎりまで知らせないつもりでいたのだ。
それでも知ってしまったものはしかたない。
とりあえず何も心配する事はないのだと言う現状を伝えると、一応そこは空気を読んだのか、それとも単なる事実なのか、
「これさすがに、うちと銀狼寮の姫君と逆なら俺でも優勝できる自信あるけどな?
下手すれば銀竜の無一郎より軽いんじゃね?」
と、宇髄が自寮の姫君と義勇を見比べて言う。
そこで自分が揶揄されているということはスル~っとなかった事にできるらしい煉獄は、
「冨岡なら俺だって抱えて全力疾走できるぞ」
と主張して、
「お前が抱えて走れても仕方ねえだろっ!
お前はむしろ一般ピープルが抱えて走れるレベルまで体重落とさねえとNGな立場だろうがっ!いい加減自覚してくれ」
と、宇髄に釘を刺された。
こうして銀寮組の弁当箱に向かって泣きながら手を伸ばしながらも、自寮の寮長宇髄に引きずられて退散させられる煉獄を見送ると、また2人の時間が戻ってきた。
しかし2人でランチをするようになって随分たつわけなのだが、義勇としては未だこの状況に慣れない。
だって錆兎は本当に完璧だ。
本来なら後輩の自分が作るべきであろう食事も毎日美味しい弁当を作ってくれるし、寮長として様々な行事に必要な事を全部あますことなく把握して準備を進めてくれている。
それでいて、まだ未熟な義勇に負担をかけないようにと、伝える情報と伝えずに自分だけで気をつける情報を分けてくれているようだ。
さきほどの体育祭の話もそうなのだろう。
煉獄がああ言った事で義勇が知る事がなければ、錆兎自身は義勇の分まで事前に色々準備もしてそれようの鍛錬もこなしながら、義勇にはぎりぎりまで伝えずにいたに違いない。
寮全体を見ながら、義勇個人についても細やかにフォローしてくれる優しさと度量。
そんな風に能力も完璧で性格も素晴らしいのに、容姿まで非の打ちどころがないレベルで整っているのだ。
そんな錆兎を自分が毎昼独占しているのは、本当に申し訳ない。
寮生に…全校生徒に…世間に対して申し訳ない!!
…と、義勇は居たたまれない気分で思う。
あまりの居たたまれなさに俯いていると、錆兎はさきほどの諸々がまだ続いていると誤解したらしい。
いつも義勇が落ち込んだり不安に思ったりしているとそうするように、ぎゅうっと一度義勇を抱きしめて優しく背中をぽんぽんと叩き、それから少し身体を離して顔を覗き込んで綺麗な笑みを浮かべた。
そして、
「義勇はなんにも心配する事はないからな。
たぶん…第一走者の中では無一郎や我妻あたりがかなり速いと思うが、走る距離が100mだから、差がついてもたいしたことはない。
第一走者とアンカーはお前と俺と決まってるわけなんだけどな、第二走者はとにかく、第三走者は炭治郎だから。
100mまるまる差がついてたとしたって、炭治郎が300の間に半分はリカバリすると思うし、アンカーは圧倒的に軽いのはお前と我妻と無一郎だが、1年組と銀竜の寮長の中では俺が一番筋力があって速い。
筋力と速さ両方の面から競り合いそうなのは唯一宇髄だが、抱えるのが煉獄だしな。
俺達の敵ではない」
そう言いながらも錆兎は手が止まってしまった義勇の口に食べ物を放り込んでいく。
まあ嘘ではないのだろう。
義勇の口に食べ物を運ぶ腕には見ただけでそれと分かるレベルで筋肉がついているし、そもそも錆兎は何かあるとしょっちゅう義勇を抱き上げて運んだりする。
その時も全然危なげなく、軽々と言った感じだ。
それでも不安げな様子の義勇に、錆兎は良い事を思いついたとばかり提案する。
「そうだ!もし何かしたいと言うなら、姫さん、明日から当日まで少しばかり早起きして、俺の走り込みにつきあってくれるか?」
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最初の錆兎の部分がギルのままなのと錆兎のセリフが一人称俺様になってるのは多分、修正ミスかと…
返信削除ご指摘ありがとうございます。
削除修正いたしました。
また何かありましたらよろしくお願いいたします😀